表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、菜摘屋へ。  作者: 湯気ゆっけ
59/77

59.勘違い殺人 8

閲覧・評価ありがとうございます。誤字脱字など見つけた方は、生温かい目で見ていただけますと恐縮です。

この話はフィクションです。実在の法律や手続と異なる部分が生じる場合がございます。

情報は小出しになっているので、ぜひ推理してみて下さい。

にんまり笑った菊池に驚き、祐輔は目を丸くして驚きを表現していた。一方で刑事課の同僚達はというと、先ほどまでの厳しい視線をやめ憐れみの目を向けてくる。


「可哀想に…菊池に巻き込まれたんだな」

「今回は係長も便乗されたのか」


わらわら集まっては「可哀想」と聞かされて、祐輔は自分が此処へ来たのは間違いだったかと冷や汗掻いて後悔する。キョロキョロ辺りを見渡し心臓をバクバク鳴らしていれば、何が起こるのかと不安な表情が作られた。


「安心しろ、お前にも殺人事件の解決を手伝ってもらうだけだから」

「君のこと巻き込んで、ついでにあの子が出てくればラッキー程度の考えだから安心して」


一体何処に安心出来る要素があるというのだろうか。それに、こっそり菊池から伝えられた言動の真意に言葉も出ない。だからと言って人を巻き込まないで欲しいものだ。返事をするより前に、刑事達は巻き込まれたなら一蓮托生と事件概要を説明し始める。本当ならば他の課に吐き出さない内容も、この部屋の中でだけと語り始めるから全員性質が悪い。最早逃げ場なぞなかった。


「はぁ…それで"空井桜花"が鍵なんですか」


被害者の話や追っている3人の勤め先を説明し終えれば、興味が湧いたのか質問が出るのが祐輔だ。彼は被害者が動画配信者であったことを聞くと、独自の感想を呟く。


「この人達も若いんですから、SNSやってたりしないんですかね?」

「あ…ああ〜!?確かにそうだ!」


いの一番反応を見せた菊池。彼は日本でも流行りのSNSであるコミュニケーションサイトのFacefootや呟きサイトであるSIXに3人の名前を順に入れて調べ始める。サイトは異なれど、名前を漢字やローマ字であれやこれや調べてみれば、全員発信をしているのが掴めた。


「出ましたねぇ、じゃんじゃんと。まずコレが足立光樹のSIXアカウントです。ローマ字でADACHI MITUKIの名を名乗ってますね。投稿された写真に彼の顔が載っているので、まず間違いないかと」

「どんなことを投稿しているんだ?」

「直近のは…事件当日は店長の誕生日だったようで、恐らく開店前の店内でお祝いをしている様子がアップされていますね。服装も黒いパーカーに白いズボンと、通りの防犯カメラや居酒屋のカメラで撮られたものと相違ありません。投稿を見ていくに、バイトや彼女関係の話題が多そうです。……あ、2ヶ月前にネックレス渡したのに振られてますが」

「防犯カメラ映像?」

「そっちはまだ見せてなかったな。後で3人の映像も見せてやる」


つい知らないことに反応を見せた祐輔を、岡は深くまで巻き込むつもりらしい。ざっくりと"事件後の返り血の有無が鍵になっていると考える"と言えば、


「でも雨の日でしたよね?返り血なんてそんなに付着しますか?」

「日にち的には雨だが、背後からの一刺しに加えて、それから余程恨んでいたのか滅多刺しのように何度か刺し傷を与えていた。服でも傘でも足でも、一滴とて血が跳ねなかったとは考えにくい」

「分かりました。その辺りを中心に見てみようと思います」


と祐輔も着目すべき点をその辺りに絞った。会話の最中も、菊池の話は進んでいく。


「それでこれが瀬尾明里です。漢字のフルネームで投稿されており、写真もFacefootだから自撮りなどがメインですね。最近の投稿だと……事件の2日前に友達と遊んだ内容です。ピースの代わりにオッケーの形を作っている写真が多いですね」

「オッケーというより丸じゃないか」

「そうですか?…まあ、雰囲気的にほっぺたの膨らみを自慢したい感じですかね。裏ピースなどの可愛いポーズ?なんだと思います」

「これ、可愛いポーズなんですかね?」

「何だよ、斎藤くんは女子高生と会話する機会が多いんだし、こういうの知らないの?」

「裏ピースは知ってますけど…そもそも、七条さんは流行りものに乗るタイプじゃないですから」


同性の友人との投稿が多い瀬尾明里は、自分の可愛さアピールのためかやや盛り気味な加工写真を投稿していることが多い。それから頬のぷっくり感を出すため顔の左前で作った丸の形の手で、頬の膨らみを強調していた。


「最後はこちら。Facefootでヨコテアキラと片仮名のアカウントを用いているのが横手章です。普段は何のアルコール飲料を摂取したかの投稿ですが、過去1枚だけ友人と思しき人物と飲んでいる写真を投稿しています」

「本当だ、ほぼお酒の投稿ですね」

「プロフィール欄にも"アル中おにいさん"と書いているな。最近の投稿も同じく缶ビールの写真か」


最後の横手アキラだが、彼は自分自身でなく酒の話題を提供するのが好きらしい。写真はほぼアルコールラベルを見せているもので、本人が写っているのも1枚だけ。あまり手掛かりになるとは思えない中、


「矢張り首藤由美を路地裏に導いたのは彼ですかね」


と横手が議論の渦中に放り込まれる。どうして彼が1番に疑われるのか祐輔が尋ねれば、菊池はゆーみchannelの動画をそのまま再生してやった。


「ああ、なるほど。おひねりしているのが"アキラ"と呼ばれる人物なんですね」

「そうなんだよ。しかし横手を含む全員や犯行現場に証拠がなかったせいで、これといった確証が持てない」


おひねりの話題を出せば、1人の刑事が現状を嘆いた。けれども立ち止まってはいられない。菊池は3人の勤め先防犯カメラや事件現場先の防犯カメラ映像を準備しながら、昼に岡と得た情報を共有し始める。


「でもあの3人の中に、降幡高校の人間や文芸部がいれば進展はあるかもしれません」

「俺達は明日、高校に向いアルバムや顧問に話を聞いてみる。お前達も情報がないか調べてみてくれ」

「了解です!」


気前の良い返答が聞けたところで、祐輔は刑事課の連携の良さに内心拍手を送りながら、菊池の再生する防犯カメラの映像に注視するのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ