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そして我を失う

「どうしたの? 口に合わなかった?」

「いえ、とても美味しかったです! 驚いちゃって」

 なら、いいけどと加太付けに行く舞さん。

 しばらくして、基地に到着した。

 基地とは陣地のようなものだと解していたのだけど・・・・

 そこは港、そこは、街、要塞・・・異世界だった。

「すごいでしょ?」

 恐らくそういっているのだろうけど僕の耳は空を飛ぶ怪物の声に叫びで聞こえない。

『キィーーン』とこちらをにらみ地上にいるもの。

『クゥオーーーグゥオー』と空を旋回し、ものすごいスピードで飛び交う、きっとあれはドラゴンをゴーレム化したもの?!ってそんなことできるの!?

 ブオォンブォオンブォオンと旋回する羽を持つ昆虫のようなでかぶつまでいる。

 だいたい、いまこうして乗っている車というものもおかしい!

 ガラスにへばりついているけど、このガラスもおかしい!

 なにもかもおかしい!

 まわりはそんな僕がおかしいのか、くすくすと笑っている。

「こ、こんなすごいの見たことないです! だから」

「悪い悪い、ルイン君を馬鹿にしているわけじゃないよ」

「ソウ、ぼくも小さいころはそうだった。田舎だったカラ」

「隊長の言うとおり馬鹿にしてないさ。ボブも言ってるだろ? まぁ俺はそんなことなかったすけどね、ぐへ!」

「黙れ新米。ルインちゃんほら、ひざの上! シートベルト!」

「舞さん、ひざの上はかえって・・・いえ、なんでもないでス」

「ボブ、もうあきらめろ。貴様の真面目なところは評価しているが、判断を誤るな」

「い、イエッサー」

 ボブさんと隊長が神妙な面持ちでこちらを見ているが、僕自身は興奮してどんな顔をしているかも想像できない。

 ノートに書いていたことでも発音とかがスムーズに分かるだけで、原理や魔法名などは不明だから落ち着きもしない。

 アスファルトと呼ばれる道路をぐんぐん進み、時々とまっては門番?の人がチェックしている。

 とまっては進み、とまっては進みを繰り返すたびに、化け物どもは遠くキャンプのような場所、建造物が多いところへと進む。

 やらなければならないこと。

 それは理解だ。

 異世界転移を繰り返して、吸収できているものはすぐにでも確認したい。

 できることはすべてやっていく。

 理解できていないものは、理解していく必要がある。

 名前だけ知ってるなど、たとえハーフだとしても許されない。

 エルフは強者を尊び、実ある知を生かし、芸術たる幻の知を奏で歌う。

精霊族に至るにはその全てが必要だ。

それを求めるが故に誇りある生き方ができるのだから。

そうして舞さんのひざの上で興奮していると・・・

「ルイン君、降りるからね」

「はい」

 名残惜しそうに降ろしてくれた。

 舞さんは何を考えているか分からないときがある。

「ルインちゃん最高・・・乗りごごち」

「??」

 たまに日本語が理解できない。

「舞隊員は、私と一緒に事後報告だ。先に部屋へ案内してこい、ルイン君も指示を守るように、決して単独行動・・・一人でうろちょろしないことだ。いいかい。危険物が火を噴くからね・・・」

「ははあは! はいぃ!」

「隊長・・・脅かしすぎです。かわいそうでしょ!」

「そうでもいわないと本当に危ないからな」

「・・・私の部屋にいれば大丈夫だからね」

「はい・・・よろしくお願いします・・・」

「おほっふぉ・・・」

『本当に大丈夫っすか?』

『ある意味危ないのでは』

『さ、さすがにそんなことはないと思いたいぞ。この国の将来のためにも』

『『『・・・・・・』』』

 男性陣が英語という言葉を使い、心配そうに見ている。

 よほど危険なのだろう。

 それもそうだ、僕の無限収納にあるものよりもどでかいものを手足、いや、爪だ。

 強力な爪、魔導ともいえる破壊をもたらすものがあふれているのだから。

 僕が舞さんの手を握る。

 舞さんも緊張しているのか、戦意高揚しているようだった。

 ん? 高揚? たまに舞さんが分からない。

 とにかく、もう、夜だ。

 一人になったら即転移でイルに戻る。

 そしてまずは熟睡して、今できることと行動の確認をしよう。

 一個でも多く進めないと!

 そう決意した!

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・決意は破られていた。



『お姉さんと一緒に踊ってみましょう! パパンちゃんも一緒に踊りますよぉ!』

『フモゥ!』

「箱の中に人がいる・・・・よ・・・魔物? 獣?族・・?」

「あははは! 本当にそんな反応するんだね! ぐっじょぶ!」

「こ、これは魔法!? それとも妖精がいるの!? あれなに! なんて名前」

「あーんもうぅ! くぁわい~いぃ~!」

「あう・・・それどころじゃ」

 抱きかかえられ箱の前にちょこんと置かれた。

「じゃ、見てて!わたしも急いで済ませてくるから! しっかり教えてあげる」

「あ・・・・・」

 舞さんが出て行ってかれこれ2時間ほど釘付けで見ている。

 話しかけてもみたけど返事もない。

 攻撃に反応するかをかまえてみるけど、無反応。

「なんだこれ・・・」

 魔導であるのに魔力は感じられない。

 中にいる人間や亜人(妙にふわふわしていて顔まで獣の獣人)には魔力すら感じられない。

 やばい・・・・

 加護がなければとっくに狂っているかもしれない。

どのような生物にも魔力はあるはずなのに・・・

 好奇心があふれ、頭が理解を望んでは放棄する・・・を繰り返している。

 現在は、魔法を放つ少女?が箱の中で活躍している。

 ふざけたような呪文を使い、ありえない召還魔法を連続で放つ。

 こいつ何者だ・・・

 ぷりぷりきゅありんりん♪

 ふがぁあああ!

 そんな光景が目の前で起きている・・・

 せ、精霊なのですか!?

 精霊は小さく、幻想的な顔立ちをしていると聞いている。

 キラキラしているし、目が異様に大きくはあるけども、可愛いといえば可愛く、美しいといえば美しい気がする・・・

 ぷりぷりきゅわわん?魔法少女をなのるエモリン・・・その正体は精霊さまか・・・

 !?

「色が紫色!?」

 僕は自身の腕が紫色に変化したことに驚いた。

「エピーリア!」

 どこかおかしい部分はと探すと速攻で見つかった。

 状態・・・混乱

 た、確かに・・・

 も、もどろう!

 星が見えるところを探す。

 トイレとよばれるかわやに移動し、隙間から見える星に願う。

 混乱状態で僕はアルブ、イルの里「3時40分」へもどる。

 ログは異世界地球、九州南端の人工島、いざない「19時32分」と記録した。


ちょっと早めの投稿です!

ブクマしてくれた方、さっそくありがとうございます!

そのご期待を褒美とし、任務だと思ってがんばりまする/)`・ω・´)

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