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ふたりではなす

「ねぇ、クローバ」

「なに?」

「私が勇者で魔王ってこと知ってるよね?」


 二人きりベッドの上。ヒビキはどっかいった。

 そういえば、アンが起き上がってからゆっくり話してなかった気がする。


「うん、そういえば、ゆうしゃだったね。 忘れてた」

「フォンセを介して言っていたからね……実際に言うのは遅くなっちゃった」

 少し申し訳なさそうにそう言った。


「クローバは、私が何したいか分かる?」

「……よくわからない。 じんまのどれいをなくすってのは、なんとなく?」

 最近アンはずっと忙しい。

 特訓したり、本読んだり、なんか色々見てるらしい。

 なんか色々見てるところには私は行ってないから分からないけど、なんか色々見たらしい、これからも見るらしい。



「うん。 私は、人魔を救いたい。 だから、手っ取り早く奴隷を開放……うん、無くそうとしたんだ。 そうしたらさ、奴隷じゃない人魔もここに来そうじゃない?」

「……? どういうこと?」

「え、えとぉ、なんだろ……なんだろっていうか、うん」

 アンは一度悩んだ後、自分の頭の中で何かわかったのか直ぐに明るい顔になった。

「私やクローバはさ、人間大陸で隠れて生きてたじゃん? それって、今まで私達って存在しちゃいけない人種だったじゃん?」

「うん」

「だから、ここで住んでもいいよ……ここでなら、魔人大陸なら住めるよっていうのをしたかったんだよね」

「へー……」

「わかってるかなー、なんだろ。まぁ、もしかしたら簡単に言えば山で暮らさなくてもいいよってことだね」

「だいじょうぶ、わかる」

「本当? クローバは頭がいいね」


 そう言って頭をなでてくれるアン。

 暖かくて、なんとなくおかぁさんの手を思い出した。

 おもしろいね、ラーケンが撫でてくれたときはおとぉさんを思い出したのに。 男と女だからかな?



「でもさ、それじゃあ、人間大陸の人魔って救われないんだ」



 撫でられていたから、顔は見えなかった。


「たださ、例え、もしも、人間大陸と魔人大陸の人魔の問題を解決しても、まだ問題はあるんだ」

「もんだい?」

「そう、駄目な部分っていうか、このままだと解決しないの」

「それは?」


 自分の種族の事だから聞いたと思う。



「人間大陸に魔人が、魔人大陸に人間がいなきゃ、結局家族の形は守れないんだ」

「……たしかに」


 言われてみればそうだった。

 


「そう、そうなの。 じゃあ魔人大陸に人間族を入れるようにしたら、別にそもそも人間大陸で人魔大丈夫にしなくても、全員こっちに送ればいいじゃんとか思ったんだけど……流石にそんなことできなくて」

「どうして?」

「んー……私の魔王の権威を使えば出来るよ?でも、なんだろ……戦争に関わる話だから難しいんだ」

「せつめいが?」

「することも、説明も」


 諦めたように言うと、アンはようやく手を離した。

 チラッと顔を見ると、笑って見えた。



「一個だけ、解決策はあるんだ」

「それは?」

「教えなーい」


 どうして? 


「どうして?」


 こういう時に教えないアンは初めて見た。



「私には出来ないから、頭が悪いから」

「あたまがわるくても、まおう」

「魔王なら、魔人族や魔人大陸に関わるもの全て、私の好き勝手出来るんだけどさ、無理なんだ」

「なにが?」

「いろいろ」


 いろいろ。


「いろいろなら、しかたないね」

「うん、仕方ない。 仕方ないんだけどさ、ねぇクローバ」

「なに」

「クローバはさ……ううん、クローバに、お願いがあるんだ」


 お願い?


「アン、瞬間移動おぼえるいがい、おねがいあるの?」

「うん……学場に行ってほしいんだ」

「まなびば? なにそれ」

「学場っていうのはね?沢山クローバみたいな子供がいて、勉強してるんだって」

「おべんきょう……まほうおぼえてるよ?」

「お勉強も大事だけどさ……」

 んー、と顎に人差し指を添えて考えるそぶりをするアン。

「私は、クローバにしか出来ないことをしてほしくて」

「瞬間移動?」

「違うそうじゃない、んだ。 えーと、クローバには、友達を作ってほしくて」


 ともだち?


「ともだちってなに?」

「……私も出来たことないからわかんない」

「わぁ」

「でもなんだろ……なんか、色んな人と話して、仲良くなって、楽しんでほしいな」

「……」

「今の人魔って、偏見ばかりだと思うからさ、普通の人なんだなって言うのを子供のうちから刷り込ませるって大事だと思うんだよね」

「すりこませる?」

「うーんそこだけ切り取って欲しくなかったな。 まぁ、普通に話してみてよ。魔人の子とか、大人の人とか、人魔の子とか。 いっぱい勉強して……なんか、うん。 それくらいしか分からないけど」

「んー」

「大丈夫?」

「……」


 それだけなら、私はすぐに大丈夫と答えられたと思う。

 ただ、どうしてか。

 アンの顔が、何かに重なる。

 何かに似てた。


「……うん。 大丈夫」


 それが分からなくて、とりあえず頷いた。



 その後、私はあの顔がおかぁさんに似ていると気付いたのは、だいぶ後の事だった。

お久しぶりです、ツッキーです。

本当は学業に関わるものが終わったら毎日投稿してやろうと思っていたのですが、二か月も置いておくと書き方を忘れて一話書くだけでもだいぶ時間掛ってしまいました。

これらも木曜十五時週一投稿を安定して書けるよう頑張ります。

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