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コウレイ  作者: 瀞む
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koreijutsu

koreijutsu TONO SHOSEI

5/7 ゴールデンウイークが明けた。母さんと一緒に広島の庄原というところへ親戚に会いに行った。庄原は父さんの出身地でもあり、その面影が感じられるものだった。向こうで母さんが、一人でどこかに行った日があった。それ以来、母さんの様子がどこかおかしいように感じる。何かあった時のために、こうして日記をつけることにする。


5/24 このあいだ本を借りた。母さんの様子がおかしそうなので、おはらいについて勉強した。残念ながら有名な神社は近くにないけど、小さい神社でも、おはらい自体はやってくれるみたい。問題は母さんが行ってくれるかどうか。まあ、まだ急ぐことはなさそう。


6/2 少し体調を崩していたが、 あらかた治ったので、また1冊本を借りた。何を思ってこの本を借りたのかは、なぜか覚えていない。でも、母さんの様子を理解するのに役立つように思う。


6/19 この世には、降霊術というものがあるそうだ。霊あの世からをこの世に連れて来る。曰く、上にある天国から、その下のこの世に降ろしてくるんだとか。胡散臭いし、じゃあ地獄に落ちた霊は呼び戻せないのか、なんて思ったが、まあどうでもよい。ともかく、母さんが今行っている「何か」は、もしかすると降霊術なのかもしれない。広島で父さんを感じたのだろうか。なんにせよ、霊的な方面も調査対象とする。


7/6 見る先を少し変えて、地域の歴史に焦点を当ててみる。合併により今でこそ市になっているが、その昔この地域には、祖谷(いや)村という自治体があったそうだ。そうだ、と書いたが俺が住んでいるところの話で、それこそ生まれたころは祖谷村だったらしい。今は市街地の中学に通うが、今やツタに覆われたあの廃校に数年前まで生徒が通っていたのは驚きだ。そこに通うことになっていただろうと考えると恐ろしい。

話がそれてしまった。というのも、大した成果は得られなかったのだ。どうやらこの地域には「コフレヒノギ」という伝統?儀式?が伝わっていたらしい。ただ、それを隠し通したいのか詳細は全く書かれていなかった。残念。


7/15 母さんが手紙のような何かを書き始めた。それは詩のようにも見えるし、遺書のようにも見え、解読はできない。夏休みが始まる前にと思い、解読に役立ちそうな本を借りた。ひとまずここに書き写し、夏休み中に解読するものとする。


 ただ一人孤独です.

 愛など決して持ちえない.

 仲を壊し, 取ることでしか

 それでも結局は繰り返し.


 成すためであれば、如何なる手段も。


8/22 成すことが分かった。調査を続けるが、もう書き写す必要はない。


9/12 抗うためにはこうするしかない。口和(くちわ)町はかつてあった町で、父さんの出身地。たぶん。霊的なものが伝わる。


9/28 交わるという字を書く交霊術。まずい、もう時間がない。


9/30 死者を蘇らせる方法にはいくつかあるらしい。だが、なんで俺が読むんだろうか。俺が特にわけもなく読んでいるだけで、俺が読むためではないのか?


10/3 これは俺が読むためなのだろう。まだ死ねるか。


10/15 抵抗し続けたが、無駄みたいだ。追い打ちである。だがこれは続ける。もうあと何度書けるかも分からないが、きっと誰かに届くはず。


11/1 あした.


11/2 朝少しだけ時間をくれるらしい。このノートを隠そう。いつか誰かが真相を知るために。じゃあ、さよなら。俺はこれから、影になる。

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