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31 「みんなまとめて学校でも面倒みてやるよ」

やっと時系列過去編終了です。

 それまで俺は、高校は一番自宅から近い松高に進学するつもりだった。


 男子校で学費の安い公立。


 しかも近くて家のことすんのに支障にならない。


 文句なしだ。


 芹やアリッサは「高校も一緒に通えない」とむくれ、孝臣も「ランク的にちょっと親の許可が下りん」と眉をしかめた。


 俺が、「お前ら学校なんか同じでなくても俺の家に入り浸りじゃねーか」と言ったら「それはそれ、これはこれ」と三人して猛反発してきた。


 わけがわからん。


 甲子郎は「……僕どこでも。隆文と同じならいい……」と言ってたが。


 なので、「甲子郎、お前はもう少し主体性持てよ」と言ったら、「……これが僕の主体性」とドヤ顔された。


 意味わからん。


 しかし、幼馴染ズが何を言おうと俺の進路に変更はなかった。


 はずだった。


 あれは中学二年の時だったか。


 近所でいっせいに土地買収があって、大規模工事が始まり、あっという間に学校ができた。


 普通こんな工期はねーだろ、っていうくらいあっという間のことだった。


 俺の家のすぐ前の家まで買収対象だった為、出来上がったその学校は俺の家の道路を挟んだすぐ前に出来上がった。


 その学校は新設の私立高で、その外観から学費いくらかかるんだろコレ、という下世話な考えが頭に過ったがまあ俺には関係ねーか、とすぐに思い直した。


 が、関係なくはなかったのだ、これが。


 それは中学三年になった春。


 ある日、芹が「ねえみんな、これ見てよ」と言いながら、少し興奮したようにプリントアウトされた紙を持ってきた。


 みんなで輪になってそれを見ると、そこにあったのは、目の前の新設された高校、御加賀見学園の募集要項。


「……なんだこれ? 芹がここに通いたいって話か?」


「そうだけど、それだけじゃないわ、隆文。隆文が松高を選んだのって、近くて学費が安いからよね?」


「そうだけど」


「じゃあ近さではここに敵う所はないわよね」


「だけど学費が」


「だから、ここ。ここ見て」


 そう言って、芹が指をさしたところを見ると、小さく区域内免除、という項目があった。


「何だ、これ。……ええと、区域内の生徒は入学金免除。学費も半額……?」


「半額なら公立と変わんねーんじゃね?」


 孝臣も身を乗り出してきた。

 

「それだけじゃないのよ。この学校、設備がとても充実されてるだけあって、施設設備費って項目あるの。あまりない形ではあるけど、最低限が決まっていて上限はなし。つまりは寄付金よね。しかも最低限は、年間五十万」


「ご……!?」


「じゃあ隆文、どっちにしても論外じゃないデスカー? 学費の金額だけでも私立NGだったのデスから~」


 アリッサの言葉に、芹は指を振ってみせた。


「それがポイントなのよ。この区域内免除って、この施設設備費も免除なの」


「……そんな好条件じゃ、募集者いっぱい……」


「それは問題なさそじゃね? 何だこのクソ狭い区域内は。この枠での対象者ってほぼいなくね?」


 孝臣は添付された区域内を示す図を見ながら言った。


「マジで? ……マジか、何だこれ。ほぼ学校の外周に接してる家のみじゃねーか」


 この範囲で高校進学予定のある子供って……、いるかいないかのレベルじゃねーの。


「一応その区域内って、学校に隣接する迷惑料って意味もあるらしいのだけど。……何か裏がありそうな理由よね」


「でも! ここならみんなで通えるよな! 学費諸々は芹もアリッサも甲子郎もクリアできるし」


「でも、合格するデスかネ~。ワタシ、成績にちょっと不安あるデスヨ」


「……僕、面接が……」


 不安げにするアリッサと甲子郎に、芹が「安心なさい」と微笑んだ。


「実はこれ、ある顧客筋からの情報なのだけど、これを創設したのは、あの、御加賀見家。だから高校名が御加賀見学園、なのよ。そしてその御加賀見家の御令嬢が開校一年目にそこに進学することは暗黙の了解になっているわ。むしろ、その御加賀見家の御令嬢の為に創設された、という噂があるくらい。御加賀見家の御令嬢と知己になるのは、会社を経営する者のとってはまたとないチャンス。その年齢の子供がいる親であれば、それを目的としてここに進学させるでしょうからね。だから将来の布石にしようと良家の子女が集まることは必須。それを念頭にしたこの学費設定なのよ」


「確かに、あの御加賀見家とつながりができるのはおいしいよな。……だけど怒らせたらそこでジ・エンドな気もするから実際に近づくのは度胸いりそうだけど」


 何だその家、怖え。


「そうなのよね。でも今はその話ではなくて、ほらここ見て。ここは免除が効く特別枠が用意されてるのよ。さっきの区域内は別として、勉強やスポーツ、特技なりでの特待生枠。芸能枠もあるらしいのよ。それに伴うデメリットもあるにはあるけれど、学校の知名度を上げる有効な手段よね。……まあ、それはそれとして、モデルとして活躍しているアリッサや、アプリやプログラミングなんかで利益を得てる甲子郎ならこの枠でいけると思うわ」


「オオ―、なるほどなのデス」


「……みんな、一緒?」


 感心したように頷くアリッサと、表情こそ変わらないが声に喜色が混じる甲子郎。


「みんな揃うのは初めてだな!」


「……どうかしら、隆文?」


 まだ合格したわけでもないのにそう言って喜ぶ孝臣と、窺うような表情でこちらを見てくる芹。


 この状況で、否とは言えないだろう。


「……仕方ねーな。みんなまとめて学校でも面倒みてやるよ」


「「「「やったー」」」」

 


 



 その一年後、俺たちは晴れて御加賀見学園に合格し、進学することになった。


次回からは高校入学後、です。

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