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新米勇者のマネジメント講座(ドラッカー理論)  作者: 佐藤コウキ
第1章 ドラッカーって何? それおいしいの?
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4話、勇者タカシは生活費を稼がなければと思った

 ギルドを出てしばらく歩くと、タカシは空腹であることに気がついた。太陽は真上に来ている。1日の時間構成は地球とほぼ同じ。

 大衆食堂を見つけて中に入る。

「いらっしゃいませー」

 猫耳のケモノ娘がオーダーを取りに来た。メニューを見て、おまかせ定食を頼んだ。

 周りでは大きな剣を持った青年や魔法の杖を持った少女などが雑談していて、食堂の中は喧騒に満ちている。

 テーブルの上のオーダーシートを見ると、500リラという値段が書いてある。

 定食が5百リラか。ということは、契約金の1万リラは日本での1万円くらいなのかな。タカシはジーンズのポケットから銀貨を取り出す。それが10枚で1万リラだ。

 1日3食、それに雑費で合計2千リラが1日の必要経費か。5日でお金が無くなる。

「最初の冒険は生活費稼ぎかよ」

 受付のお姉さんからもらった厚いガイドブックを開く。

 1ページ目の下に受付嬢のサインがしてあった。あの色っぽいお姉さんはナターシャという名前なのか。表紙を見ると「ようこそパターソンの町へ、勇者のためのガイドブック」と書いてある。

 定食が運ばれてきた。トレイの上には、コッペパンが二つと豆のスープ、それに野菜サラダ。タカシはガイドブックを見ながら食べ始めた。

 ガイドブックによると一番弱いモンスターはスライムだった。その次はコボルト。HPは15で、タカシの3倍強い。スライム退治で稼ぐしかないな。

 説明によると、スライムは町の外れにあるスライムの森に群生しており、そのすべてが吸血スライムだった。毒を持っていて噛まれると数日寝込んでしまうという。

 捕まえたスライムをベルギー商会に持っていくと1匹につき100リラもらえるらしい。するとノルマは1日に20匹ということになる。

 食べ終わって代金を払い、外に出る。ガイドに書かれていた「勇者の宿」に向かった。

 その宿は、勇者の登録をした人間は無料で自由に使うことができる。トイレや水道は完備されているが、炊事や風呂などのときは薪を割って火を起こさなければならない。

 タカシは木造2階建てのアパートのような建物の前に到着した。

 中に入ったが誰もいない。受付に置いてある名札に自分の名前を書いて、階段を上り、2階の奥の部屋に名札を取り付けた。たくさん部屋はあるが、ほとんど空いていた。

 ドアを開けると、中はベッドとテーブルのみ。

 外に出て宿を一回りした。裏にゴミ捨て場があり、布袋などが捨ててある。タカシは使えそうなものを拾った。

「お金は節約しなきゃね」


 タカシは草原に出て、スライムの森を目指した。

 しばらく歩くと小さな森が見えてきた。近づくと何やらピョンピョンと跳ねている物が見えた。

 それは野球のボール大のスライムだった。水まんじゅうのように半透明でプニプニしている。中に細胞核が見えた。それがうねうねと地面を這っていたり、1メートルくらい飛び跳ねたりしている。

「さあ冒険の始まりだ。モンスター退治を始めるか」

 右手に大きなトング、左手に布袋を持って森の中に入った。

 スライムは思っていたよりもすばしっこい。トングで挟もうとするが機敏な動作で跳ねまわる。運動不足のタカシは息を切らして追いかけ回した。

 なんとか10匹を袋の中に捕獲したときは、もう日が暮れていた。

 袋をかついで夕闇の中、町の東にあるベルギー商会に向かう。

 その店の店主にスライムを渡し、百リラのニッケル硬貨を10枚受け取った。

 疲れた体を引きずって町の食品店に行き、パンとミルクを買って帰宅する。

 質素な夕食を食べると、タカシはベッドに倒れるように横たわった。

「これから俺はどうなるんだろう……」

 親に頼って生活費の心配をせず、毎日ゲームばかりやっていた日々を思い浮かべていると、いつの間にか眠りについた。


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