23 「綺麗なもんだなー、これ」
いい加減高校生の時間軸に進めたい……。
休憩コーナーに行くと、アリッサと芹が髪をいじって遊んでいた。
色々な髪飾りがあるので物珍しいのだろう。
うん、女の子らしくて良いことだ。
よくよく耳を欹ててみると「これの原価率ってどうなのかしら」なんて芹が言ってる気がするが、俺は聞こえない、何も聞こえないぞ。
また、孝臣を見てみると、ごくごくとジュースをラッパ飲みしている。
知らんぞまたお漏らししても。
そして本日初対面の甲子郎を見てみると……。
何かノートパソコンいじってる。
よくゲームとか持ってるお子さんは目にするが、この年でパソコンいじってるのは珍しいな。
実のところ、俺もよくわからない。
たまに倫太郎が使ってるのは目にするけどな。
文乃はスマホオンリーだし。
ひょいっと除くと、その画面は何かカラフルな色彩だった。
パラパラと色んな上から丸いものが降ってきて、下のとくっつくとパッと弾けて消える。
何だろ、これ。
「落ちゲーだな!」
そんな俺の心の疑問に答えるように、ひょいと顔を出した孝臣がそう言った。
「おちげー?」
「ん? 隆文知らないのか?」
孝臣がぱっと嬉しそうに、そう尋ねてきた。
知らないもんは知らん、ということで頷いた。
すると、孝臣はふんぞり返って説明してきた。
「落ちゲーってのはな、落ちるんだ。上から落ちて、下のとくっつけて、消して遊ぶゲームなんだぞ! 色んなのあるけど、クソゲーも多いんだ。でもハマると面白いんだ! ふふん、隆文はこんな簡単なこともわからないんだな!」
うん。
とりあえずお前が何言ってるのかさっぱりわからない。
しかし何かむかついたからとりあえず殴っておくかな。
そう思って拳の準備をしたところ、それまで黙っていた甲子郎がぽそりと口を開いた。
「……落ちゲーっていうのは、パズルゲームの一ジャンル。上からブロックを落として、同じ色を揃えて消していくのが一般的ルール。消せないで上まで積みあがってしまうとゲームオーバー……」
こいつ、喋れたのか。
今まで無言で通してたから喋れないのかと思った。
しかし、これで落ちゲーの意味は何となくわかった。
俺は孝臣を殴るのは後回しにして、再びパソコン画面を覗き込む。
「……これ、何て名前のゲーム?」
「……名前、ない。僕が作ったのだから」
……ゲームって自分で作れるもんなの?
そう疑問に感じたが、甲子郎があまりにあっさりそう言うもんだから、そんなものかと相槌を打って再度じっと見る。
様々な色がくっついては弾けて消えていく。
まるで、花火か花が散るような……。
「綺麗なもんだなー、これ」
そう感想を漏らすと、甲子郎はそれまでの死んだような目を驚いたように見開いた。
そして、ゲーム画面から目を離すとじっと俺を見上げた。
お、おおう……?
な、何かね?
「……僕は、清瀬甲子郎……」
うん、知ってるし。
最初に紹介されたし。
「名前……」
え? 俺?
最初に言ったはずだが。
しかし思いの他でっかい目でじーっと見られると、何か圧が……。
「お、俺は隆文。二維隆文」
「隆文…………」
確認するように甲子郎はそう呟くと、ふにゃっと微笑んだ。
一転それまでの感情がない顔つきが嘘のように、その表情はその元々の容姿も相まって……。
て、天使だ。
天使がここにおる。
俺は、この時まだ知らなかった。
この小柄な天使(比喩)が後々のっぽの大男に化けることを……。
後少しで幼児編終了です。




