逆鱗化
ドラゴンが僕を睨み咆哮を挙げる。それと同時に瞳が深紅に染まっていく。
さらに呼応するかのように赤い鱗も輝きを増していく。
(あれが逆鱗化か)
そう思い隊長から聞いた話しを思い出す。
どうやらドラゴンは感情の高ぶりとともに魔力が増大し、瞳や鱗が輝いてパワーアップするとのこと。
(あの状態は今までとは比べものにならないくらい強化されるんだったな)
どれだけ強化しようと関係ない。
ここで一撃で仕留められれば問題ない。
今、持てる最大の力で殴る。
爆音を上げて地面を蹴りとばす。一瞬にして近づくとドラゴンを殴りつけた。
..はずだった。
(クソ..痛ぇ..)
ドラゴンは僕のパンチを躱すとカウンターで自身のパンチを叩きこんできた。
回避行動もとれずまともに当たり、今度はこっちが平原に吹き飛ばされた。
そしてこの世界で初めて身体に殴られた痛みが走った。
(僕にダメージを与えられる上にあの巨体であっさりと速度について来た)
どうやら僕の認識が甘かったようだ。このドラゴンは強い。
それに僕よりも遥かに戦い慣れている。
覚悟を決めるしかない。
元より一撃で仕留められなければこうするつもりだった。
ドラゴンはカウンターが完璧に決まったことで僕が死んだと思ったようだ。
だが僕が立ち上がると不愉快そうに鼻を鳴らして警戒を強める。
そして自らの爪を一層、深紅に輝かせるとそのまま切りかかってくる。
一撃で平原を叩き割る深紅の爪が何十回と僕一人を殺すために振るわれる。
動き回って躱していくが今のドラゴンは速度に加えて腕のリーチもある。全て躱し切るのは不可能だった。
とうとう躱しきれずに爪の一薙ぎをまともに受けた。
服が破れ、切られた箇所はこの身体のおかげか出血こそしなかったが傷が入り、痛みを与えてくる。
「ぐっうう!」
歯を食いしばって痛みをこらえる。
足を止めるな。
速度は互角。
奴においていかれるな。
痛いだけだ。この身体はまだまだ動く。
だから動け。とにかく奴に合わせろ。
奴をこの場から逃がさないために。
ドラゴンは目の前の敵がなかなか倒れないことにいら立ちを感じていた。
王都のアレほどではないが目の前の敵も十分な強者。
いや単純な耐久力と身体能力はアレすら凌駕しているかもしれない。
余力を残せる相手じゃない。
王都でも戦ってきたのだ。正直、引き上げたい気分だった。
だがわざわざここまで来たのだ。せめてあの都市を破壊していきたい。
それにいかに強者といえどこいつの動きは明らかに落ちてきている。
このまま押し切る。
これで終わりだと言わんばかりに大きく腕を振りかぶり、黒い男を殴る。
すでに限界だったのかまともに受け、地面に叩きつけられる。
まだだ。確実に殺す。
そうして倒れこんだ黒い男に連打を叩きこんだ。
オリンピック終わったのでもう一話いっておきます。




