プロローグ ー完璧人間の不完全な夢ー
プロローグに主人公もヒロインも登場しないなんて斬新さが感じられます。
「今日は一段と満月が輝いてるね」
黒い服装をした青年は隣に横たわるOLのようなスーツ姿の女性に語りかけた。彼女は地面に倒れたままで反応がない。
「知ってるかな、満月って特別な日なんだよ。身体全身が疼いちゃうような感じで自然とワクワクしちゃうんだ。」
男は女性の近くに寄り、座布団に座るように彼女の背中へと腰を下ろした。横たわる女性の身体は小柄だったため、青年の重さでゴキゴキと一瞬鳴り響き、真夜中の静寂を乱した。
「いやー本当に僕って凄いと思うね。ちょっとだけ語ろうかな、名も知らないOLさんよく聞いててね」
青年は座布団の代わりの彼女に話しかけたがピクリとも動かない。青年は何も反応を示さないことに苛立ち、うつ伏せ状態の彼女の顔を乱暴に掴み、ゴグッと歪な音を立てて自分の顔を見るように向けた。真後ろに顔を向けた首は180°に折れ曲がり、彼女の表生まれてきたことを後悔したような悲壮感を詰めた表情である。青年の方へ顔が向いてるが光を失った瞳は有らぬ方へ向けていた。
「僕はね、何十人も消していったんだ。何年も人を消して、未だに世間にバレていなんだ、いわゆる完全犯罪みたいな。何一つ証拠を残さずに人を消すことが出来る僕はなんて素敵だろうってね」
青年はズボンのポケットからスマホを取りだし、カメラを自分に向けた。画面は青年の顔を写している。角度を調整しながら髪型をチェックし始めた。
「顔も良くてスポーツ万能で頭も冴えていて、クラスメイトから信頼されて…そして何故か運が良すぎる。人間として優秀過ぎるね。まぁスポーツと頭脳は努力の賜物ってやつだけど、運が良すぎることは意外だった。顔が整っているのは運のお陰かな?」
髪型を整えた後、スマホをポケットに戻しながら立ち上がった。
そして地面に寝そべる彼女を背負い、用意したタオルと縄で自分の身体に結び移動を始める。
目的地はこの町内から10キロ以上先の山に行き、誰にも知られずに彼女を消すことである。証拠を残さない為に青年は車を使わずに自分の足で山へと向かった。
歩きながら背中に背負った彼女へ話しかけた。
「もしも、僕みたいな優秀な人が世の中多く存在したらどうなるかな? 後、優秀同士が殺し合いをしたらどうなるのかな?」
空を見上げて輝く満月を見つめて呟く。
「とても素晴らしい殺し合いがいつか起きて欲しいなぁ……僕の夢は叶えられるかな? いや、きっと叶えられる。だって……」
青年は笑いがこみ上げてしまい声が出ないようにククッと堪えた。
そして小さな声で独り言を呟く。
「運が良いからね」
重要人物です




