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新米勇者のマネジメント講座(ドラッカー理論)  作者: 佐藤コウキ
第1章 ドラッカーって何? それおいしいの?
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1話、勇者タカシは一冊の本と出合った

 ドラッカーのマネジメントをファンタジーで解説しようという試みです。


 この小説は結構シリアスなものです。ドラッカー理論についての解説本やコミック、それにあの有名な小説もありますが、ドラッカーは複雑で分かりにくいと思います。それで初心者にも分かりやすいようなストーリー形式の解説小説を書こうと思いました。


 私自身ドラッカーは良く分からないし、経営などの仕事はやったことがないのですが、素人が勉強しながら書いていきたいと思います。

 タカシはゲーム売場で周辺を見渡した。

 誰もいない。棚のエロゲに手を伸ばして取り出す。美少女が下着をちらつかせたカバー絵。その下の方に張り付けられた値札シール。

 上の方に小さくブックオンの社名。枠の中に380円と印刷された文字を見て財布の中身を思い浮かべる。500円持っている。それ1枚しか入っていなかった。

 レジの方を見ると背の高い男の店員だけで、誰も並んでいない。

 チャンスだ。タカシはレジに向かって一歩踏み出そうとしたとき、本棚の陰から女子中学生が二人やってきた。あわててゲームを棚に戻してエロゲコーナーに背中を向けた。目の前には経営がとうたらこうたらの本がぎっしりと並んでいる。

 タカシは目の前の本を取り出して、読んでいる振りをした。

「それでさあ、このゲームが面白いのよ……」

 彼女たちはキャピキャピと後ろで騒いでいる。いつまでたっても去りそうにない。

 その時、大きな咳ばらいが聞こえた。タカシが横を見ると、古本屋のネームが入ったエプロンを着たオヤジ。その店主は、さっさと買って出て行けと言わんばかりに本をガタガタと整理している。

 皺だらけのシャツに薄汚れたジーンズ。17歳の少年が平日の昼過ぎに店をうろついている。タカシは店主から万引きと疑われていた。

 彼女たちは別の棚に移動した。タカシは500円と印刷された値段を確認すると、舌打ちをして持っていた本をレジに運んでいく。

「540円になります」

 大学生のアルバイトは慣れた手つきで本の防犯タグシールを金属の台にすりつけた。

 タカシは青くなる。そうか、消費税があるんだった。

「あの、この本は表紙が汚れていますよね」

「はあ?」

 背の高い店員はタカシを見下ろす。

「ちょっと破れているところがあるし……500円で……どうですか」

 1年近く引きこもっているタカシはコミュニケーション障害になっていた。言葉がうまく出てこない。

「店長!」

 大声で棚の本を整理しているオヤジを呼ぶ

「500円でいいよ!」

 店長は手を止めて大声で答えた。

 店員はため息をついて下の引き出しから袋を取り出そうとするが、タカシは拒否して転がるように店を出た。

 チクショウ、値札は内税にしておけよな! タカシは心中で毒づいて自宅に向かった。チクショウ、何で俺だけうまくいかないんだよ。

 手に持った本を見る。

 白地に「マネジメント」と書名があった。表紙では、頭の良さそうな老人が腕を組んでタカシに視線を投げかけている。

 ドラッカー? 聞いたことがあるなあ。タカシは本を両手で持って、歩きながら考える。

 昔のライトノベルだったっけ? 確か、ナツミちゃんとかいう可愛い女子高生が書いた、ラブラブ萌え萌えの青春野球小説だったかなあ。

 本を見ながら交差点に差し掛かった。突然、太ったおばさんが運転するママチャリが飛び出してきた。

「うわ!」

 タカシはよろめいて側溝に左足を取られた。

 体勢を崩してゆらりと後ろ向きに倒れる。続いて後頭部に激しい衝撃。電柱に頭を激突させ、タカシの意識は途絶えた。


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