003.鍵を使ってドアを開ける
鍵でドアのロックを外す。「カチャン」。
匂いが変わる。外の匂い。"気持ちいい"。
半袖短パンの寝間着姿にマスク。歩いて5分とかからない距離だし誰の記憶に残るわけでもないので問題ない。季節にあった自分の着心地のよい格好が一番。外出するときに気にかけることは[臭い人]にならないことだけ。
明け方に散歩をする習慣があるので町中に溢れる日中の生活音が煩わしくも感じるが、自分がちゃんと社会に関わっていることを確認できるので嫌じゃない。
住んでいるマンションは大きな区立運動公園に隣接していて、朝はウォーキングをしている年配者とよくすれ違う。ただ最近はみんなマスクをしているせいか少し息苦しそうだ。
信号を渡ってコンビニに入り一直線に冷凍庫に向かいコーヒーのプラスチック容器を手に取りレジに向かう。会計を済ませてブラックコーヒーを煎れて店を出る。
コンビニから戻るときは公園の中を通ってマンションの裏手の出入口から帰るようにしている。
行きと帰りでは必ず道を変える。
そうしないと気持ちが悪いのだ。何となく。昔からそうだった。
マンションに入り2階に上がる。不思議な造りで、マンション全体を上から見るとカタカナのロの形になっていて建物の中央が吹き抜けになっている。マンションの中なのに外の匂いがする不思議な空間。
ポケットに手を入れて鍵を取り出し鍵穴に差し込む。
「カチャリ」。アンロック。
家に入り右手に持った青いコーヒーを一口飲んだ。