森を抜けて
助けた二人を担いで樹海を歩く。
見つけたのがあまり深い場所じゃなくて良かった。これくらいの距離なら歩いてもその日中には出られる。
さらに運のいいことに再び襲われることもなかった。
樹海から出ると少し離れた岩場の陰に二人を降ろす。
その後、少し離れて辺りを警戒して回っていると日が暮れ始めた。
流石に今日中にバーレンまで戻ることは難しい。
ここで野営することになるだろう。
(それにしても、暗くなるのが早くなったな)
そろそろ季節が変わろうとしている。地球と同じようにこの世界にも四季があるようでこれから寒くなってくるそうだ。
ここら辺は雪が疎らにしか降らないが異世界に来て初めての冬だ。ちょっと楽しみに思ってる。
出来れば無事に過ごせたらいいな。
「クロガネ、そろそろ食事に..どうかしましたか?」
考えながら夕日を眺めていたら呼びに来てくれたヨルアに声を掛けられる。
「えっとね、日が落ちるのが早くなったなって思って」
僕がそう言うと彼女も隣に来て一緒に空を見上げる。
「本当ですね。これからは夜も冷えますから暖かい服が何着かあった方が良いですね。バーレンに戻ったら買いに行きませんか?」
..もしかしてこれってデートのお誘いなのか?
そう思ってヨルアを見ると少し顔が赤いような気がした。
それが夕日のせいなのかは分からなかったけど僕の答えは決まった。
とっくに悩むまでもなく決まっていたけど。
「うん、一緒に買いに行こうね」
僕の言葉を聞いたヨルアが嬉しそうに少し照れたように微笑む。
僕も釣られて少し恥ずかしいような気持ちになる。
そうして、二人で落ちていく夕陽を眺める。
自然と手を繋いで。時折二人で顔を見合わせて笑いながら。
「そろそろ暗くなるね。みんな待ってるだろうし戻ろうか?」
「はい」
そのまま手を繋いだまま振り返って戻ろうとして、
岩陰からこちらを伺いながらニヤニヤしているレリアナと目があった。
めっちゃ驚いたがあっちも同じだったようで速攻で身を隠して岩陰から叫ぶ。
「いいから!いいから!私のことは気にせず続けて!ねっ!」
「いいから出てきてよ..」
僕がそう言うと姿を現す。
不貞腐れたようにいかにも不満げな顔で。
「もぉー!何で気づくの!クロガネ!もうちょっとイチャつきなさいよ!」
「何を言ってるんだよ..それで、何かあったの?」
「リーダーに二人を呼んでこいって言われたのよ。でも二人の邪魔はできないじゃない?ほら私ってそういう所はちゃんとしてるから」
「どこが!?とても見せられないくらいニヤニヤしてたよ!」
少なくともあんなニヤニヤした顔はなかなか見れないぞ。
正直、気持ち悪かった。
ぜーったい楽しんでたよ、この人。
「寒いのは嫌いだけど今年は二人のおかげで熱くなりそう!」
あれ?寒いだのなんだのは最初に話したことだよな。
つまりレリアナは、
「最初から聞いてたのかよ..?」
それならさっさと声を掛ければいいのに..
レリアナがからかうせいでヨルアも僕の背中に隠れて出てこない。
チラッと後ろの彼女を見ると俯いているが耳が赤い。
うん、きっと夕日のせいだ。もう大分暗いけどきっとそうなんだ。
「ヨルア、ごめんね。もうからかわないから出て来て欲しいなー?」
流石にやり過ぎたと思ったのかレリアナが謝る。
アレ?僕には?
「レリアナさんのそういう所は..好きじゃないです..」
「うん!うん!もうしないから..痛ッ!!」
後ろからキースが来てレリアナの頭を持っていた杖で小突いた。
見えていたけど黙っておいた。
お返しというやつだ。
「呼びにいっていつまでかかってるんだ。グレイル達が待っている」
怒ったような様子でうずくまったレリアナの首根っこを捕まえると引っ張っていく。
「二人もだ。レリアナの様子から大体の予想はつく。仲が良いのはいいがまだ街の外なんだ。そういうのは帰ってからにしろ」
「はい、ごめんなさい..」
「すみませんでした..」
もっともなことを言われてしまった。
言われてみれば最近、浮かれているような気がする。ヨルアと居る時は特に。
転生直後の方がもっと慎重だった。
駄目だな。気を引き締め直さないと。
頭の中で決意を固めてグレイルの所に戻ると焚火が焚かれていた。
近くには野営の準備がされている。
助けた二人も毛布にくるまって火の傍で休んでいる。女の子の方は眠っているようだ。
「みんな連れてきたぞ」
「ああ、ご苦労だったな。みんな座ってくれ」
そういわれたので焚火の傍に座る。
みんなが座ったのを確認してからグレイルが助けた老人に言う。
「それじゃさっきのことを詳しく頼む」
「ええ、先ずは助けて頂きありがとうございました。わしはヘンネスと申します。そして..」
ヘンネスと名乗った老人は隣にいる女の子を見て、言葉を続けた。
「こちらに居られる方はモルド連合国、第七王女のシズリ・ワリシャス・モルド王女殿下になります。モルド連合国は、少なくともモルド王家は彼女を除いて滅びました。【隷属】の魔人の手によって..」




