魔人の最後
王都の外、
僕と魔人はまだ戦っていた。
「はぁ..はぁ..」
「ちっ!しぶといな」
魔人が黒い槍で僕を刺そうとするが、かわして距離をとる。
ここまでの戦いであの槍について分かったことは二つ。
一つは形状を蛇のように曲げたり伸ばしたりできるということ。
おかげで懐に入ることはおろか近寄ることさえ難しい。
二つ目はあの槍の攻撃範囲は大したことない点だ。
貫通力は高いが、穂先にさえ注意すれば回避できる。
(でもかわすだけじゃ駄目だ。何処かで仕掛けないと..)
既に僕の腹には風穴が開いている。
出血が止まらない。
頭が痛い。足も重い。
このままだと遠からず避け損なって身体を貫かれる。
(クソ、目の前が揺れる..ちゃんと立て!負けるわけにはいかないんだ!!)
僕が負けたらみんな死ぬ。
何でもいい。必死で勝機を探せ。
その時、王都からとんでもない音がした。
まるで雷でも落ちたかのような音だ。
僕も魔人も突然の出来事に音がした方向を見る。
すると王都を包んでいた青い光が徐々に小さくなっていくのが見えた。
(もしかして、ヨルアなのか?やったんだね!)
「..バカな!どうやって見つけた!?どうして破壊できるだけの魔法を人ごときが使える!?まさか、あの女..」
魔人が激しく狼狽える。
やっとだ。
探していた勝機がきた。
懐に持っていた投石用の石を掴み、全力で投げつける。
空気を引き裂き魔人の顔面に石が迫るも、当たる寸前で槍に防御されて石が砕ける。
「死にぞこないが!!鬱陶しい!」
魔人が喚くがそれでいい。
槍の穂先は僕から外れた。
走って魔人との距離を詰める。
狙うのは槍を持っている魔人の腕。
武器を奪って、殴り合いに持ち込んで見せる。
だが思ったより魔人との距離を詰められない。足がもつれる。身体の方がついていかない。
僕がもたついている間に魔人も槍を突き出してきた。
(避けらない!!せっかく詰めた距離が無駄になる。なら..くれてやるよ!この腕!)
左手を前に出して槍を受け止める。
掌を貫き、二の腕を貫き、左肩まで貫かれるがそれでも槍の軌道をそらして前へ、前へと走る。
激痛に耐え、魔人への最後の一歩を踏み出す。
魔人は僕が避けると思っていたのか腕を犠牲にしてきた僕に呆然としている。
隙だらけだ。
無事な右手の拳を握りしめ、槍を持っている魔人の腕を殴った。
「あ˝あ˝っー!!」
魔人の腕があり得ない方向に曲がり、悲鳴が上がる。
当然、槍など持っていられるはずもなく僕の腕を貫いたまま手放した。
(まだだ!まだ、武器を奪っただけだ!倒れるな..)
必死で血まみれの身体を動かそうとするが思うようにいかない。
異世界に来て、こんなに身体が重く感じたことはない。
流した血が多すぎる。
魔人もいつまでも痛みに呻いてはいなかった。
ギョロっと僕を睨むと槍を取り返そうと手を伸ばす。
しかし、その手が僕に届くことはなかった。
王都から赤い閃光が飛んできたかと思うと魔人と僕の間に割り込む。
「遅くなってすまん」
「いいえ。最高のタイミングですよ..」
大斧を肩に担ぎ、赤い長髪を纏めたレインがそこに立っていた。
「レイン!?」
「覚悟しろ借りは きっちり返すからな」
魔人は身の危険を感じ、レインから逃げようとするが僕が投げた石が魔人の膝を打ち砕く。
また、悲痛な声を上げて魔人が倒れ込む。
「お前が売った喧嘩だぞ。ちゃんと殿下に付き合えよ」
「お、お前ぇ..」
僕に恨み言を言う暇はない。
レインが斧を振りかぶり魔人に急接近する。
倒れた魔人にはもう防ぐこともかわすことも出来ない。
「終わりだ!!『赤牙 剛閃』」
赤い一閃が大地を割り、魔人を真っ二つに切り裂く。
自分が負けたことが信じられないと言わんばかりに口をパクパクさせるが声にはならなかった。
魔人はドサリと倒れ、もう動くことはなかった。




