婚約破棄された私は転生して辺境の地でスローライフを満喫します
「アリシア、できれば今日を持って君との婚約を破棄したい! 了承してくれないか!」
屋敷のある一室で婚約破棄をしたいとロレンス伯爵からお願いをされました。
言われた私は当初困惑した表情を浮かべておりました。その後に悲しみが押し寄せてきて涙がボロボロとこぼれ落ちていたのでした。
私はなぜロレンス伯爵が婚約破棄をしたいのか涙を拭きながら理由を問いました。
「なぜ‥‥‥わたくしとの婚約を破棄されたいのでしょうか!?」
「辛い思いをさせてすまないとは思う。しかしわたくしには好きな人ができてしまったのだ。その人はわたくしの幼馴染の方だ。その人とはすでにお付き合いをさせてもらっている。」
「そんな‥‥‥婚約しているわたくしというものがいながら、別の方とお付き合いされていたなんて‥‥‥ひどい‥‥‥ひどすぎます‥‥‥」
「君の気持は痛いほどわかる。しかし、わたくしはその人のことを好きなり愛し合っている。すまないとは思うが婚約破棄に了承してくれ」
「愛し合っている人がいるなどと平気で言われるあなたがわたくしの気持ちの何を分かるというのですか!? わたくしはあなたの妻になると思っておりました。そのため、しきたりや礼儀作法について必死に勉強しました。なのに‥‥‥なのに‥‥‥あなたは‥‥‥」
「申し訳ないと思っている。しかし、好きな人がいるわたくしと結婚してもつらいだけだ。頼む!!」
私の気持ちなどかえりみないロレンス伯爵に対して怒りではらわたが煮えくりかえる思いがしておりました。
そして、何度言っても婚約破棄をしてくれと繰り返すだけのロレンス伯爵にはあきれた気持ちも出てきました。
こんな男私からふってやるわ。
「分かりましたわ。あなたのような浮気を行う失礼な方との婚約なんてこちらからお断りですわ」
私はあきれた表情でロレンス伯爵に対してこのように申しました。
「そ‥‥‥そうかということは婚約の破棄に了承してくれたということでいいんだな!?」
「ええ。そうです。」
「そ‥‥‥そうか。婚約破棄を了承してくれるか」
ロレンス伯爵は私が目の前にいるというのに喜んでおりました。別れられて逆に良かったと思うようになってきておりました。
「では、もうわたくしに用事はございませんか。ないのであれば自分の部屋に帰りたいと思います。」
「かえってくれて構わない! 君には本当に申し訳なかったと思っている」
「そんな気休めの言葉はいりませんわ」
こうして、私は自室に帰りました。帰った後は自室のベットで泣いておりました。悲しさと悔しさで涙が次々と出てきていたのです。
そして、涙を流している時、さらに不安も押し寄せておりました。
婚約破棄をされた女性は、この時代ではあまり良い評価が与えられず、つらい日々を暮らす方たちが多いと聞きました。
最悪の場合独身として自分の実家に引きこもりながら暮らす方もいるとか‥‥‥私はそのことも考えると不安と恐怖で頭がいっぱいになりました。
なんで私がこんな思いをしないといけないの! もとはと言えば、勝手に不倫をしたロレンス伯爵が悪いというのに‥‥‥。
私がつらい思いをしている時、ロレンス伯爵は愛し合っているひとと結婚できると喜んでいる姿を想像して許せなくなってきました。
「なんとかあのひどくて失礼な方に仕返しができないものか!!」
私は涙が止まり、憎しみでいっぱいになっておりました。そして、仕返しできる方法をずっと考えていたのです。
2時間ほど考えて、私は仕返しする方法を思いつきました。その方法とは‥‥‥
思いついた私はすぐさまその近くにあったナイフを取り出しました。このナイフは、私の父がもしなにかしでかしたらと渡された自決用のナイフです。
私はこのナイフを服の中にしまい、自室を出ました。そして、恨みの相手であるロレンス伯爵の元に向かおうとしました。
今、この時間帯ならロレンス伯爵は自室にこもっていると判断して、ロレンス伯爵の部屋に向かいました。
向かっている最中は穏やかではありませんでした。心臓がバクバクなっておりました。しかし、誰にも気づかれないように慎重に歩いて行きました。
ロレンス伯爵の部屋に着くまで、誰にも会うことはありませんでした。この時は神様が味方してくれたのだろうと思いました。
そして、部屋のドアをゆっくりと開けました。音を立てないように慎重に! そして、ゆっくりと中に入りました。
入った後は忍び足で進んでいきました。そして、ロレンス伯爵のベットの近くまで来たのです。私は服に入れていたナイフを取り出して、刺そうとしました。
しかし、させる直前になんとロレンス伯爵が私蹴って突き飛ばしたのです。
「が‥‥‥がは‥‥‥あ‥‥‥」
お腹の方に激痛が来ていました。
「まさか、私を殺しに来るとは!! それほど婚約破棄されたことに怒っているのか! まあ当然といえばそうなのだが」
私は答えず体勢を整えました。
「やめるのだ。こんなことをしてもあなたのためにはならない。」
その一言にさらに怒りが沸き起こった私はナイフの刃先を相手に向けて突進しました。
しかし、ロレンス伯爵はそのナイフを手で払いのけました。そして私はベットに当たりました。
「あっ!」
ロレンス伯爵はその直後驚き声をあげました。その理由は、私の様子を見たからでした。
なんと‥‥‥私はベットに当たった反動でナイフが首元に刺さってしまいました。その結果多くの血が垂れ流れておりました。
「アリシア大丈夫か!?」
声をかけられましたが、私は反応することはできませんでした。私はだんだんと意識が遠のいていっていたのです。そのため、何度呼びかけられても反応できませんでした。
やがて、意識がなくなりました。こう思いました私は死んだんだ‥‥‥と。
視界がしばらく真っ暗闇に覆われました。私はこの暗闇の中、このまま天国に行けるといいなと思っていました。しかし、どこからか声が聞こえてきました。
なんだこの声は‥‥‥。
私はじょじょに目を開けました。開けた先には、”ベロベロバー”といいながら下を出してふざけている男の方がいました。
「もう困惑した表情をしているじゃない。やっぱりベロベロバーよりも私にだっこされる方がいいのよ!!」
発言されていたのは女性の方でした。
私はもう立派な大人ですのに、ベロベロバーやだっこなど何をふざけたことを言っておるんですのと思っておりました。
しかし、その方が私を抱っこしようと手に取ろうとした時、あることに気づきました。その女性の方の指がとても大きく見えたのです。一体これは‥‥‥。
そうすると、女性は私をだっこしました。私をだっこできるなんて巨人なのと思いました。しかし私の手を見て考えを改めました!!
なんと私の手は異様に小さくなっていたのです。まるで赤ん坊みたい‥‥‥じゃなくて本当に赤ん坊なの!!
私はようやく自分が赤ん坊になっていることに気が付きました。
何がどうなっているの!?
混乱していた時も二人は話していたので、その会話を聞き取りました。
その二人の話によれば私はどうやら生まれてばかりの赤ん坊のようです。ということは、私は生まれ変わったってこと!?
生まれ変わったのなら今度はいい人生を送って見せるわ。とりあえず私の性別を確認しないと。
確認すると私はどうやら前の自分と同じく女性でした。そして、私が生まれた家も二人の会話で判明しました。
私が生まれ変わった家はグランデ家というらしく、この地の領主のようでした。
また、私には名がありました。私の名はグランデ・ソフィアという名のようです。
そしてこの二人、恐らく生まれ変わった私の両親は私を大切に育ててくれました。やがて5年が経ち私は小さい子供になっておりました。
なぜ赤ん坊になっていたのか!? 不可思議に思いながらも私は順調に育ちました。
この世界のことは5年の月日の間にある程度知ることができました。どうやらこの世界は私がいた世界とは違い、魔法や魔物がいらっしゃるようです。
そして、私は魔法に興味が引かれ、自室にあった魔術書なるものを拝見しました。
書かれている内容は最初の1、2年は分かりませんでしたが、父や母が読み聞かせしてくれたり文字を教えてくれたりしてこの世界の文字を読めるようになっておりました。
そのため、5歳となった私はこの魔術書を読めるようになっていたのです。書かれている内容は、魔術の基礎の知識でした。
なんでも、外に出て風を感じコントロールしようと念じると書かれてありました。魔力があればコントロールできると書いてありました。
私は、台を置き窓から手を出しました。窓の外からは牧草が広がっておりました。
私は景色を眺めながら強く念じました。しばらく時間が経ちました。しかし、何も起きませんでした。
さらに強く念じました。すると両手の間に何やらスーとするものを感じました。手を見ると、両手の間に小さい風の塊ができておりました。
私は魔法を扱うのに成功したのです。そう、私には魔力が備わっていたのでした。
私は喜びながら台からおりました。この研究を続ければきっと私はもっと巨大な魔法を使えるようになるぞ!! とはしゃいでおりました。
そして、喜びのあまり私は自室を出て、階段を降り、外に出ました。
心地よい風を浴びながら目の前の雄大な牧草を見ました。
牧草は永遠と広がっていて、風でなびかれる牧草はまるで黄金のカーテンのように見えました。
この景色を見ながら私はある決意をしました。
今度こそ幸せな人生をつかんでのんびりした生活を満喫するぞと!
読んでくださり、ありがとうございます!
いまいちと思われましたら★、面白いと思われましたら★★★★★など、評価していただけると嬉しいです!
ブクマもよろしくお願いいたします!