離脱
シズリの咆哮を聞きながら、倒れた竜に向かってさらに拳を放つ。
「『鬼人体術・崩拳』!」
崩拳によって打ち出された空気が直撃し、竜の身体がさらに吹っ飛ばされる。
これで暫くは安全だろう。
地上に降りれるようになったのでシズリが着地する。
そして、殿下とカグラさんを降ろした。
「シズリとヨルアは屍を倒せ!情報だと傷を与えても再生する!跡形もなく焼き尽くすんだ!」
「分かった!」
「はい!」
カグラさんの指示を受けてヨルアを乗せたシズリが翼を広げ、羽ばたくとそのまま砦の奥の方へと向かっていった。
降り立った殿下は僕の背後に居る三人に近寄る。
「命あって何よりだ、ククルガン。それにオルグ兄妹」
「そっちも元気そうだな、レイン。ありがとよ、助かったぜ」
「礼は俺じゃなく彼にな。もしも飛び出さなかったら間に合わなかった」
殿下はそう言って僕の肩を掴み、前に押し出す。
するとククルガンと呼ばれた男性が僕に顔を向けた。
「おう、黒い兄ちゃんもありがとうよ。俺はククルガン、こっちのはセリルとモニカだ」
「セリルだ..助けてくれてありがとう..」
「モニカです。ありがとうございました..!」
「どういたしまして。僕はクロガネです。よろしくね」
殿下が話していたククルガンとオルグ兄妹に始めて自己紹介をする。
ククルガンはずんぐりとした丸っこい体格の男性で、セリルとモニカは金とオレンジの髪をした人だった。
簡単に自己紹介しているとカグラさんが鋭い声を上げる。
「のんびりするな!起き上がるぞ!」
その声に振り返ると、竜がゆっくりと起き上がってきている。
何本にも分かれた尻尾はその動きに合わせて、僕達を逃がさないように周囲に散らばった。
「クロガネ、先にククルガン達を安全な場所へ」
「分かりました」
殿下の言葉を受けて、僕は三人を担ぎ戦場を離れようとする。
だが、それを分かっていたのか、竜の尻尾は僕が走り出した瞬間、叩き潰そうと四方八方から襲い掛かった。
「お前の相手はこっちだ!『赤爪・乱』!」
殿下が大斧から赤い魔力の刃を飛ばして迫ってきていた尻尾を切り裂く。
僕らに向かってきていた尻尾が切り落とされ道が開く。
「行け!」
「はい!」
そうして改めて走りだそうとするとセリルが叫んだ。
「その竜も再生する..!まともに相手にするな..魔人本体を探せ..!」
そう言われたので尻尾を確認すると、切られた部分から新しい肉が盛り上がってきて元通りになっていた。
(厄介だな..!)
「分かった!とにかく離れろ!」
取り敢えず、今はどうすることも出来ないので三人を連れて全力で竜の射程から逃れる。
後ろから尻尾が迫ったが、殿下とカグラさんが全て撃ち落としてくれたので背後を気にせず離脱出来た。
砦までたどり着くと、そこかしこで蒼い炎が燃えていた。
その炎の中には人のような物体があり、シズリが屍を燃やし尽くした後だと分かった。
「クロガネ、悪いんだが俺の工房に行ってくれ。レインに渡して欲しいもんがあるんだ」
「渡して欲しいもの?」
僕が聞き返すとククルガンさんが答える。
「新しい武器を頼まれててな。無事だと良いんだが..」
そうして僕は蒼い炎を突っ切ってククルガンさんの工房を目指した。




