33 「わたくしは、生徒会長を務めさせて頂きます御加賀見千草と申します」
お待たせしました。
一通りの写真撮影会が終了すると、俺は幼馴染ズと連れ立って今日から通うことになる高校へと向かった。
つってももとより家の前にでんとあるわけだから、行くこと自体には何の感慨もわかないがな。
凛子や倫太郎ら保護者は後から来るとのこと。
凛子は終わったら幼馴染ズの保護者ズで保護者会を開くのだと嬉し気に言っていたな。
それぞれ顔をあわせることはあっても、保護者ズの全員集合は今日が初めてらしい。
もう付き合いも十年を超えるのに、こんなもんなんだなーっとちょっと思った。
しっかし高校生かー。
時が過ぎるのは早いもんだな、としみじみ思う。
「なあ隆文! 同じクラスになるといいな!」
一緒に通えるのが保育園振りでよほど嬉しいのか、満面の笑みで孝臣がそう言った。
こいつもずいぶん成長したよな。
初めて会った時は傲慢生意気なクソガキだったが、今ではリア充真っ盛りのイケメンに成長した。
「もし別のクラスになったとしても、お昼一緒に頂きましょう?」
艶やかな黒髪をサラリとしてそう言うのは、知的美少女に成長した芹。
芹は猫を被るのがずいぶんうまくなったんだよなー。
それを以前指摘したら、「きっとそれは誰かのせいでフォローにまわる羽目に多く恵まれたおかげね」と言って孝臣を睨んでたけどな。うん、同感。
「楽しーことたっくさんあると良いデスネー」
にこにこしながらアリッサはそう言って、くるりとまわってみせた。
スカートがふわりと舞う。
現役人気モデルがやると、そんな何気ない仕草も様になるもんだ。
しかし、モデルという肩書以外は小さい頃からまったく変わらないのがアリッサだな。
その天使のような容姿も、キラキラ輝く金の髪も、底抜けに明るい性格も、独特な喋り方も。
そして残念な頭の中身も。
そこだけはもうちっと成長した方が良かったんではというレベルで、今からテストや進級が心配になる。
……まあ、それは後で考えよう、後で。
「……うん。みんな一緒、楽しい」
何といっても一番変わったのがこいつ、甲子郎だな。
その無口っぷりや、ゲーム漬けの所は全然変わらないけどよ、変わりすぎだよ外見がよ。
出会った頃はこの中で一番背が低く華奢だったくせに、今ではにょきにょき背が伸びて一番のノッポだよ。
ふわふわの髪は相変わらずだけど、長く伸ばしたせいで目のとこが隠れちまってるし。
前髪上げると非常に整った容姿なんだが、本人曰くこの方がまわりが静かでいいらしい。
どうせ俺は髪長かろうが短かろうが騒がれやしねーけどな。
まあ、どっちにしろ俺を除いたこの幼馴染ズ四人はひっじょーに美形揃いなわけだ。
うーん、ちょっと憂鬱だな。
きっとまわりが騒がしくて仕方ねーだろーし。
比較されんのもウゼーだろーしなー。
まあこんな美男美女なんて滅多にいないだろうから……。
と、思っていた所に、突然春の突風が吹いた。
「ぶっ」
と思ったら目の間から突然紙が飛ばされてきて顔に張りついた。
何だこりゃと手をやってみると、それは入学案内の用紙だった。
「あー、ごめんねー。風でうっかり持ってたプリント飛ばされちゃってー。大丈夫ー? 怪我ないかなー?」
前の方からたたたと走ってきて、そう微妙な間延びした口調で話しかけてきたのは、どこの芸能人かと思うようなイケメンだった。
「いや、大丈夫。ほいこれ」
「うんー。ありがとー。君達もこの学校の新入生だよねー? 僕は幸広っていうんだー。これからどーぞよろしくー」
そいつはそう言って笑うと、綺麗な身のこなしで挨拶して去っていった。
「おー、かっこいいのデスー」
アリッサが妙に感心したように言ったが、俺もそう思う。
「っいた、いたた……」
今度はそんな声がしたので横を見ると、三つ編みのちょいダサめ女子が、分厚い眼鏡越しに目の当たりをこすっていた。
どうやら先ほどの風で目に砂が入ったらしい。
「あら、いけないわ」
芹はそう言いながらその女子に近づいていった。
「目を擦るのは目に良くないわ。この目薬で洗い流しなさいな。本当は目薬の共有はしない方がよいのだけど、擦るよりましよ」
「……あ、あああ、ありがとう、ご、ございます」
芹のそんな親切な申し出に、その女子は妙にどもった礼を返すと、眼鏡を外しておずおずと目薬を受け取った。
その眼鏡の奥から出てきた素顔は……。
「おー、まるで女版甲子郎だな」
そう孝臣が感想を口にした通り、アイドル顔負けの美少女であった。
その後無事講堂に着いて、入学式が始まったわけなのだが。
入学前は幼馴染ズの顔面偏差値の高さに騒ぎになって仕方あるまい、と考えていたがそれがちょっと改まりつつある。
今目の前の壇上では生徒会長の挨拶が行われている。
新設校の為新入生しかいないわけだが、なぜすでに生徒会長が決まっているかというと、一言で言うと、創設者の娘であるからということらしい。
入学と同時に生徒会長になることが決まっていたとのことだった。
が、この生徒会長がまじ美人。
本当に今まで見たことのないくらいの美人だった。
「わたくしは、生徒会長を務めさせて頂きます御加賀見千草と申します」
と挨拶の際名乗ったその声も超美声。
美人は声までいいのかと、妙な納得があった。
完璧な美少女像を描きなさい、っつうお題出たらこの人描けばいいじゃんって位の美少女っぷり。
朝のイケメンといい、アイドル顔負け美少女といい、巷にはこんなにも美形が揃ってるもんなのか。
ふとまわりを見回してみても、何だか容姿が整った奴らが多くいるような……。
それともこの学校は、俺は除外として美男美女ばかり集めて入学させたのか。
俺はうーんと腕を組みながら思った。
でもまあ何にせよ、世間はまじ広いわ、うん。
千草と隆文が近所なのに面識なかった理由の一つは、家と家の間で学区がちょうど分かれ目になっていて、小中学校が別だった為、であります。




