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4話

「わたくし、学園に入学する前から既に前世の記憶がありましたの」

少なくとも私が王太子殿下に手を出すことが無いと安心されたローズ様は、身の上話をしてくださった。

「前世を思い出した時には、絶望しました。何故、ヒロインに転生できなかったのかと……」

わたくしは、アレクシス様推しでしたから。と、ローズ様は悲しげに仰る。

「……けれど、折角同じ世界に転生したのだから、チャンスは生かさねばと思いました。無関係な人間ならともかく、あの方と最も近い場所に転生できたのですから」

そうして、ローズ様は前向きに考えることにしたという。

その涙ぐましい努力、もうローズ様がこの物語のヒロインで決まりなのではと思ってしまう程である。

「断罪されぬよう、あの方に好いて頂けるよう、わたくしなりに頑張ったつもりでした」

けれど、学園に入学した途端、王太子殿下はローズ様に冷たくなり、逆に私ことヒロインに構うようになったのだという。

「もう、何を言っても聞いて頂けなくて……あれだけ頑張っても未来は変えられなかった、とうとうゲームの強制力が働いてしまったのかと思いました」

「っていうか多分コレ確実に間違いなく魅了スキルのせいですよねすみません」

強制力なんてとんでもございません。全て私めの不手際でございます。

必殺・土下座祭り。不味いことをしてしまったと思ったら先ず謝る。これが、世の中生き抜く鉄則である。


私が記憶を取り戻したのが昨日なので不可抗力なんです。許してください。


「魅了……?」

そう言って首を傾げるローズ様が綺麗かわいい。というかどうやら、ローズ様は私の異能(?)に気が付いていないようだ。

と、そこで私はある事に気付く。

「あの、私と王太子殿下が話している時、ピンクのキラキラを見た事ありませんでした?」

「……?いいえ?」

どうやらあの光は他人様には見えないようである。


(これは朗報だ……!)

他人からは見えない。自分には見える。つまり、周囲には秘密で、対象にも気付かれず、魅了の魔法を他人に掛ける事が可能だという事だ。

上手く使いこなせるよう練習しなければ。こうやって無関係な方に使ってしまう事は避けたいし、何より騎士様と公爵様に使ってしまいたい。

周囲にこの怪し気な光は見えないと判明したが、公共の場ではいけない。フォーリンラブな瞬間のお顔はお相手と傍観者かつ仕掛け人の私以外に見せてはいけないだろう。なるべく人目を避けて、そう、二人きりにさせられる密室が最高だ。二人にマホウをかけて、部屋に閉じ込め、その後は鍵穴から様子見しよう。

「……何かよからぬ事を考えておりませんこと?」

「いえ考えてません己のスキルについて考えていただけです!」

ローズ様って、心読スキルお持ちでしたっけ!?……なんて一瞬思いました。が、もちろんそんな事無く。

「(暗黒微笑)、とでも付きそうな顔をしてらっしゃいましたけど」

どうやら、全て顔に出ていたようである。

と、いうか暗黒微笑って。

「懐かしい言葉ですねぇ……」

厨二感つよつよな言葉ですけれどもしやローズ様そちらの方ですか、と温かい目で見つめれば少し頬を染めて顔を背けてしまった。悪役令嬢ローズちゃん、かわいい。


ま、自分も厨二病だったんですけどね!私とローズ様はそういう意味ではお仲間のようである。



「で、何を考えていらっしゃったんですの?」

流石はローズ様。誤魔化されてはくれなかった。

なので事実を、ある程度ぼかしつつ伝える事にした。嘘をつくのはすぐ顔に出るせいで苦手だし、何より隙あらば無害をアピールしなければ協力者は得られない。

私が他の攻略者(主に王太子)に邪魔されること無く腐ライフを満喫できるかは、あの男の婚約者たる彼女にかかっているのだ。

「いや、先日ある事に気が付きましてね?私に攻略者達が魅了されている今のねじ曲がった状況を本来あるべき姿に戻せるのではないかと思いましてね?」


嘘は言っていない。そこにあるのは正義感ではなく完全に私欲というだけで。ついでにあるべき姿というのも完全に独断と偏見で判断したものだというだけで。


「なのでこの力は悪用しませんご安心ください!」

「……腐った思考のために使用するのも悪用になると思うのですけれど」

なぜ分かった、と振り返れば「もう少し本心を隠せるようにならなければね」と指摘された。

結局私は、かわいく麗しいローズ様から尊敬の眼差しではなく、呆れ顔と盛大な溜息を頂いてしまったのだった。


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