星に願いを
3Days
昨日は失敗してしまった・・・
おもいっきりもらしてしまったし、気絶してしまった。
あれはやばい・・・もっと遠くに投げなきゃ・・・
周りでは白い鳥、もしゃもしゃの鳥が、美術品をつついている。
うん、もしゃもしゃ君と名づけよう。
君が可愛く見えるよ。って・・・食べてる?
可愛くお辞儀をするようだったもしゃもしゃ君は、魚の絵がついている美術品、分からない絵のついた美術品をいたるところでつついている。
「やっぱり食べ物だったんだこれ・・・」
ベースキャンプは半壊してしまっている。
わずかに集めた食料もごみ屑になっている。ぐすん・・・
「食べるしかないよね」
カコリ・・・
木の棒で、鳥がつついていた金属を大きく開け、恐る恐るくちにする・・・
「!?」
肉!?・・・お肉の味、ううん! おいしいぃ!
最初はほじくっては食べ、ほじくっては食べていたが、量が物足りないし、まどろっこしくなり、食べ物に名前を変えた美術品を一箇所に集め
「ウインドクラッシャー!!」
中級魔法を放った。
空中でカンカン!とぶつかりあい、圧縮されながら切り刻まれる魔法。
一個にかけるより、ぶつかり合うことで美味しそうな匂いは充満した。
「やっほ~い!」
なんて美味しいんだ!
昨日は失敗したけど、今日は大収穫だ!
もしゃもしゃくん! 君も良かったね!食べ物卒業だよ!
もう食べられないよ! 僕に! キリッ!
一息に食べてしまうと、こちらにきて一番の安心感を得た。
「やっぱり食べることは大事だなぁ。勇者様がご健在の時は、もっと美味しいものがあふれてたって言うし・・・あう・・・こういうのがあふれていたのかもしれない! だとしたら僕は生まれた時代を間違えている!」
好奇心が刺激される!
なんか見つけたかもしれない! 生きがい!
やる気が出てきた僕は、ベースキャンプを修繕した。
昨日の収穫物を危険物とそうでないものにわける。
特に、あの魔筒と爆発の魔道具、仮名、魔弾と悪魔の実は別のところに置いた。
ちょっとだよ、ちょっとだけ、距離を置きたいの。
身体強化を使い、木箱に入れなおした後、全てをもって200メートルほどの場所へ移し、葉っぱで隠した。
その結果!
さらに安心感がました。
いえ、本当に安心感、むしろ幸福があふれてきます。
やっぱり未知っていうのは怖いよ。
確か、分かるようになるって言ってたのに、全然わかりませんよ、創造神様・・・
ただ武器ということは嫌と言うほどわかる。
あれに魔力をこめて穿てば、物理耐性が高い魔物でも有効だろう。
純金属だし、エンチャント(付与魔法)(付与魔力)もレベルが低くてもできるだろう。
魔力のかけらもこめないなんてもったいない。
こちらでは、魔力は使わないのか?
思えば、むしゃむしゃ君もそうだった。
体には微量の魔力を感じるものの、魔法は一切使ってこない。
最初に射落とした時も、ウインドスラッシュで、あっさり首が飛んだ。
単純に魔物ではなく、獣だからだろうとおもっていたけど、鈍すぎる。
今日の検証は、スキルと魔法にしよう。
お昼まではベースキャンプの修繕と飛散した食べ物、拾ったものを綺麗に片付けた。
そして、島を一周し異常がないかを確認していくが、魔法の示すとおり異常はなかった。
夕方になり砂場へ移動する。
現在分かっていることを、まとめてみる。
まずステータス。
これはエピーリアで確認済みだ。
こちらでもなんら支障なく働いている。
エピーリアで分かるものは、一緒だった。
現在地・・・大まかな場所が分かる。(現在、異世界、地球)
状態・・・・正常(バッドステータスがある場合、ここに異常:毒などでる)
体力・・・・中級(基本的に、上、中、下しかでない)
魔力・・・・上級(同じく、上、中、下しかでない)
固有スキル・・星に願いを(?)
時空魔法 (?)
加護・・・・創造神の加護
ほむ、やはりエピーリアだとざっくりしか分からない。
詳しいことはギルドカード作成、更新時に行われる鑑定をしてもらわないと。
ちなみに鑑定では、現在のレベル、ある程度の数値と分類、使える魔法なども既存のものであれば一覧として見れる。
ただし、高度なものであればあるほど、高価なギルドカードになる。
僕の銀貨2枚でバリスタに買ってもらったものだって高いものだ。
ごめん、バリスタ・・・なくしちゃった。
再発行は二倍になる。
その時の記憶だと、体力は中級のままだった。恐らく、数値的に見ればスピードや耐久があがっている実感がある。でも、総合的に中級ということだろうと推測。
次に魔力、これは言うまでもなく、圧巻だ。
上級というのは、エルフの村でさえ、数名。数値的に一番高いのはシンラ様、そして母エレナだ。
ルミエナ隊長もそうらしい。
何がいいたいかというと、上級、それは隊長クラスということだ。
エルフだから上級でも数人いるが、これが多種族になると王国なら数十万規模でも一人いるかいないか。
ドワーフだと、王の直系に魔力育成枠があって一世代多くて3名は確保しているという。
獣人だと皆無に等しく、いたら数百年に一度という英雄扱い。
竜神族は、別。あいつら異常だから☆ でも人数が少ない。
魔人・・・魔人はそりゃいるよね・・・
あとは魔物くらいか、これは本とにいろいろだけど、魔力だけでみれないもの。
体自体が他の生き物とは別だからだ。
とにかく!
僕はすごい人になったんだ!
さて、この気分がいいときに、こいつをあけよう!
きっとすごいお宝が入っているに違いない!
昨日はあけ損じたけども・・・だめだめ☆考えちゃ駄目!
ってことで
「開錠!」
かちゃりという音がして、鍵が開いた。スキルも問題ないらしい。
昨日の爆発にも耐えた金属かばん。
なかには・・・!?
「うわぁ・・・これはすごい!すごいぃ!綺麗!のと・・・変な絵?」
さすが一番硬そうなかばんだ。骨付きなだけはある。
純金属でもなく、純宝石だ!
純だよ!
何回も言うけど純だよ!
色んな種類がある!
絵はいらないけど、これは捨てるには早計だな。
うわぁ、すごいぃ! むふふふふ!
お金なんか興味ないけど?
いやいや、実際手に入ると嬉しいに決まってるじゃないか!
やほ~い!
僕は海に向かって走り出した!
今までたまりに溜まったストレスかもしれない!
ばしゃばしゃ! さぶーん!
「あははは!!」
おかしいな・・・なんでだろう、涙が出てきた。
こんなことでいいの?
ふいによぎる・・・
そうじゃない、そういうことじゃない。
自由、そう自由だ。
何にもしがらみがない。
これからしたいこともできる。
買いたいものも買えそう。
才能も伸びる・・・
でもっ!
「こんなに簡単にッ! う、ック、え・・・」
涙が、嗚咽が出る。
どうして僕は、どうやって僕は生きていく。
何にもない。
夢なんてない。
責任から開放されて、守人なんて言っても、認められたい一心で。
それしかなかったから・・・
そんな一心もあっというまに加護と奇跡で覆る。
理不尽じゃないかっ!
ないものねだりかもしれない!でも覚悟したんだ!
守人になるために・・・
英雄のことして死ぬために。
守人じゃなくなったらっ!
「何にもないじゃないかッ!」
バシャン!
「ふふ・・・」
顔に、水が無様に跳ね返る。
しばらくそうしていた。
血が冷めるまで、自分を直視しつつ。
手に入ったものと失ったもの?
失ったんじゃない。気づこうとしなかった。
逃げてきた。
流れに任せて。
なんか変だった。
不安と焦り、安堵とやはり不安。
引いては押し寄せ、押し寄せては引く。
夕日が美しく、壮大な光景の中、ちっぽけさがしみこんでくる。
嗚呼・・・・
感動したのに。
冷めていく、褪めていく・・・
流れに任せるには荒波過ぎる。
冷めるには煩過ぎる喜劇。道化。
壊れた人形のようだと思った。
夜になった。
泣いたり、笑ったり、呆然としたり、海につかりながら、夕日が沈むのをみながらやっと落ち着いた。
これからどうする、じゃなくてどうしたい!
父上なら?
会ったこともない。
けど・・・聞いたことはある。
血がめぐる。
頭が急にさえてくる。
「冒険者・・・・そうだ。冒険者になりたい」
覚める。そんな気がした。
つぶやいてみて・・・
甦る記憶。
高揚する。
バリスタが言っていた。
父様も、もとは冒険者!
いろんな世界を渡ることができる。
野たれ死のうが、英雄になろうが全ては自分しだい。
どんな種族も受け入れ、はき捨てる野蛮な職業。
そして偉大な職業!
忌みわれ疎まれ、されど尊ばれるものは冒険者から出てくる!
僕にぴったりだ!
守人じゃない、僕が僕らしくあるために!
そうだ、加護だって!
「僕は冒険者になる! 世界をまたに駆けた! 冒険者に!」
固有スキルを確認しよう!
まずは帰って冒険者、ギルドカードの更新!
そして、時空魔法のなんたるかを確認!
本も読まなきゃ、特に勇者の物語!
シンラ様に会わなきゃ!
バリスタにお願いして、あ、母様にお願いして・・・
「かあさま・・・」
帰りたい・・・・
会いたい・・・
星はイアカの形以外は変わらず美しかった。
願う。
僕は。帰りたい!
空へ手を伸ばす! とても届かない! でも掴む!
空へ星へ!僕は願う!
叫ぶ!
「僕はここにいます!」
願う!帰りたいィッ!
『世界を渡りますか? 発動可能な状態です』
ふふ・・・・
目の前に現れた、エピーリア。
帰れる。
帰れるんだ!
「もちろん! 僕は帰るよ!」
そうして僕は帰る! 目覚めるように!
生きるために!
イルの里へ。
万象の森へ。
お読みいただきありがとうございます!
初往復、これから成長していきます!
よろしくお願いします!