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ゴリラのゴリゴリ

作者: 彩 夏香

自分の居場所って安心。

でも知らない所って、、、わからない事って、、、怖いよーーー

ゴリラのゴリゴリは

どこまでも

どこまでも続く

深い緑の海みたいな森で

暮らしています。


緑じゃないのは

ゴリゴリのモフモフの黒い毛と

ゴリゴリが森を飛び回るための

太いツタの茶色だけ。

ゴリゴリはツタを

ヒョイヒョイっと伝わって

緑の海を飛び回ります。


「この緑 ぜんぶオイラのもの。

 ぜんぶ ぜーんぶ

 オイラの緑だ

 ヤッホーー。」


ゴリゴリは

毎日 毎日

元気いっぱい飛び回ります。


今日も元気いっぱいのゴリゴリ

木から木へ飛び移り

ながーいツタを

ブーン ブーンと振ると

ポーンと

おーおきく おーおきく 

おーーおきく 飛んで

緑の海から

あらららら 

飛び出してしまいました。


飛んでった先は 

初めて見る世界。


深い緑の海の森は

どこにいっちゃたの?


薄茶色に染まる 平らな緑が

どこまでも どこまでも

見えない 先の先まで

続いています。


ゴリゴリは 

怖くなりました。

怖くて 怖くて

薄茶色の中に

ただ ただ

立っていました。


すると 薄茶色の中から

トムソンガゼルがピョーンと飛び出して

ゴリゴリをじっーと見つめます。


「きみは誰?

 真っ黒でモフモフ 

 それにゴツゴツ。

 ちっちゃな毛の生えた岩、、、かな?。」


見たこともない シマシマの長くて鋭いツノ

なんだかちょっと怖いけど それよりも


「えっオイラが 真っ黒?」

「ああ 真っ黒だよ。」


びっくりしたゴリゴリ

あわてて 体のあちこちを見ると

モフモフとした黒い毛が

手にも 足にも 

それにお腹にもいっぱい。


「、、、オイラ 黒い。」


毎日 毎日

緑の森を飛び回っていたゴリゴリ。

自分も緑色だと

ずーっと思っていたんです。


「黒てモフモフ

 毛の生えた岩のおチビちゃん

 ゴロゴロ転がるのが得意かい?

 ボクはね 飛び跳ねるのが得意なんだ!」


トムソンガゼルは勢いよく

ターン ターンと飛び跳ねます。

なんて高く飛び上がるのでしょう。

ゴリゴリは驚いたけど


「オイラの方が高く飛べるさ。」


ゴリゴリは ギューっとヒザを曲げて

グーンと地面を思いっきり蹴り上げます。

ところが あれれれれ

毎日あんなに飛び回っていたのに

飛び上がれたのは

トムソンガゼルの半分ほど。


「ハハハ 岩のおチビちゃん

 ボクの半分にも届かないけど

 キミにしては上出来だよ。」

「そんなはずない、、、

 あんなにいっぱい飛んでいたのに。」


トムソンガゼルはゴリゴリの周りを

ターン ターンと飛び跳ねながら

グルグル回ります。

グルグル回るトムソンガゼルを見ていると

ゴリゴリの目もグルグル グルグル

アタマの中までグルグル回って

とうとう ズデーンと 

倒れてしまいました。


「おチビちゃん 眠いのかい?

 早くお家にお帰りよ!」


トムソンガゼルは

ターン ターンと

飛び跳ねながら

薄茶色の中に帰っていきました。


アタマの中が グルグル グルグル

地面は ユラユラ ユラユラ

ゴリゴリは少しも目が開けられません。


だんだんとグルグルもユラユラもなくなって

ゴリゴリはゆっくりと起き上がります。


「チェッ なんだ

 生きているのか。」


その声に驚いてハッと目を見開くと

よだれを垂らした ハイエナたちが

ゆっくり ゆっくり

近づいてきています。


「なんだ なんだ。

 毛の生えた 岩みたいな奴だ。」

「こいつ食えるのか?」


ハイエナたちがボソボソとはなす声に

ゴリゴリは

よだれを垂らす 見たこともないヤツらが

怖くて怖くてこわすぎて

なんだかよくわからないけど


「うおーーーー

 うおーーーー。」


と叫んで

おもいっきり 胸を叩きます。

ドゴドゴ ドゴドゴ

ドゴドゴ ドゴドゴ

ゴリゴリの胸を叩く音が

薄茶色の草原を駆け抜けます。

ハイエナたちは びっくり

シッポを体に ぎゅうと巻きつけ

腰を引いて身をかがめます。


今だ!

ゴリゴリは走ります。


「木があれば 木があれば  

 オイラが登れる 木があれば!」


走って 走って 走って 走って

大きな木を見つけると

一目散に登って

茂った葉っぱの中に

身を沈めました。


「ここまでくれば きっと大丈夫。」


ゴリゴリがホッとしていると。


「おや 木の上に毛の生えた岩がある

 空から降ってきたのかしら?」


葉っぱの間からニューッと

なが〜い 舌が 延びてきて

ゴリゴリの顔を

メロローンとなめました。


「うわー な なんだよー。」

「あら 岩かと思ったら みない顔ね。」


そこには 見たこともない 

ながーい 舌と同じ

ながーい 顔をしたキリンが

ゴリゴリを見つめています。


「あっちに行けー

 オイラを食べようったって

 そうはいかないんだぞー。」


ゴリゴリは木の上で立ち上がり

思いっきり胸を叩きます。

ドゴドゴ ドゴドゴ

怖くて 怖くて 

だから 思いっきり

ドコドコ ドコドコ

でもね 木の上だったから


「お お あーーーーー。」


ゴリゴリは木から落ちてしまいそう

慌てて木のを枝を掴みます。

木からブラーンっと垂れ下がったゴリゴリ

キリンたちがゴリゴリの周りに集まって


「毛の生えた岩がぶらさがってるぞ」

「こいつがハイエナたちを

 連れてきたんじゃないか?」

「こいつのせいで

 この子が狙われたんだ!」


ゴリゴリを追いかけてきたハイエナが

キリンの子どもを襲ったのです。

ゴリゴリが下を見ると

小さなキリンが震えていました。


 「オイラが悪いの、、、

  だから あんなに震えてるの、、、」


親たちが ハイエナを蹴り飛ばしたから

キリンの子どもは なんとか無事でした。


怒ったキリンは

枝にぶらさがっているゴリゴリに向かって

ながーい首を 

ブーーンっとふると

思いっきりゴリゴリのお尻を

バババーンと叩きます。

その勢いの凄いこと 凄いこと


ゴリゴリは木の枝から空に向かって

ビユーーーン と

飛んでいってしまいました。


青い空を

飛んで 飛んで 飛んで 飛んで

いったいどこまで飛ぶのでしょう。


ゴリゴリは大きな木にあたると

ガサガサ ガサガサ

葉っぱや 枝にひっかかりながら

ガサガサ ドドドーン

地面に 落ちてしまいました。


「いててててー。」


葉っぱだらけのゴリゴリ。

もー痛くて 痛くて

すると


「ゴリゴリ どうしたの?」

「ゴリゴリ 大丈夫?」


ゴリゴリを呼ぶ声が聞こえます。


「ゴリゴリが木から落ちるなんて。」

「ゴリゴリ 何があったの?」


ゴリゴリを心配する声が聞こえます。


「オイラのを名前を知ってるの?」


ゴリゴリが うすーっく目を開けると

ツルッとキラっと光るキバが。


「わー わー わーーーー。」


ゴリゴリは怖くて 怖くて

立ち上がると また

ドゴドゴ ドゴドゴ

ドゴドゴ ドゴドゴ

思いっきり胸を叩きます。


「ゴリゴリ どうしちゃったの?」

「ゴリゴリ 大丈夫だよ。」


ゴリゴリの名前を呼ぶ声は

さっきよりも小さく聞こえます。


「ゴリゴリ ここだよ。」

「ゴリゴリ 下見て 下だよ!」


ハア ハア ハア

ゴリゴリは怖いけど 怖いけど

そーっと下を見てみると

なんだか ちっちゃな茶色いものが

ゴリゴリの名前を呼んでいるのです。


「なんでオイラの名前をよぶの?」


そこにいたのは 小さなハキリアリ。


「みんなゴリゴリを知ってるよ」

「いつもボクたちの上を飛び回ってるもん!」

「えっ 上を?」


見上げるとそこには

ゴリゴリのよーっく知っている

どこまでも どこまでも続く

深い緑の海の森がありました。


「ゴリゴリが飛び回らないからさ。」

「そうさ みんな心配してたんだよ。」

「みんな?」

「そう ボクたちみーんな。」

「ほら!」


見るとそこには 葉っぱの行列。

ずっと ずっと

そのさきが見えないくらいまで

きれいにならんで

ユラユラ ゴソゴソ

ゴリゴリにむかってくるのです。


「うわあ!葉っぱがあるいてる

 オイラにむかってあるいてくるー。」


こんどは 歩く葉っぱが

怖くて 怖くて

ゴリゴリは またまたドゴドゴしようと

胸に手をやります。


「大丈夫 大丈夫!」

「仲間が葉っぱを運んでいるだけさ。」


ゴリゴリは 胸に手をあてたまま

葉っぱの行列をじーっと見ると

歩く葉っぱの下には

小さなハキリアリたちが見えました。


「ね 怖くないでしょ。」

「だから そこから降りておいでよ。」


ふと 足もとを見ると

ゴリゴリは 小さな石の上に

右足の親指だけで乗っていました。


ゴリゴリはちょっぴり恥ずかしくて

そっと 石から降りました。


「オイラはさ怖くて 怖くて。

 だからさ、、、。」

 

目に涙が浮かんでくるゴリゴリ。

小さなハキリアリは

ゴリゴリを見上げながら、


「でも ボクたちだってわかったら?」

「うん 怖くない。

 オイラ 何にも知らなかった。

 わかんないから 怖かった。」


ゴリゴリはさっきまで乗っていた

小さな石を頭にのせて

落ちないようにツルで抑えて

アゴの下でツルを結びます。

ハキリアリは不思議そうに


「ゴリゴリ いったい何をしてるの?」


と尋ねると、


「今日のことを忘れないようにさ。」


ゴリゴリは 涙をふいて

ハキリアリたちにお礼をいうと

緑の海に帰っていきました。


いまでもね

どこまでも

どこまでも

深い緑が続く

まるで緑の海のような森にいくと


背中を銀色に光らせた

大きなゴリラが

たくさんの家族に囲まれて

幸せいっぱいに

暮らしているそうです。

もちろん

頭に小さな石をのせてね。


知らない事って怖いですよね。それは大人になっても。子供の頃怖かったオバケが、今もちょっぴり怖かったり、、、。相手の事を理解したらなんでも上手くいくわけではないけれど、分かってみると「な〜んだ」って事も意外とあるもんですよね。『ゴリラのゴリゴリ』を読んでくださりありがとうございました。 彩夏香

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