シンラへ向けて
ということは、死んだら突然目の前からいなくなるってこと?」
「そうなります」
シャワーを浴びてきた舞さんに、詳細を伝えた。
ぎこちなさそう?だった表情が一転し真剣なまなざしで問う。
首にかけていたタオルを外し、黙考している。
「どうしても、戻らないといけないの? もう、ここで暮らしたらどうかな? お母さんとか大切な人を連れて来て」
とても魅力的な話だが、そうはいかない。
僕一人でさえも、悩ましいことで是非にとは行かないのが現状だ。
それに使命もある。
やんわりとできないことを、スキル限界を含めて話した。
「私がいくことができるようにならないかな、逆にも。修行?かなにかすればできたりしないのかな?」
「未知なスキルですのでなんとも、もちろんできるようにはなりたいですが」
「そうか・・・戦争とかあるの? 魔獣とも戦ったり」
「そうですね。職業柄でもあります。僕は冒険者として世界中をまわらなければならないで」
「反対!!と・・・言いたいけど。私には言えないよ。伝えてくれてありがとう」
「え?」
「急にいなくなるってこともできただろうから、早い段階で教えてくれて」
「いえ! そんな・・」
「でも、行く時は教えてよ。それとさ、できるだけ多めに戻ってきてね・・・寂しいからさ」
「はい! ありがとうございます!」
「もう行くの?」
「はい、今夜行ってきます。数日ですね」
「私にとっては一瞬ってのが一番助かるかな・・・タイムラグなしってすごい」
「はは、そうですね」
「そうと決まれば、1時間ほど待ってて」
「はい?」
「いいから!」
「了解しました」
一時間後、舞さんは買い物袋を大量にかかえ、これ全部持っていってと・・・
「お、おいくらしましたか? 食料やら、なにやら・・・」
「車の中で、ボイスレコーダーにふきこんだけど、簡単な説明をしておくね」
「お金が」
「無駄にお金は余裕あるから、なめんなよ、独身女の底力!」
「舞さん、ありがとうございます!」
「おふぉぉ・・・・役得」
それから簡単な道具の名前と用途をきき、
「行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
舞さんは、祈りのポーズをしていた・・・
「なんかそのポーズは・・・」
「だって、一瞬で分かるんだから、私にとっては・・・」
「分かりました。では!」
「いってらっしゃい!無事でありますように!」
舞さんは話さないと分からなかったが、話すと順応が早かった・・・
そしてお母様は・・・一緒に床についているはずなのに。
「リエンちゃん?」
「はい?」
「その格好、行ってたのね?」
「はい・・・その済ませておきたいことがあったので」
順応どころか気づくのが一瞬だ。服隠れてるのに・・・
「そう・・・なんか置いてけぼり食らったみたいでやだわ」
「かあ様にもちゃんといいますね、向こうは争いがないところですが」
「そうよ、ちゃんと・・・ってほんとに言って!!そうよ・・・帰ってこないってことがありえるんだから!」
順番が真逆だ・・・
「く、苦しいです」
「今日はもう寝るわよ。このまま、いいわね?」
「はいぃ・・・」
「いいにおい・・・・」
「かあ様も・・・」
「おはようございます!リエン様!」
「おはようございます、ルミエナ様」
「様はおよしくださいと!」
簡易テントから顔を出すと待ってましたといわんばかりの表情で待機していた。
ルミエナ様は精霊魔法に御執心のこともあり、瞳には御褒美くださいと手のひらを広げている子供のような光が見て取れた。
「あ~はいはい。ルミエナさん」
「ささ、朝餉です」
片手を広げ示すのは既に湯気があがって一仕事終えた炊事班の皆様。
簡単なスープと固いパンだろう。
良いにおいがする。
ただ・・・
「みんな大丈夫ですか?」
「もちろんです・・・」
「護衛に支障はありません・・・」
後ろに控えている隊の皆様はところどこに傷ができている。
疲れを気合でごまかしているようだけど、規律正しい雰囲気はなかった。
「馬鹿な子たちだわ。フィナもでっぱなで夜中までぶつぶつ言って、今は寝てるし、無防備だこと。「帰還せよ」」
かあ様が後ろから登場するとビシリとさらに気合が入ったようだけど。
「じぃ?じゃなかった、バリスタは?」
「バリスタ殿は朝食べられた後、馬車の点検をしていますよ、なにやら妙な気配を感じたそうで」
「妙な気配?」
かあ様がさすがに反応している。
「はい、念のため哨戒しましたが異常はありませんでした」
「バリスタは?」
「知り合いがいただけで、笑っていましたので大丈夫かと。あくまで念のため点検をしているそうです」
「そう・・・一応警戒しておきなさい」
「はい、もちろんです。我が命に代えてもお二人は無事にお届けいたします」
当たり前だと返事をするかあ様に隊の皆様そろって敬礼をしている。
この辺はさすが親衛隊というべきで、その動きに乱れがなく長年の付き合いが見て取れる。
「結界を張りましょうか?」
僕がそういうとかあ様は驚いた顔で見たあと、にこり。
「そうね、そうしてくれる?」
「はい!」
頼られているのが嬉しくつい大きい声で返事をした。
かあ様の中でもちゃんと僕の成長を見てくれているのだと気合が入った。
それにつられたのかルミエナ様も気合を入れて皆さんへ活を入れる。
「お前たち、護衛を頼んだぞ」
「「「「「は!」」」」」
ふふ、こういうのってなんかいいなぁと思いつつ幕を後にして馬車が止めてあるほうへ移動する。
たった・・・足音一つ・・
ざ・・・ッザ・・・え?
規則正しい足並みって・・・
何で付いてくるの?とジト目で振り返る。
ルミエナ様ははっとした表情になりぐるりときびすを返す。
ふぅ・・・過保護だよ。僕は守られる立場ではない。
「なんで付いてくる!?エレナ様を護衛しろ!」
「「「「「そっち!?」」」」」
そうじゃなくて、そっちもどっちもだよ!皆さんにあきれてみせるんだけど、ルミエナ様はこれで何の問題もありません、お待たせしましたキラキラ・・・ってな具合だ。
「ルミエナ・・・いいのだけど、あなたちょっと現金すぎるわよ」
かあ様が指摘するがまったくなんのことか分かっていないようで・・・?と後ろというより僕を見ている。僕じゃなくてあなたです、ルミエナ様・・・
「隊長・・・そういうの良くないと思います」
「そうですよ、大人気ないというより品がないです」
まったく同意ですと僕もこくりとうなずく。
「そういうわけでは! 今現在、危険があるとすればリエンさまです。一番の戦力はエレナ様です。そうなれば、補助に全力と、護衛に全力となるとこれが自然かと、誓って後ろめたい理由では!」
「・・・嘘は言ってないようね。でもなんだか癪だわ」
「え、エレナ様、そのように私を大事にしていただいて!感激です!」
「お母様」
ちょっと反省。まともな人だったんだ・・・
「リエンちゃんを死なせたらその首はわたしが刈るわよ」
「承知!」
「僕は護衛はいらないです、ちょっと考えたら分かることでした。僕自身がうぬぼれていたようですが・・・皆様はいつもの仕事に専念してください」
「何言ってるの、あなたは私の宝。命に同じ。たとえ、継がないとしてもそこに偽りはないのよ。そして私に決定権があるの。護衛は命令よ」
「うぐ・・・」
「継いだらひっくり返りますぞ!わしはそれを後押しします!」
いつのまに・・・・バリスタがちがうキラキラとした目でこちらを見ているが・・・
「いや、じゃあ、ルミエナさんで・・・」
「「・・・・ショックです。わたしはただ純粋に・・・」」どちらも残念だ・・・。
「皆さん、母をお守りください。私にとっても掛け替えのない肉親ですから」
「「「「「「はい!!」」」」」」
ってことで一台目の馬車。
「これは何を?」
「見るのは初めてですか?」
僕は結界魔法(真)を修練とあわせて行っていた。
守るだけで起動していたはずなのに、今は追加事項を詳細に求めるように光っている。
物理ダメージ、火耐性、風耐性と思いつくかぎりをしていくと込められた魔力が反映しているようだ。
「はい、初めてです。結界魔法をかけているのは分かるのですが、これは付与に近いのでは?」
「そうですよ、大侵攻のときはする時間がなかったのですけど、こうして結界を文字通り張っていくという感じです」
「すばらしい・・・こんなことまでできたのですね」
「付与は皆さんもしてますよね。わたしができる付与で一番役立つのはこれで、他は劣ります、まぁこの紋章みたいなものはちょっとびっくりしましたが」
込められた魔力がなくなると文字ではなく魔法陣のように、マークが浮かんでいる。
ちょっとかっこいい。僕の横顔?が祈るような仕草で地球で言う三日月に後ろには世界樹。
意識したわけではないのに神様のいたずらなのか、すごく綺麗だ。
「護衛にとっては一番欲しいものですよ、意味深で綺麗ですし、かっこいいですね」
「あ、ありがとうございます。陣になったのなら少しは長くなったかもしれないですね」
「なるほど、付与は文字にて行いそれが成長すると陣になるのかもしれませんね。驚くべき速さで書ける点で陣よりすばらしいです」
「いや、わかんないですよ!」
「そうですね、効果と耐久時間それぞれの利点を補っていれば申し分ないですが・・・検証が必要です。ですが、結界となればひっぱりだこなのは間違いなし。盾などにもできれば無敵ですし、これは紋章といっても過言ではありません。美への造詣をお持ちでしたか、ほんとうに文句なしです」
真剣な顔でその紋章?をみてくれている・・・さっきとは違って、心からの賛辞。
これはこれで照れます。
「そうですかね・・あはは。嬉しいですなんか・・・えと、お守り程度で考えると嬉しいです」
「これは前より硬い気がしますし、お守り・・・いいかもしれません!鍛冶屋のように刻まれて名実にかけて銘実ともにとすれば人気が出ますよきっと! ええ、私も欲しいです!」
おお、いつもの?もうどっちか分からないけどルミエナ氏にもどっていく。ルミエナ氏というのは僕の区別。地球の日下部君に似ているから。
「魔力が上がったおかげで今は中級5発ぐらいまでですけど・・・し、してみます?」
「中級!?では一撃では?」
「上級では一撃かとおもいます」
「上級も耐えうるとは・・・・これは発動の仕組みを変えれれば、本当にここに! ここにお願いします!!」
そういって示したのはガントレットではなく、鎧の胸の辺り・・・。信頼が重い。
「もっと耐えれるようにもなりそうです。えっと、たぶんですけど、馬車全部したあとつけてみましょうか」
「今では駄目ですか!?」
「いえ、そのこれも修練中でもうすぐあがりそうですから、できればいいものを」
なんと・・・といってルミエナ様は、僕の背の高さまで屈んで見つめてきた。
「・・・・・・やはり、リエン様はお強くなりましたね」
「僕の力じゃないのですけど、ありがたいですね、使い方も考えないと罰が当たりますね」
「いえいえ、リエン様があの時、頑張られたからその力を授かったのです。つまり、そういう解釈は我々の魔法やスキルとなんら変わりません。自信を持って・・・いや、自信にしてください。素直に尊敬いたします」
「あ、あ、ありがとうございます」
「可愛いですね、リエン様は・・・」
「そこはかっこいいといって欲しいです」
どうしたんだ急に、そっちはルミエナ様にもどっても僕は切り替えが間に合わない。
「雰囲気が大分変わりましたね。日に日に、そう、本当に見間違うほど明るくなられて・・・戸惑ってしまいます」
「あるかもしれないです」
「ええ、でも素敵ですよ。力だけではその表情は生まれません。精霊といい、魔法といい妬ましく思ってもいましたが、今のあなた様の心の持ちよう、その笑顔が私の邪な気を払拭してくれます」
顔が赤く熱くなっていた。けど・・・そういうことか・・・
「そうだったんですね・・・まぁそうですよね。こんな若造が」
「聞いていましたか? 私はあの時の感情を忘れるつもりはありませんが、忘れたとしても、あなたに対して不敬をいだくことがなくなったと言っているのです。どうか、そのままのリエン様でいてください」
「はい、ありがとう」
今度は僕が切り替えたのだけど、見つめあい・・・・
・・・・・・・・・
えっと、いつまで続くのかな。長い・・・
「ルミエナ様?」
「あ、あはは! 真面目な話をしてしまいました!こういうの実は不慣れでして!」
「いつかとおもったら、落としどころがなかったんですね、恥ずかしいですよ」
「そうですね! あはは!・・・はっ!ところで精霊のことに関してですが!」
「それは秘密です」
「むぅ・・・ではここに刻むのはお願いします」
「はい、喜んで」
最後は切り替えかたまちがって残念だったけど、でも、ルミエナ様の人となりが分かった気がして、いい散歩になりました。
仲間ってこういう感じなのだなと、木漏れ日がやけに暖かく、優しく感じた。
「隊長!なにそれ!かっこいい!」
「神聖な・・・これってリエン様の結界?!」
「いいだろう!役得だ!」
「結界は結界でもさすがはリエンしゃま!!すっご~い!こんなの付いてるだけで中級魔術師以下の魔術師なんて敵じゃなくなっちゃう!近接無双なの!」
「「「「「え!?」」」」」
「わ、わたしもお願いしてこようかなぁ」
「駄目だぞ!わたしはお願いしたのではなく、していただいたんだから!」
「ええ!」「ずり!」「それ以上強くなってどうするの!」「魔法しかできないわたしにうってつけ!」
「駄目駄目だ! さわるな!もったいない!」
わいわいと騒ぐルミエナ様たち、その奥からぬぅっと白い手がルミエナ様の頭をがっちり・・・
「きれいねぇ・・・なんであなたが一番なのかしら・・・」
「え、エレナ様、ご、ごかいです、これはリエン様が思いつきで」
「良いとこどりなのは変わらないよね~」
「おっしゃる通りです、フィナ様!」
「ありがたや、今日も愛くるしい」
「うむ、苦しゅうない」
「フィナさま・・・エレナさま、結界が発動してます・・・」
「へぇ~こんな触ってないところでもダメージを変換して分散してくれるのね。結構な力で握っているんだけどミシリともしないわね」
「しゅご~い!実験実験!」
「ご勘弁を!皆!だれかとめてくれ!」
「実験、すばらしいです」
「精霊様に逆らうものはいません」
「おゆるしを~~~!」
バサ・・・・しゅるり・・・と天幕へ飲み込まれていった。
「なにやってんだか・・・」
遅くなりました><
お気に入り、ブックマークや評価していただいた方のことも考え、更新頻度は遅くなりますが、更新していこうと思います!
また、書き直したものは、これほどライトではなく、中身のあるものにしていきますので、ある程度話がたまったら別タイトルでしっかり出させていただきます。内容がこちらとも変わってくる可能性がありますが、それまでの間の暇つぶしと思って読んでいただければと思います。
他、わたしの息抜きで書いたものとかも、前の作品とかの更新とかもしていく予定です。
どうぞよろしくお願いいたします!
読んでいただきありがとうございます┏○))ペコ