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わしは生きたい バリスタの心

「お加減のほうは?」

「大事無い・・・で、そこのものは?」

 私は今療養中だ。

 エレナ様、いや取り繕うのはやめにして、あのじゃじゃ馬から受けた強烈な一撃が、老体を蝕んでいたからだ。

 手加減を知らん・・・

 癒し手が治せるのは骨折とうの傷であって、疲労はもちろんのこと異常を感知した体の緊張状態などはそうそうに抜けるものではない。

 軽いなら別だが。。。

 明日からシンラへ向けて出発。

 そのぎりぎりまで、療養にあてていた。

 だが、いま、珍客5名ほどが前に整列している。

見舞いかと思われたが、職、年齢、位、全てにおいて共通するのはハーフエルフだけだ。

 皆がもじもじと・・

「バリスタ様・・・不躾で申し訳ありません!り、リエン様のことを教えていただきたく」

 なるほど、噂が駆け巡っているのも無理はない。

 あの神聖な立ち上る魂は、エルフの里、皆が見えていたらしいからな。

「教えてほしいなどと、貴様らのほうが知っているではないか。共に戦っていたのだろう?」

「お、おっちゃん!そういうのはなしで良いから!」

「こら! メルナ!」

「ごめんなさい」

「その子は? 確かにこの子くらいなら知るまいて」

 一人活気が良さそうな子がいる。はて、こんな子供いたのかイルに?

「それが、外から来た子供でして、その・・」

「奴隷だよ!」

「なっ・・・」

「あ、大丈夫です、その、大事にされているそうですし、あの豪商のエルビー様の所有です」

 そういうことは、先に言え。

 そうか、あの襲撃で返すに返せなかった行商どもも着ていたな。

 ギルバートがそこらはうまくやっているだろうが。

「やはり駄目でしょうか?」

「いや、どうせ噂でばれよう。それに隠すこともない、むしろ・・・正しいことを教えたほうがいいのかも知れぬ」

「おお! ふとっぱら!」

「メルナ!!」

「なんだよぉ、うっさいなぁ」

「エルビー様にいいますよ・・・」

「ご、ごめんなさい」

「エルビーは相変わらずなようだな」

「はい、それで、その私もですが、ここにいる皆聞きたいのです。本当はどんな風に話して、どんな風に・・・」

「面白い話ではないぞ。先に聞きたい、貴様たちは集まってきたものだろう?シンラから着たのか?」

「はい、援軍としてまいりました! ば、バリスタ様!」

 言ったのはまだ幼さが残る青年だった。

「お主たちは、希望してきたのだろう?」

「? もちろんですが」

「将来の夢は?」

「い、イルの精鋭に加わりたいです!」

「わ、わたしは親衛隊に・・・リエン様の」

「おれもです」

 一番年長の二人はその意味が分かっているのか?

 青年のほうがまだ堅実的だ。まぁ嫌いじゃないが・・・ふふ。

「・・・・・」

 何だ。一人白髪の幼女?ともいえる背の低い女子がいるが・・・枚は中級者向けのものだ。ハーフとしては才がありそうだ・・・目が若干、若干だがじゃじゃ馬に似ている気がするが・・・まぁよい。

「おれはエルビー様の右腕!」

 どいつもこいつも、暗い顔などしていない。

 瞳がキラキラとしている。

 守人になるといったリエンとは、違って幼い夢だ。

 覚悟が成熟し戦士として覚醒した目でもなく、己の才を磨くだけで良い成長段階。

 リエンは、守人になるといった時、瞳はキラキラしていたが耐の上に残された光だ。

 涙が反射して、こぼすまいと縋った光。

 覚悟をしていたのだ・・・あの時から。

「おっちゃん?」

 いかん、年はとりたくないものだ。

 どうしても後ろ暗いことを思い出す。

「いや、すまぬ。そうだな・・・メルナとか言ったか。外ではハーフエルフはどう扱われているか、知っていよう」

「そうだね! ここの人は幸せだけど!」

「そ、そんなにひどいのですか?」

「成人の儀が終わっておるものや、戦士としてなら聞いたこともあるだろう?」

「「「「こくり」」」」

 ん、ということはやはりこの幼女も成人15以上か・・・ゴホン。軽くにらまれたぞ・・・聡いなこやつ。

「それに、ぼくも・・・ちょっと、変な目で見る人とか気になった・・・あ、でも、なんか今は複雑。申し訳なさそうに見てくるから」

「なるほど・・・すぐには無理かも知れんな。だが、少年。友達はいるか?」

「もちろんです、戦友も!」

「わたしもです」

「リエン様は孤独に育った。わしも小僧、小僧とどっかで侮っておったよ。戦場でも孤独を強いられた、別枠で鍛えるために、試練として」

「一人って? え? 一人で戦場を?」

「主に魔物との戦闘だがな、恐らく想像を絶するぞ」

「・・・・えっと、リエン様ってあの赤髪のエレナ様でしょ? めっちゃえらいんじゃ?」

 そういうのはメレナだ。ふむ。なるほど・・・

「だからこそだ、そのリエン様が率先してエルフの里の守人として試練をうけ、おぬしたちも感じているような、悪習を際立たせて、はれて守人になれれば一気に晴れるとな」

「エレナ様ってばかあまじゃん! さっきも主様にどぎつく言伝あったみたいだし! 嘘はいかんよ!嘘は! 英雄の子でしょ!」

「嘘ではない」

「そう、ですか・・・何となくですが、わたしは聞いてたので」

「僕はしらない・・・ハーフエルフだけどだれとでも仲良くしてるよ!」

「う、嘘だ!」

「メルナ、おぬしも辛い目にあったことだろう。外では辛く、中で信じられないくらいに大切にされていると、主から聞いているだろう。あやつのことだ、こちらに住めるようにしてやるといわれたのではないか?」

「!?」

「図星か」

「でも、おれは恩を返す!」

「まずはその口調から直すのだな、女子としても商人としてもだ」

「むぅ!まだべんきゅ!きゃん!?」

 ごちん・・・叩きおった・・・

「メレナ、ちょっとうるさい、バリスタ様、教えて。リエン様の親衛隊になる方法」

「お、おぬし、やっとしゃべったかと思ったら、えげつないの」

「餓鬼は嫌い、でもリエン様なら好きになれるかも」

「アイシャ・・・あなた。そんなこと言ったことないじゃない・・・」

「ルーは聞かなかった。それに話すのは苦手、あ、幼女といったら許さない」

「分かったから枚を降ろさんか」

「そうだよ!無礼だよ!」

「これだから餓鬼は嫌い。敬うは地位ではなく、力、知識、行動。それがイルの在り方であり、エルフの掟に序列階級はなく慣習のみ。偉い偉くないとは、その偉業によって決まる」

「はぁ・・・だからといって年上に向かって・・・」

「年上も下も関係ない。それは敬語と気持ちで十分」

「おっちゃんは、偉業をなしてるんだぞ、お前やばいな、色々痛い・・・あ、ぶたないで!ごめんなさい!」

「っくっくはは! アイシャか、いいのぉ。リエン様にはそれぐらいの気概が必要だぞ。なにせ、伝説の結界の禁術を成し、魔力も体力も、知識も、並みの精鋭以上になられた。

そして何より尊さを示された。その意義は大きかったようだ」

「当然」

「なんであんたが威張るのよ」

「そうだ! 自分は偉くないじゃん! ひぃ!それなおせよぉ!!」

「悪い子はお仕置き」

「ともかく、そうだのぉ、少し話してやろう。リエンのことを・・・」

「「「「はい!」」」」」

 わしは自分がしたことも含めて話した。

 結界の才能を持ったが故に、英雄の子であったがために物心つくころには、戦場を覚えさせられ、死なないために過酷な試練をうけさせられたこと。

 体はぼろ雑巾のようにぼろぼろになるまで魔物と対峙させ、結界の使いどころを教え、よけ方を教え、魔力も枯渇は当たり前であったこと。

 たまに、生意気に対人戦で見返してやりたいなどと屈折した考えを持つようになった時は、圧倒的な技術の差で思いもしないようにその意思をおってやったこと。

 悔しければどうした?小僧とあおり、守人が結界を使えず常人と同じでどうする!とけなし、守るのではなく、守るものに剣を向ける気かと悟し、折っては鍛えなおしたことを。

 体はすばやく、柔軟な動きができるようになった。

 魔力も増え、結界を張るタイミングも誰かの前に出て守るという勇気も持った。

 おごりもなく、守人、精霊魔法、精霊を使役し、森を守りし今なき称号。

 それにふさわしくなった。

 そろそろ与えるべきその時になって、リエンは命をかけ、一切の迷いなく禁術を放ったことを。

「早計・・・ではなかったのですね?」

「断じてない。リエン様を鍛えたのは、わしとほかの精鋭の持ち回りだ。敵の状況を見る術も一流だ。何より、リエンがいち早く異常に気づいた。魔物だったからもあるが、魔物がおびえている、まるで逃げてくるようだといったのもな・・・その情報があり、索敵にたけたもの、遠見スキルを持つものが確認したのだ、そして、大群が、フォモールまで来ていると聞いた時は、わしも慌てて支度をした。死ぬならば老いぼれだと駆けつけようとな」

「精鋭でも厳しかったのですか??」

「エンゲージを発動すれば?」

「確かにエンゲージ発動していれば防ぐだろう。だが、時間がかかるのだ。あれをするには・・・それに、押し返さなければならないほど、指定範囲を超えてきて居ったからな」

「そこで、リエン様」

 この幼女、リエン様のことになると目が光居る・・・

「そうだ。迷わなかったそうだ。正確にはその時間さえもなかったそうな。エレナ様は作戦の議題にあがっただけで憤怒したらしいが、そんな折に、言伝だ。『リエン様が独断にて禁術を発動!リエン様より伝あり!炎竜を使えしエレナ様に戦術指示、応援、そして守人として使命を果たすことを、伝。最後は恩手にて、参られたし』とな、つまりは、もう間に合わなかったのだ。その時、戦術指示などと、ああだこうだいっても守りきれない時は選択をしなければならない」

「そ、それじゃあ・・・だれとも理解しあえず、ただ守るためだけに?」

 というのは、幼さが残る青年、実に優しそうだ。

「一人だ。そして今からだったのだ。それが全て水の泡になり、私たちがどれほど罪悪感を抱えようと返せぬほどに潔く、美しく、尊い、犠牲へと自らを投げられた。かの英雄たちのようなことを、大した恩もなく、友もなく、母のぬくもりも忘れておるその身で。美しく儚く、消えていったのだ。わしは忘れん。あの後悔を。あのときの戦士たちの悲痛な表情を・・・あのじゃじゃ馬の狂ったような泣き様も・・・静寂を取り戻した嘘のような静けさを。・・・心にあったのはこの村や他の村のように起こった喝采ではない。無だ、何もかもが無に帰した、真っ白な無だ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

いかん、情がこもりすぎた。

「で、でも、でも!」

「そうだ、生きておられた。真っ白な髪になって。全てを見間違えるほどにすっきりした顔で。わしが女子ならほれたのぉ!ふぉふぉ!すまんすまん!くらくなってしもた!」

 ゆっくりと皆が顔を上げてくれる。

 そして、

「わたしは惚れている」

 こやつ・・本気だ・・・。どうなっとるんじゃ、最近お若いやつは・・・

 この雰囲気にそれを言えるのか。

 まるでじゃじゃうまだ・・・

「すごいわね、あんた・・・幼女のくせ!ご、ごめんなさい!!」

「ふっ」つい笑みがでてしまう。

「ぼ、ぼく、分からないけど、お友達になりたいです」

「「「「!?」」」」」

 いかん、ちょっと泣きそうだったわい・・・

 あまりに普通なことを言う。だが、これは・・・危なかった、安心したところにこのようなことを言う!泣かすきか!

「そうですね! まずは友達ですね!」

「わ、わたしはほら、その外も知ってるし、調子に乗りすぎることもないようだけど、少し教えてあげないとね!と、友達にね!」

「うざい・・・」

 ・・・・

「・・・戦士として尊敬いたします!」

「おれもだな・・・俺だったら憎む・・かもしれない」

「リエン様はわたしの夫になる人、だからあなたとは違う」

「おいおい・・・」

「いつそうなったのよ! 親衛隊でしょ!」

「わたしの本心はここに決まった」

 ふふ・・・知らぬこととはいいことよ。

 こんな希望もしらないだろう。リエン様よ。

 まだまだ教えることがあるようだ。

 しかも今度教えるのは幸せだ・・・

 幸せになるためのことなのだ。

 だが、言っておかなければならないな。

「おぬしたち、シンラへ帰るなら、急いだほうが良いぞ」

「「「?」」」」

「リエン様は明日、シンラへ向けて出発するからの、わしもそれぎりぎりまで英気を養って居るのだ」

「「「え!?」」」

「じゃ、わたしはこれで」

 はやいな・・・幼女よ・・・礼がなさ過ぎるぞ・・・。もはや天晴れだ。

「はやっ!ちょ、わたしは、わたしは会えないの!?」

「残念だったな」

「悪いわね!」

 なんだ・・・皆出て行ってしまったが・・・こやつは? 仲間ではないにしろ、ひどくないか・・・

「会いたいんですけど」

「そ、そうじゃのぉ・・・あ、リエン様は冒険者になるから15を超えたら行くと思うぞ。お主の主のところに顔出すなら、最初としては良いかもしれない。進言しておこう」

「ほんと!!」

「あ、ああ。だから頑張りなさい」

「じいちゃんありがとう!!」

「じ、じい・・まぁよいか」

 不思議と傷はいえていくようだった。

 そして同時に思った。

 若いとはうらやましいことだと。

 そして、生きたいっ・・・と。

 これからのリエンとともに、小僧ではなく、リエン様と仕えることができる偉大な英雄と。

 それにしてもあのアイシャとかいう幼女・・・あやつ戦士としては分からないが、女としては恐ろしいものを持っておる・・・いかん、今は療養だ。


 次の日

馬車が遠めに見えるがなんと際立っている白髪か・・・リエン様。

わしはまだまだやることができた!

今度はこの命。懸ける番だ。

「じぃ」

「どうしたんだ。そんな様子じゃいけませんぞぉ」

「いや、そのぉ」

「うむ? なんだ浮き足立って居るな?しっかりせよ!」

「「「「は!」」」」

「ほら、リエン様、乗りますぞ」

「さ、先に乗ってくれる?」

 おお、なんとかわいらしい。

 孫とはこういうものかも知れぬ。

 ずっと一緒に生きていきますぞ!

わしはやる気が俄然出てきたところで馬車に手をかけあけた。

「!?」

 殺気!?

「バリスタ? リエンちゃんは?」

「お、居られますぞ!ここに!なはっ!!」

「お、お母様」

「リエンちゃん。こっちよ、なに先に乗ってるのかしらね。もう、ちょっと怒っちゃった」

「ごほ・・・無体な」

 じゃじゃうまが・・・進化しておった・・・

「失礼します、バリスタ様は?」

「ん? 早く乗れば良いのにね、ああ、操車したいのかしら?」

「・・・・・それはあんまりだと」

「じょ、冗談よ。早く乗りなさい」

「は、はいですじゃ・・・」

 永く生きられるだろうか・・・

 わしも冒険が始まっているようだ・・・旅はこうして始まった。

 理不尽だ・・・。


読んでいただきありがとうございます!

次回より回想より本編にいきます^^

シンラへの道中と学園です。

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