幸せな時間
私は決めていました。
彩斗がここに来た時から。もう、運命を受け入れよう――と。
生きたいと願ったことはきっと間違いではないでしょう。けど、多くの人に対する罪。私の罪・・・・・・。その罪に耐えられなくなったわけではない。耐えられなくて、決めたわけではないわ。
彩斗が訪れたことでわかった。無視できなくなった。知っている誰かが来ることがあるということを。
そのとき、青は私を選ぶ。どんなに辛くても、私を選んでくれる。
それは嬉しいことで、耐えられないことです。
それに私はずるい。
青より強い人だっている。1人じゃなかったら? 青は――死んでしまうことになる。
私は見たくない。青が死にいく姿を見たくない。負の騎士として終わる姿を見たくない。そう・・・・・・青だって私に死んでほしくないことを知っているのにね――。
ごめんね。
次に勇士が訪ねてきたら、私は負の神として・・・・・・対峙する。
それはとても辛いことだけど、苦しいことだけど、私はきっと笑顔でいられると想います。
私は幸せだから。幸せな時間を過ごすことができたから・・・・・・。
青と彩斗は私の幼なじみです。出会ったときの記憶なんてなくて、気がつけばいつもそばにいた。彩斗とは3歳離れているから、私たち2人の面倒を見ている感じも幼い頃はあったかもしれない。
そんな感じだったから私の初恋はたぶん彩斗だ。自分たちよりも大人なとこに惹かれたのだろうと思うけど、正直曖昧。恋に恋しているような、その程度だったと想うから。
1つ確かな記憶は、その頃――10歳にもならない頃――青が自分のことを僕ではなく、俺というようになったこと。(私としては今でも僕って言ってくれないかなーって想うけど、お酒飲んで、たっまーに言うだけで、普通じゃ絶対言わないのが残念。)
けど、虚勢を張るだけじゃなくて、自然に大人びていった青は、もともとの優しさや格好良さからかなりもてた。
そばにいるのが普通だった。青も彩斗も。
青も彩斗もとても女の子に人気があったけれど、胸が痛んだのは青だった・・・・・・。
恋に気づいたのはいつだった?
恋に気づいたのは青が先。告白したのは私から。13歳のときでした。
恋人になれたときは、本当に嬉しかった。ずっとそばにいられると想っていた。そう信じていた。こんな世界でも、どうってことなかった。幸せはあった。
だから、自分が負の神であると知ったとき――いろんなものがすべて砕けた。過去も未来もすべてが・・・・・・。
世界のために死ぬことは、誇りにしていいでしょう。
でも、そんな誇りは欲しくなかった。
すべての人に忘れられ、ないことにされ、負の神として生きることなんてしたくなかった。
なにより、青と一緒にいられないことが辛かった。
青と一緒にいたかった。
ケンカしたって、悲しいことがあったって、一緒にいれば幸せだった。
だから――青に罪を犯させてしまっても、幸せだった。
負の神であっても、幸せでした――。
私が青と過ごした日々に幸せでないときなんてない。もっともっと幸せな日々を過ごしたいと想う。
彼方の教会の庭園を楽園だと想う。紫がかった灰の色した空を普通だと想う。邪力による被害がある世界を、荒れている世界を普通だと想う。だけど、そこにだって幸せがあります。
だめですか? このままの世界ではだめですか?
そう問いかける私がいる。
生きたいと訴える私が・・・・・・。
だけど
「もういいよ、青」
私は笑顔で終止符を打った。
その笑顔に幸せは見えているでしょ?
だって、私は幸せだから――。




