2話、初陣
タカシが所属することになった第8補給部隊は、トルティア城から南西二百キロメートル先にあるガリア砦に向かっていた。今回の任務は不足している食料や武器の補給だった。部隊の総員はサマーズ隊長を含めて212人で、それにロバート小隊が加わっている。
ガリア砦は千人ほどの兵が常駐している小さな城で、位置的にいって、それほど戦略的な価値はない。戦いは常に西のマルタ高原で行われており、前回の大規模な会戦ではロバートが活躍している。
もう、九月の半ばを過ぎているが、残暑は厳しい。照りつける日差しの下、42台の荷馬車は舗装された軍用道路を緩やかに走っている。
4頭立ての軍用馬車には魔法石を使ったベアリングが取り付けられていて摩擦は発生しない。そのため、1台の馬車に5トンほどの荷物を積むことができる。
しかし、上り坂などは馬にとって負担になるので、乗員が降りて押すことになる。タカシも何度か馬車から降りて荷台を押していた。
昼食のために補給隊は荷馬車を停めて休憩することにした。
タカシは補給要員達と一緒にサマーズ隊長のためにテーブルを用意したり、全員の食事の用意をしたりして忙しくなる。
仕事が一段落して、やっとタカシは食事にありつく。食べ終わってぼんやりしていているとエルフ族の青年が声を掛けてきた。
「タカシさんは、なかなか手際がいいんだなあ」
にこやかに笑いかける。細長い体に亜麻色の髪。耳がとがっていなければ人間と相違はない。補給隊用の迷彩服が似合っていなかった。
「ああ、こんにちは……。ええっと?」
「私はハンスです。第8補給部隊の伝令や斥候を担当しています。よろしく」
そう言ってタカシの横に座り込む。
「ああ、どうも。僕はタカシです。よろしくお願いします」
上目づかいで頭を下げた。
「どうしてエルフ族が人間軍に入っているか疑問のようですね」
「えっ、……はい」
心中を読まれたようでタカシは少し動揺した。
「転生してきたばかりで世の中の状況はあまり知らないのですよね」
タカシはハンスに注目する。自分が日本から転生してきたことを知っているのか。そして、それは珍しいことではないらしい。
「エルフ族は大陸の北にあるエルフ島に住んでいるんです。寒い地方なので農地には適さないし地下資源があるわけでもない。だから、貿易や出稼ぎでお金を得るしかない」
「貿易?」
「はい。魔族から入ってくる鉱物を人間に売ったり、人間が作った服や家具などの生活用品を魔族に売ったりして稼いでいます」
「ええっ! 魔族と人間は三角貿易をしているんですか?」
「戦争と経済は別のものですよ。利益があれば敵対している相手でも取引はします」
タカシにはよく分からなかった。テーブルの上で殴り合いをして、その下では握手している、という構図が頭に浮かぶ。
「あのー、エルフ族に正義感というものはないんですか……?」
タカシの問いかけにハンスは苦笑いする。
「正義などというものは魔王軍にも人間軍にもある。そこら辺にいっぱい転がっていますよ。そんなボンヤリしたものより実利を重要視する。それがエルフ族のモットーです」
ハンスの笑顔になぜかタカシは説得力を感じていた。
エルフ族は魔族にも人間側にも協力しているので、降伏勧告などの使者には通常、エルフが使われる。エルフ族の使者は殺さないという不文律があり、魔族と人間の両方で偵察や通信業務に就いていた。
「戦争がなくなって平和になれば良いと思って僕は戦争に参加したんだけど……」
「仮に魔族を殲滅したとしても、その後は人間同士で戦うことになるでしょう。戦争がなくなることはありませんよ」
ハンスは平然と言った。
タカシは温厚なハンスの顔を見て、それから視線を下に落とし、自分が座っている青いシートを見た。
そういえば地球でも人間同士の戦争がなくなることはないよなあ。タカシは自分のポリシーが揺らいでくるのを防ぐことができなかった。
*
それから二日後、昼前にガリア砦の近くまで行くことができた。
砦は山に囲まれている。補給隊は森林に伸びる長くて緩い坂を上っていた。晴れ渡った秋空。タカシ達はさっきからずっと荷馬車を押している。
やがて道が平坦になる。サマーズ隊長が部隊に休憩を命じた。
これで休むことができる。タカシは息を切らして地面に座り込んだ。汗でシャツが濡れている。ロバート小隊には軍服が間に合わなかったので、いつもの服を着ていた。
「お疲れ様です。タカシさん」
パトリシアが水筒を差し出すとタカシはグイグイと飲んだ。
「これで後は下り坂なので楽になりますよ。そして、その先が目的のガリア砦です。もう少しです」
疲れていたのでタカシは軽く彼女にうなずいただけ。
蹄の音が聞こえてきた。先行偵察していたハンスが戻ってきたのだ。
ハンスは馬を下りて、サマーズ隊長に報告している。すると隊長はロバートを呼んで相談し始めた。
少し離れていたので話は聞こえなかったが、雰囲気から容易ならざる事態になったのだとタカシは感じた。
隊長が馬を泉に連れて行くように指示したので、タカシ達は馬を連れて坂を下り、湧き水のそばに手綱をつないだ。馬は一斉に水を飲み始める。鳴き声を出さないようにとの配慮だった。
タカシが戻るとロバート達が道の先に行ったようなので、そちらに向かう。しばらく歩くとロバートと隊長が大木の根元にいて、姿勢を低くしろとロバートが手でタカシに合図してきた。
中腰でロバートの元に行く。どうしたんですかとタカシが聞くと、気づかれないように覗くように指示された。
茂みの隙間から山のふもとを見る。そこからは約1キロメートル先にある、塀に囲まれたガリア砦を見下ろすことができた。そして、その周りにうごめく物をタカシは確認する。
砦は魔王軍の大軍によって包囲されていた。
*
「もう撤退するしかない」
サマーズ隊長は苦しそうに言った。
「しかし、それではガリア砦の千人を見捨てるのと同じですよ」
ロバートが食い下がる。
「では、どうするんだ。ハンスの報告ではコボルトが二千匹とリザードマンが二千、合わせて四千の兵力だ。こちらの二百人で何とかなることではない!」
怒鳴りつけるようにサマーズが言う。
「私が切り込んで包囲を突破します。そこから突入してください」
ロバートが腰に手を当てて年上の隊長に反論する。
はあ、とサマーズ隊長が息を吐く。
「ロバート君。あなたが一流の剣士であることは知っている。しかし、戦いとは兵の数がものを言うのだ。一人だけ頑張っても仕方がない」
子供に対して言い聞かせるように説得する。
「砦の食料も武器も不足している。援軍が来るのを待っていたら砦は落ちてしまいます。千人の仲間を見殺しにしてもいいんですか!」
ロバートの正義感が逃げることを拒む。
「いいかい、ロバート君。戦争とはそういったものなんだ。我々二百人が突撃しても、犠牲者が千人から千二百人に増えるだけだ。無意味なんだよ……」
そう言ってため息をつく。
サマーズ隊長は前から無理な命令ばかり言い渡されてきた。そのため、いつのまにか気力を失い、仕事に対して投げやりな態度が目立つようになっている。
二人が言い争っている姿をタカシ達は離れた場所からうかがっていた。
会話が聞こえてきたので、状況は把握できている。タカシは自分なりに対策を考えていた。
今回の任務の目的は砦に食料と武器を搬入することだ。敵に打撃を与えたり殲滅したりすることではない。こちらの戦術的な資源としては、補給隊の二百人とデリラさんの電撃魔法、それにジョディのパラライズスパークとパトリシアさんの混乱魔法か……。あと、砦の千人も重要なリソースだ。タカシは考え続ける。
そうだ、地形も調べないと。タカシは馬車から砦の地図を引っ張り出した。
「何をしているんです?」
ハンスがやってきてタカシが持っている地図をのぞき込む。
「うーん、何か利用できることがないかと思って……。この場所はなんだろう」
タカシが地図上の地点を指さす。砦の西側に黒く塗られている地区があった。
「それは沼地ですよ。沼と言っても地面がぬれている程度で、行軍には支障ありませんね」
ハンスは自分の任務上、地形のことには詳しい。
砦から北東に一キロ離れている場所に補給隊。そして、砦の西側の一キロほど先に沼地がある。これは使えるかな。タカシはそう考えて、ロバート達に近づいていった。
「あのう。僕に考えがあるんだけど……」
ロバートと隊長は驚いたようにタカシの方を向く。
「何か良いアイディアがあるというのか」
隊長がタカシをにらみつける。口論の怒気が残っていた。
「はい。しかし、もう昼過ぎですから食事にしましょう」
二人の気を落ち着かせるためにタカシがニコリと笑いかける。
それにつられてロバートとサマーズ隊長は、ゆがんだ笑いを浮かべた。
*
魔王側の陣営。魔族の将軍であるザガンはテントの中でくつろいでいた。
参謀のストラスは緑色の髪をかき上げ、テーブルの中央で酒を飲んでいるザガン将軍にチラリと目線をやる。
将軍は大きな体格をしていた。赤い髪は伸ばし放題。酒のせいで顔が赤らんでいる。浅黒い肌と、頭に生えている二本の角は魔族特有のものだ。そのほかに一般的に大きな体をしている以外は人間と変わりがない。
黒い上下の軍服に長いブーツを履いている。帯剣のための革ベルト。その軍服は第2次大戦のドイツ軍の物によく似ていた。
ガリア砦の包囲は将軍にとって退屈極まりない作業であった。常に先頭で戦う猛将タイプのザガン。今回の任務は、砦を包囲して補給を絶ち、中の戦闘員を降伏させるというものだった。特に戦いらしいこともなく、包囲している魔王群はたるみきっていた。
「おい、ストラス。ちょっと兵隊の様子を見てこい」
ザガンがボンヤリした声で命令した。
「はっ」
ストラス参謀はイスから立ち上がって敬礼する。そして、テントから出て陣営の査察に向かった。
ストラスは若く有能な参謀だった。おとなしい顔をしているが突撃型のザガン将軍を補佐して多くの戦果を上げている。
包囲している魔王軍はコボルトとリザードマンのモンスター混成部隊だった。総数四千の部隊を20名の魔族が指揮統率している。
コボルトは狼男のようであり、知能は低い。しかし、中には知能が高いものがいてコボルトの一団を指揮している。
そして、リザードマンはトカゲ人間だ。見た目はトカゲで人間ほどの体長がある。2本足で立って戦うことができ、知能は人間と変わらない。馬に乗って操ることができる。革の鎧を着て皆が剣を持っていた。
ストラスは馬に乗って、モンスター部隊を見て回る。野営が続いているのでコボルト達は、だらけて草むらに寝転んでいた
「大丈夫かな……」
ストラスは軍の様子を見て不安に思う。しかし、ガリア砦のように戦略的な価値が低い場所に人間側が大軍を送ってくるはずもない、そう思って将軍には何も言っていなかった。
日が西に傾いている。
そろそろ夕食の準備をさせるか。ストラスはそう思ってテントに引き返そうとしたとき、異変が起こった。
馬のいななきとともに北側の林から騎兵が飛び出してきたのだ。
その30騎の小隊は、油断していたリザードマンに襲いかかり、剣を抜く暇も与えずに切り倒した。さらに陣の中を駆け回り、多数のモンスターを赤い血しぶきとともに殺していった。
騎兵の先頭はロバートだった。左手で手綱を握り右手でロングソードを振り回してコボルト達を瞬殺する。それにトーマスとニコラスが続く。トーマスも長剣を自在に操って魔王軍を混乱させ、ニコラスは疾走する馬上から弓でリザードマンの革の防具を正確に打ち抜いていた。
「戦闘準備! 戦闘準備だ!」
ストラスは大声で軍に命令しながら本陣のテントに走る。テントからはザガン将軍が引きつった顔で飛び出した。
「何事だ!」
酒に酔っているので、すぐに判断できない。
「敵襲です! すぐに迎撃の準備を」
テントに到着したストラスが将軍に命令をうながす。
「よ、よし……」
そう言ってザガンが馬に乗ろうとしたとき、ロバートの奇襲隊はテントの前を疾走しながら横切った。
ストラスとロバートの視線が絡み合う。
凜とした顔に涼やかな目。戦闘のまっただ中にあるというのに冷静な表情。こいつは強い。ストラスはロバートに少なからぬ恐怖を覚えて戦慄した。
「ストラス! 全軍で追撃だ。付いてこい!」
ザガン将軍は馬に乗って奇襲隊を追う。ストラスはあわてて将軍を追いかけた。
ロバート達は魔族の陣営を縦横無尽に駆け回って殺戮した後に、西側の林に向かって逃走していった。
逃げた奇襲隊をリザードマンの騎兵部隊が先行して追いかける。
林の前には浅い沼があって、そこに突撃した騎兵は何かにつまずいて次々と転倒した。サマーズ補給隊が事前に仕掛けておいた罠、つまり、ロープが張ってあったのだ。
「馬から下りて進軍しろ!」
ストラスの命令が飛ぶ。
林の中から矢が飛んできて、前方のリザードマンを倒していった。リザードマンは背負っていた木の盾で防ぎながら地面の罠を警戒してゆっくりと前進していく。
ストラスとザガンは沼の手前でモンスター達に戦闘の指示していた。
もう少しで林の中に入ることができる。ストラスがそう確信したときに、沼の中央で突然、破裂音がして閃光が走った。沼に密集していたモンスター達がひっくり返る。リザードマンもコボルトも感電して、ぬれた地面をかきむしって苦しみもがいていた。
「デススパークか……?」
ストラスは甚大な被害に慄然とした。デススパークを使う者は魔族の側にもいる。その攻撃力は強いが範囲は狭い。今の惨状のように沼全体のモンスターを立ち上がれないようにすることはできないはずだった。
「水があると電撃魔法は違った威力を発揮するのか?」
電撃魔法の使い方を工夫するとは、どんな人間だろうか。ストラスは千匹近い被害に多少の混乱をしていた。
「ええい、突撃だ。突撃! 電撃魔法は連射できないはずだ」
「ダメです! 将軍」
突撃命令をストラスが撤回させる。
「まだ、スパークを使う人間がいるかもしれません。ここは沼を迂回して攻撃するべきです」
そうか、とうなずいて将軍は兵を二つに分けて沼の左右から林に向けて進軍させる。
モンスター達は怖じ気づいていた。盾を構えて慎重に進んでいく。
ストラスは違和感を覚えた。なんのために敵は攻撃してきたのだろうか。こちらの兵を電撃魔法で削るため? 戦略的に意味がないのに危険を冒して突撃を敢行するだろうか。
ハッとしてストラスは振り返った。包囲していた砦はガラ空きだ。
「将軍! これは陽動作戦だ。敵の狙いは砦です。兵を千だけ残して砦に戻ってください」
林の中の敵に気を取られているザガン将軍にストラスが訴えた。
*
砦の手前まで茂み伝いにコッソリと進んでいた補給隊は、向こうの沼地で発生したデススパークの威力に驚いていた。
デススパークは殺傷能力は高いが、その有効範囲は狭い。しかし、沼地ならば電気が広がることにより広範囲の敵を感電させて無力化することができるとタカシは考えたのだ。
よし、敵はロバートさん達に注意が行っている。この隙に補給物資を砦に運ぼう。そう思ってタカシはサマーズ隊長を見たが、彼は口を開けたままボンヤリと沼の方を見ていた。
「サマーズ隊長! 今がチャンスです。荷物を砦に入れましょう!」
タカシが強く進言すると、隊長は驚いたようにタカシを見て、それから補給隊に命令する。
「補給作戦開始だ! 補給物資を砦に搬入するぞ」
隊員は急いで荷馬車を砦に向けて走らせた。
砦の周囲は茂みが多くて、道もデコボコしている。補給隊は何度か立ち止まっては砦の門に向かう。
ようやく門の近くまで来ると、西から魔王軍が引き返してくるのが分かった。
「思ったよりも早いな」
タカシが舌打ちする。計算では、物資を砦の中に入れるまでに戻ってこないはずだった。
サマーズ隊長は馬で、木製の大きな門の前に走り、砦に向かって叫ぶ。
「開門! 私は第八補給隊のサマーズ隊長である! 補給物資を届けに来た。開門!」
すると、きしんだ音とともに門がゆっくりと開き始めた。
中から武具を着けた兵が次々と走り出てくる。
「私はベイカー司令官です。このような危険なところに物資を運んでいただいて痛み入る」
そう言って敬礼したのは、中年だが長身で引き締まった体をした白髪交じりの男だった。
サマーズ隊長は答礼する。
城を守っていた千余名の兵は、補給隊を守るように横陣をしいた。
タカシとジョディ、それにパトリシアは防御陣の後ろで戦闘態勢を取る。カリーナとバロンは布陣の前に出て得意な得物を構えた。
魔王軍が土煙を上げて突撃してくるのが見える。もうすぐ総力戦だ。タカシは胸の鼓動が高鳴って押さえることができない。カリーナから譲られたダガーナイフを握りしめる。隣ではジローが争いの気配を感じて、うなり声をあげていた。
リザードマンの騎馬隊が迫ってきた。砦の守備隊は一斉に矢を射かける。騎馬隊の前列が倒れて、乗っていたリザードマンが放り出される。しかし、後に続く騎馬隊が臆することなく襲ってきた。
長い槍で防御壁を作り対応する。攻めあぐねて騎馬隊は立ち止まった。カリーナは両手に持った凶悪なダガーナイフで敵を倒す。身が軽く素早いカリーナは敵の中を走り回り、敵を手当たり次第に切り裂いた。
大男のバロンは革の鎧を身にまとい、大きな斧で敵を両断する。重い武器を木の棒のように軽々と振り回しては自分の周りのモンスターを鎧ごと切りまくった。
コボルトしか相手にするなとカリーナに言われていたので、タカシはコボルトを見つけては大型犬のジローと協力して倒していった。
「パラライズスパーク!」
ジョディの電撃魔法が、密集していたリザードマンに炸裂する。瞬間的に十匹以上の敵がのたうち回った。
「コンヒューズ!」
パトリシアの混乱魔法。一匹のコボルトが錯乱して他のコボルトに襲いかかる。
最初は砦の守備隊が優勢だったが、次々と援軍が到着して魔王軍が押し出してきた。
荷馬車は全て、どうにか砦の中に入っている。しかし、そのまま門の中に守備隊が逃げ込むわけにも行かない。それに便乗して魔王軍も突入してくるからだ。
じりじりと後退する守備隊。もうダメか……そう皆が感じ始めたとき――。
魔王軍の後方から一頭の馬が疾駆してきた。それに乗っているのは剣士ロバート。
馬上で采配を取っているザガン将軍を目指して一直線に走り抜ける。周りのモンスターを蹴散らし、将軍を守っていた魔族の近衛兵を切り倒して将軍にロングソードを振り下ろした。
鋭い金属音を立てて剣と剣がぶつかり合う。すんでの所でストラス参謀がロバートの剣を受け止めていた。しかし、ロバートはソードを返して下からストラスの剣を弾き飛ばす。
将軍が剣を抜いてロバートに斬りかかった。ロバートはギリギリでかわし、ソードでザガン将軍の胸を貫いた。
どよめきが両軍からわく。
「将軍を討ち取ったー!」
ロバートが血まみれのロングソードを高く掲げて勝利の宣言をした。
モンスター達に動揺が走った。コボルトが逃げ出す。それにつられてリザードマンも逃げ腰になった。さらに守備隊が士気を取り戻して魔王軍を押し返し始める。
「逃げるなー! まだ兵力はこちらの方が有利だ!」
ストラスが檄を飛ばすが、臆病風に吹かれた軍隊には効かなかった。少しずつ隊列が崩れ始め、やがて一斉に崩壊した。
一人で戦うわけにもいかず、ストラスも他の魔族とともに撤退した。
守備隊から歓声が上がる。皆が剣を振ってロバートの勇敢を褒め称えた。
***2話終了




