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二話 一分であなたを幸せに

 外出もままならない中で皆さんはどうお過ごしでしょうか? 私は近々、引っ越しをする予定になっているのでその荷造りに追われています(>_<)

 新連載と言うこともあり、一話に引き続き二話も投稿させていただきました!

 今回の話は噂の教祖様登場回そして早くもタイトルの意味に触れる内容となっておりますのでお時間がありましたら一話から読んで頂ければなと思います^_^


 長い銀髪に細い手足、ベールで顔が隠れていてよく見えないが女性なのだろう。教祖様の前に立ち、そんな事を考えながら声をかけると本を読んでいた教祖様が顔を上げた。


「はじめまして、友人にここの話を聞いて参加しに来たのですが……」


「はいはい……ん!?」


 俺が声をかけると突然声を出して、立ち上がった。声を聞くと思っていたよりも透き通っていて、年の近い印象を覚えた、そして何故か動揺しているようにも見えた。


「どうかしましたか?」


「……いえ、驚かせてしまい申し訳ないです」


「大丈夫です……初めて参加する人は説明を受けると聞いたんですが」


「活動までに三十分くらいありますし、説明しましょうか」


 この部屋の隅にある扉から元々倉庫だった部屋に行けるらしく、俺は奥の部屋へ通された。


 六畳ほどの小さな部屋の真ん中に丸テーブルと椅子が二つ向かい合う形で置かれていた。


「じゃあそこに座ってもらえる?」


「はい! 失礼します」


 俺が椅子に腰掛けると教祖様が向かい側に座り、覗き込むように俺を見つめる。


「まずは名前を聞かせてもらえる?」


「神崎友也と言います」


「やっぱり……」


 俺が名前を名乗ると何か呟いたあと、数秒の沈黙が流れ再び教祖様が口を開いた。


「あなたは幸せを感じている?」


「そうですねー 健康なのとかを除くと特に幸せを感じたりはしないですかね……幸せを手にしたいとは思ってるんですが」


「手にしたいですか……そこから間違えていると思いますよ」


 いきなり否定されて驚いた。俺に幸せを手にする資格はないとかそういう話か?


「ふふっ ピンときてない顔ですね」


 教祖様はクスリと笑いながら話を続けた。


「幸せは手にするものではなくて感じるものです。 ありきたりな話になってしまうのですが幸せの形とは人によって違うものです。あなたの両親はご存命ですか?」


「はい……父も母も元気でやっていると思います」


「それは良い事ですね、世の中には幼い頃に両親を亡くした方もいるでしょう。 そんな方から見れば今のあなたは幸せと言えます」


「そうだと思います」


「しかしあなたにとっては当たり前の事で普段は幸せだなんて感じてないと思います」


 たしかに教祖様の言うように俺よりも恵まれてない人はたくさん居る、そんな人からしたら今の俺は幸せなんだと思う。でも少しガッカリした、幸せになりたいと言うけどあなたは既に幸せじゃないかと教祖様は言いたいのだろう……たしかにありきたりな話だ


「今、本当にありきたりな話だなと思いましたね」


「すみません……」


 顔に出ていたのだろうか一瞬で俺の気持ちを悟られた。


「本題はここからですよ、あなたは幸せになりたくて部屋に入ったのですよね?」


「そうですけども……」


「私が今から一分であなたを幸せにしてあげましょう」


 自信満々にそういうと教祖様はポケットからアラーム付きのタイマーを机の上に置いた。一分で幸せにする事ができるならこの人は能力者のようなものだ……そんなファンタジーあるはずがない。


「そんな事が本当にできるんですか?」


「もちろんです! 私の話を聞いててくださいね」


 そう言うとタイマーのアラームを一分にセットしてスタートボタンを押した。


「すぐ思い浮かぶものだけで構わないのであなたが幸せだと思うことを声に出して教えてください……」


「え……えーと……話しましたけど健康な事、そして大学に通えている事と気の合う友達のいる事とさっき言われた家族が元気な事くらいですかね?」


 言われた通りに思いついたものを言った時点で残り二十秒程……この後どうするの? 純粋に疑問が湧いた。


「ありがとうございます、四つ出てきましたね」


「この後はどうしたら……」


「ゆっくり目を閉じて十秒数えた後に目を開けてください」


 残り時間を考えるとこれが最後の作業なのだろうが今の所幸せになれたなんて事はない。とりあえず心の中で十秒数えている間に前でゴソゴソと音がする。目を開けるとベールを外して手櫛てぐしで髪を整える教祖様と目が合う。


「何が見えますか?」


「教祖様の顔以外には何も……」


「はー……教祖様ですか……まぁいいでしょう」


 不思議な事を言い出した教祖様に言われるがまま動いていた事もあり、先程おばあさんに言われた事をすっかりと忘れていた。それにしても本当に教祖様と呼ばれるの嫌なんだな……不機嫌そうな彼女を見てそう思った。


「今、あなたの前には私が居ます、あなたの幸せを願う私が居ます、あなたを幸せにしてあげたいと思う私が居ます、自分の幸せを願ってくれる人が目の前に居るって幸せな事とは思いませんか?」


「あ……なるほど……」


 ここで一分を告げるタイマーが鳴った。タイマーを止めると彼女は続けて話し出した。


「これで終わりです。 あなたは四つの幸せを教えてくれましたが今ので五つになりました、一分前よりも少し幸せになれた事になりませんか?」


 納得してしまった自分が居る。屁理屈だ、綺麗事だと言う人も居るだろうが俺は不覚にも納得してしまった。それに……


「ありがとうございます! 確かにかなり幸せな気持ちです!」


「それなら良かったです……」


 どうやら俺の言葉が嬉しいようで俯く彼女を見て、また少し幸せな気持ちになっている自分が居た。なぜか彼女との時間はとても安らぐものだった。


「ゴホン……つまり幸せとは手に入れるものではなくて感じる事、そして気づく事なのです!」


「なるほど……」


 咳払いをして締めに入ろうとする彼女の話を俺は肯定した。この人には人を惹きつける力がある。それは本気で彼女が人を幸せにしたいと思っているからなのだろう。


「まだ名乗ってませんでしたね、私の名前は小鳥雫こどりしずくといいます」


「雫さん! これからもよろしくお願いします!」


「雫さんですか……まぁ許してあげましょう」


 またもや不満そうな顔をしながら呟く彼女の言葉はもちろん、気持ちすらも俺は知らずにいた。


「申し訳ないのですが今日でここでの活動は終わりにすることにしてます」


「なぜですか? 宗教って辞めるものでもないですよね?」


 俺にとって宗教とは何かを崇めてその教えを他人に伝えるものといった感じだ。やめるやめないの話をするのは少しおかしな気がする。


「変な風に噂が広まっているみたいですが、私は教祖でもなければこの活動は宗教ではないんですよ」


「え!? いやいや、さっき幸せにしてくれたのとか幸せの教えとかはなんだったんですか?」


「あー……ガッカリされるかもしれませんが私の趣味です」


 優しく笑う雫さんがいうには誰かを幸せにするのが自分の趣味で、自分の考え方などを周りに聞いてもらっているだけらしい。


「内容は理解しましたけどそれなら尚更なんで辞めるんですか?」


「私、実は今年から大学生で今後はサークルや勉学に力を入れたいんですよ。 自分勝手な理由で申し訳ないんですがそういう事です」


 残念な話ではあるが雫さんにも自分の生活や人生があるのに俺がそれを止めていい理由はない……彼女の話以上に彼女自身に惹かれつつある俺は物凄く寂しい気持ちになった。


 雫さんとの話を終えて元の部屋に戻り、おばあさんと一緒に最後の活動に参加した。各々が自分の幸せとは何かを話している間、雫さんはみなさんの話を聞ける事が幸せですとでも思っているような顔をしていた。


「お嬢ちゃん、今までありがとうね〜」


「私こそ楽しい時間をありがとうございました!」


 今日までに何度か参加している人達が話が終わった後に雫さんの周りで別れの挨拶をしていた。邪魔しても悪いなと思い、遠くから見ているだけの俺の所に雫さんが近づいてきた。


「初参加なのにこんな感じでごめんなさいね」


「いえ、貴重な経験をさせていただきました! 同じくらいの年の人とは思えないくらいの内容でした」


「なら良かったです! ではまた今度……」


 そう言って離れる雫さんの後ろ姿を見ながらふと思った……また今度?

 最後までご覧いただきありがとうございました!

 宗教に対してみなさんがどのようなイメージを持って居られるかは分かりませんがネットで宗教とはと検索をかけてみると宗教の定義は宗教団体の数に比例して、複数存在すると書かれていました。

 つまり、このような活動をしてる所があっても良いと思います(笑)

 今後の投稿ペースは週一を目安に考えていますので一人でも続きを楽しみにしてくださる方がいらっしゃいましたら嬉しいです♪

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