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終わりと始まり

意識が遠くなる。


思えばこうなってから全力で走ったりすることは出来なかった。

ある日原因不明の病気に罹り、あっという間にベッドから動けなくなった。

家族も医者も手を尽くしてくれたがどうにもならなかった。

まるで生きることを肉体がやめようとしているようだ。


もうすぐ僕は死ぬのだろう。多分、みんな近いうちにそうなるだろうと思っている。

数日前から家族が呼び出されていたし、ベッドの周りが慌ただしかった。

両親がベッドに近づいて、僕の手を握る。両手から伝わる暖かさがわずかな間だけ遠のく意識を繋ぎ止める。


(もう終わりか..)


不思議と恐怖はなかった。死にたいわけではないが少なくともこれでようやく終われるという安心感がある。


(でももし生まれ変わるならもっと元気な身体に..)


最後にそんなことを思うと僕の意識は闇の中へと落ちていった。




「初めまして、少年」


その声によって目が覚めるとそこはまるで宇宙空間のような場所だった。僕の身体は淡く輝き、炎のように揺らめいていた。

混乱しながらもあたりを見回してみると目の前に黒い人影のようなものがいた。それには顔がなく表情は読めなかったが笑ったような気がした。


(ここは..僕は一体?)


「色々と混乱しているかもしれないがはっきりさせておこう」


「君は死んだ」


淡々とそう告げてくる。


(そうか..死んだのか)


「あまり驚いていないようだが」


(助かるとは思っていなかったし、それよりもここは一体?僕はどうなっているんだ?)


「それはこれから説明しよう」


そう言うとまた笑った気がした。


「今の君は魂だけの状態だ。これから君は新しい世界に生まれ変わる。剣と魔法の世界だ。そして君には一つの贈り物が与えられる」


(贈り物?)


「ああ、君にはとても強い肉体が与えられる。地球風に言えばチートだな」


(なぜ僕にそんな力を与える?)


「それは君が望んだからだ。君は自分が最後に何を願ったか覚えているか?」


何を願ったか。確か元気な身体だったか。もしかしてその願いを叶えてくれたのだろうか。

強い肉体っていうのはちょっと違うような気がするが。


「転生先はすでに成長した男性の身体だ。赤ん坊から始まることはないから安心していい。また言語に関しても記憶している。自然に使えるだろう」


「そしてなんといってもその肉体は強靭だ。君の想像をはるかに超える。色々試してみるといい」


「その力で何をどうするかは君の自由だ」


自由

それはあの病院のベッドの上では考えることもできなかったことだ。

今の僕にはその言葉が何よりも魅力的に聞こえた。


「む..まだ話したいがもう君をここに引き留めておけなくなってきた」


身体の輝きが増してくる。視界が徐々に光に包まれ黒い人が見えなくなってくる。


「最後に転生する場所だが、ローグラント王国の国境付近にある大樹海と呼ばれている森だ。滅多に人が来ない所だから身体の使い方を練習するのにちょうどいいだろう」


(待って!あなたは何者なんだ。どうしてこんなことをしてくれる)


「これが私の仕事であり目的だからだよ。感謝など不要。私はやるべきことをやっているだけだ」


どんどん視界が光にあふれていくもう黒い人の姿は見えない。だが最後に彼の声が聞こえた。


「君の新しい人生が少しでも良いものであることを祈っているよ」


そうして僕の意識は死んだ時とは別に光の中に包まれていった。
















そうして彼が新しく旅だったあと残された空間には黒い人が一人残された。

もはやその声は誰にも聞こえない。


「そう、感謝など不要なんだ」







「全ては私のためだからね」
























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