7話
皆様、御機嫌よう。
私は今、騎士様ルート、一話のイベントの舞台である、中庭に来ております。時刻は正午過ぎ、お昼休みの最中。イベント開始時刻まで四半時くらいです。
という事で、騎士様との親睦イベントを待ち伏せしている間に、少しばかり推しCPについて説明しようと思います。
……誰の為に説明しているんだ?などという突っ込みはしないで欲しい。オタクの中には、推しを布教する為、常に脳内で準備運動をしている奴もいるのだ。
実際に語ろうとすると気持ちばかり先走って上手く伝えられず、頽れる事になるのだけど。
聞いてくれるならば誰でもいい。嘘ですやっぱりお腐れ、そしてできれば自分と同じような左右固定厨がいいです互いの為にも棲み分け大事。でもとにかく語りたい。
話が脱線した。
えー、私が推しております騎士×公爵子息のカップリングへお話を戻しましょう。
騎士様はアンソニー・ヘイヤ 様、公爵子息様はセオフィラス・ハッタ様、というお名前です。CP名としてはアンセオ、又はセオアン、私は公爵子息様受けが推しなのでアンセオ派です。公式には従いますけれど。
このお二人、今はぎくしゃくしておりますが実は幼なじみなのです。
というか、互いに初恋だったのだと、ヒロインに語るシーンがあった。相方が死んだ後、泣きながら。
それというのも、セオフィラス様、幼い頃はご令嬢として育てられていたのだ。
理由についてはセオフィラス様ルートで知る事ができるが、端的に言えば跡目争いを避ける為、である。
セオフィラス様は側室の子で、正妻からの嫌がらせが酷かった。
令嬢の振りをしていてもその扱いなのだから、もし男だと知られていたら嫡子を脅かすとして暗殺されていたかもしれない。
そして、アンソニー様がセオフィラス様と初めて会ったのが、その頃だった。
お二人の父親同士が気心の知れた仲だったので、セオフィラス様の息抜きのためにと正妻の不在時に、周囲に箝口令を敷いた上で、度々、連れ出していたのだという。
そこで、アンソニー様はうっかりセオフィラス様に一目惚れした。
そうして、アンソニー様はアンソニー様で、父親について公爵邸を訪ねるようになった。
そこで、正妻がセオフィラス様をいびっている瞬間を目撃したアンソニー様。
嫌がらせを受けても気丈に振る舞う姿を見て、彼女を守りたいと思ったらしい。騎士を目指すと決めたのも、それが理由なんだとか。
セオフィラス様も、熱心に口説いてくるアンソニー様に、うっかりときめいてしまったという。
しかし、彼女は、彼だった。
セオフィラス様がデビュタントする前に正妻が亡くなった事、公爵様が正式に跡継ぎを決定した事で性別を偽る必要が無くなり、また、全責任を正妻に被せる事で、セオフィラス様は社会への大きな軋轢も無く男に戻されたである。
しかし世間的には大きな問題が起こらずとも、こと二人に関しては事情が異なる。恋愛感情が絡んでいただけに、関係に亀裂が入ってしまった。
ちなみにアンソニー様は隠し事をされていたという悔しさと頼りない自分への憤りから、セオフィラス様はずっと騙していた後ろめたさから気不味くなってしまったらしいが。
二人とも、相手への感情が恋愛そのままなのである。
故に、もうお前らさっさと本音ぶち撒けて、その流れでそのまま色々ぶち撒け(隠語)ちまえよ!
と、腐れ外道の私は思うのだ。
前世では生存ifやら転生パロを書きなぐっていたところであるが、ここに死別する前のお二人が揃っている。
今こそ、腐死鳥の出番だ。自分で書いた話も、読み漁った二次創作の展開も頭に入っている。ある程度ならば不測の事態にも対応し、お二人をめくるめく薔薇色未来へ導いていけるだろう。
――などと誰に向けてかもわからぬ解説を構想している間に。
「……そこで何をしている」
騎士様が登場したのである。