20 「やらせて頂きます」
お待たせ致しました。
秋も深まってきた頃、いつものように孝臣、芹とともにアリッサの住まいである教会の敷地で遊んでいた時に、アリッサの父であるバーグマン牧師が声をかけてきた。
「ポスター?」
問い返した俺に、バーグマン牧師はゆったりとした動作で頷いた。
しかしこの人も本っ当、無駄に美形だ。
まるでスクリーンの中の外国の俳優さんみたいだもんな。
俺の周囲の人達は顔面偏差値高すぎる。
「地元商店街の方がね、君達を見かけて今年のクリスマスに向けた商店街のポスターにぜひと声をかけて下さったんだ。もちろんご両親には私の方からも話をさせて頂くが、君達の意思が何より尊重されるべきだからね。どうかな?」
商店街のポスター。
去年はでっかいモミの木の絵がドーンと描かれて、そこに写真に撮られた商店街の商品がぶら下がってる構図、というものだったよな。
木に生魚や生肉はねーよ、と思ったのをよく覚えている。
「んー、どーっすか……」
「俺は別にやってもいーぞ」
孝臣は快諾する。
うん、きっとこいつは何も考えてない。
「私は、隆文がやるなら……」
ん? 芹が何か言ったが声小さすぎて聞き取れなかったな。
「ワタシはモチのロンこと参加するデスヨ~!」
アリッサはにこにこといつも通りのおかしなテンションで参加の意思表明をした。
うん。
こいつらと参加、面倒事が起きる予感しかない。
よし、断ろう。
「すみません、俺は今回は……」
「ああ、そうそう。商店街の方がね、謝礼として商店街で利用可能な商品券を五万円分進呈して下さるそうだよ」
「やらせて頂きます」
いやだって!
五万だよ?
五万!
現金ではないとはいっても、商店街の中で利用するなら現金も同じ。
あんな文乃と結婚してくれた倫太郎のおかげで生活は楽になったけど、倫太郎だって決して高給取りってわけじゃない。
生活の足しにできるし、何より普段お世話になりっぱなしの倫太郎に何かプレゼントもできるチャンスじゃないか。
文乃?
そっちは知らんわ。
逆に迷惑料をもらいたいくらいだ。
それにまあ、結局はたかが商店街の宣伝ポスターだし?
商店街に何枚かポスター貼られるくらいよく考えてみたらたいしたことないもんな。
うん、オーケーオーケー、問題ナッシング。
よし、ちゃっちゃと撮られて五万円(の商品券)ゲットだぜ!
などとそう安易に考えたあの時の俺を、その後地の底より深く後悔する羽目になることをこの時の俺はまだ知らなかったのである。
次回もお願い致します。




