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黒のヒビキVS魔王のアン

「久しぶりですね。ヒビキさん」

「…………」


 なんとなく、そんなことをありふれたことを言ってみた。

 ヒビキさんは私が目の前に現れて驚いているのか、返事は返ってこなかった。

 その仮面の下、どんな顔してるんだろう。


「……」

「……」


 しばらく沈黙。

 お互い気まずくて、何を話せばいいか分からなかった。


「……しゃの」

「ん?」

「勇者の、力は使わなくなりました、か?」


 とても小さくて、震えた声。

 泣くのを我慢した、子供のような声だった。


「……捨ててないですよ。ここだと人が多いから、何も言えないけど」

「そうっ、ですか」

 一瞬声が上ずり、恥ずかしそうに声を戻したけど、それがなんとなく私は面白くて無意識に笑った。



「フォンセ、ここからヒビキと二人きりになる方法ない?」

 あれから一ヶ月も経った。

 私のしたいこと、クローバのこと、ヒビキさんのこと。

 色々話したいことはある。

 フォンセは「えー」と言いながら私の身体から出てきた。


「んー……実際に戦って、その実力を買って、傍に置く……的な展開。どう?」

「えっ?」

「よし、そうしよっか」

「えっ!?」


 顔を見なくても分かる、驚いたってこと。


「それもお互い本気でね。じゃないと負けちゃう。アンちゃん、準備は?」

「私は流れに任せるのは慣れてるから」

「わ、私は! まだ心の準備がまだまだまだなんですけど!!」


「フォンセ」「ん。」

「あーもう! 私の人生いつもこんな感じだ!!」




 アンが魔王の力を解放したのと、ヒビキさんの悲痛な叫び声を合図に、戦闘が始まった。


 黒狩人を瞬時に編み、すぐさま四匹の黒蛇を飛ばす。

 今なんとなく思ったけど、これは魔王の力で出してるから黒いけど、これを勇者の力で出したら白蛇になるのかな。


 そんなどうでもいいこと、思う暇は無かった。


 あの日見せた戦闘はロングソードで相手の攻撃を捌きながら魔法で退路を塞いだり防御したりしていた。

 だから、今回も手に持つものは剣だと思っていた。



「蛇って、突き刺してしまえば怖くないんですよね」


 三つの刃が付いた槍……確か、トライデントというタイプの槍だったか。

 両手に一本ずつ現れたそれは、一本二匹で黒蛇の腹を突き刺し戦闘不能にさせた。

 

「私の黒蛇、これまでも捌き続けられてるから弱いかもしれない」

「そんなことは、ない……と思う」

「まぁ、良い飛び道具だよ、ね!」


 地面に突き刺すのなら、必ず刃は下に向く。

 だから、やることは四匹とかいうちゃっちい数じゃなくて、大量の数を飛ばす。

 多分、百匹くらい。

 刃が下に向いてる間に他の子が噛みついてしまえばいい。脳筋だが理にかなった考え方だ。



「単純な矢とか飛び道具なら潜れるけど、生き物ってなると避けるの不可能なのムカつく」


 大量の黒蛇を前にして、ヒビキは肩を落とす。

 例え魔力で出来た意思の無い生物だとしても、こういうタイプの飛び道具はホーミング機能が付いているのは目に見えてる。

 全力で逃げることが出来るとしても状況は良くならないし、前に強行突破するにしても、ヒビキには力任せに殲滅するパワーはない。

 だから。


翔岩之矛(しょうがんのほこ)連之型(れんのかた)


 地面を抉り、すぐさま魔法を付与。

 小さな石や土の塊が空中で止まったかと思えば、真っ直ぐ黒蛇たちに向かって飛んで行った。


 一匹ずつ、落とせばいい。



「魔甲弾」


 どうせこれで決着は付かないと思ったアンは、持ち前の脚力で門を遥かに超える所まで跳び、上から魔力の塊で出来た弾を飛ばした。

 名前はその場で考えた。

 魔甲弾は黒蛇やヒビキが放った魔法と比べ、非常に遅い弾だ。地面に着くまでには夕方まで掛かるんじゃないかと言ったレベルの遅さ。

 それを、一応発動しておいた。


 あの大量の蛇を一瞬で片付け、さらには視線をこちらに移しているヒビキに思わず驚きの笑みを浮かべる。

 アンは弓を生み出し、空を蹴り、横に移動しながら連射。それも、三発はヒビキ目掛けて、二十四発は逃げ場を無くすように矢を放つ。

 それを、一瞬で。

 ヒビキが行動を移すまでに使った矢の本数は約百発にまで登った。


「そうそう、これなら楽」


 そう言いながら、ヒビキは持ち前の弓矢を取り出しながら、一つの魔法を紡いだ。

「エア」

 風魔法の初級も初級、それをアンが放った矢の進行方向に置いた(・・・)

 いくらなんでも、魔王の矢。その程度の魔法で威力は弱まらない。

 だが、ブレるのだ。

 どれだけ強かろうが、早かろうが、数ミリ程度矢はブレた。


 ヒビキは一歩だけ横にずれると。

「……すご」

 驚くことに、アンが放った矢のほとんどは空を切り、当たるというより掠る程度。その程度のかすり傷なんて、その装備と仮面からしたら小さな傷跡で、ダメージなんて無かった。


 ヒビキの放った矢を軽く避けた後、アンはしばらく黒蛇と矢を飛ばし続けた。

 理由は単純、まだウォーミングアップが出来ていないのと、まだ百パーセントの力が使えないからだ。

 ただなんとなく、相手の出方を伺いがら、魔王の実戦経験を少しずつ高めたかった。

 それが功を制しているのか、なんとなく黒蛇達を出す感覚と効率が少し分かり、全体的に速度が上がった。


 ヒビキも、弄ばれてると感じながら黒蛇と矢を対応していく。

 ぶっちゃけ、先程の風魔法なんてただの小細工だ。アンの矢は次第に密度が高くなり防御魔法を余儀なくされるし、黒蛇達も襲ってくる数とスピードが上がっているのも見て分かった。

 成長なのか、それとも遊んでるのか。

 そう考えるのは後にして、ヒビキはこの状況を打破するべく魔法を詠唱する。


「轟け―――エクスプロージョン

   舞え―――桜吹雪

     唸れ―――土石竜

       燃えろ―――ファイアイリュージョン」



 瞬き一回の出来事。

 爆風吹き荒れるエクスプロージョンは、大量の黒蛇を一掃し。

 矢を物としない桜吹雪は、矢全てを荒す。

 地面から生えた土石竜は、浮いてるアンまで道を作り。

 ファイアイリュージョンは炎を飛ばす!


「魔甲弾・破」

「知ってる!多重結界!!」


 置いておいた魔甲弾から、紫色の強力なレーザーがヒビキを襲うが、それを読めてたヒビキはいとも簡単に防ぐ。

 これで、攻撃のターンがヒビキに移る。




「■■■■」




 ヒビキが転ぶようにその場に倒れこむ。

 全身が……というより、両手首、両足首が鉛のように重い。

 いや……鉛で済めば、ヒビキは余裕で動けてた。

 ヒビキは何事だと思い、原因であり違和感である、手首を恐る恐る見ると。


 蛇だ。

 白蛇のブレスレット。


「チェックメイト」


 これが、魔王。

 たった一言で、これ(・・)

 やっぱ……遊ばれてたか。




「だから、最初からこれ使えば、楽だった」

「でも憧れのヒビキさんとの戦闘だったし、真剣勝負したかったから」

「……やっぱり」

「ん?」

「やっぱり、魔王なんですね」


 心の底で信じきれてなかった。

 この地で見て、実際に戦って、やっと受け入れられた。



「うん。魔王になったよ。でも、その話はおいおいするね」

「はい」

「だから今は―――」


「―――この首輪を付けて、何も言わないで」

「え?」


「「我は魔王アン、我はフォンセ。紡げ繋げ。黒き証をここに刻め」」


 緊迫した状態も無くなりヒビキも力を緩め、この四つん這い状態も受け入れつつ話を進めていると、突然アンが意味不明なことを言い出した。

 息をつく暇も抗議する暇もない。

 アンが歌うように詠唱をすると、ヒビキの首輪には可愛らしい首輪が嵌められた。


 そして、アンの顔が変わる。


「よくぞ魔王の猛攻に耐えた! 褒美として、この街を襲撃したことを不問と、私の傍に置いてやろう!」


 あの頃の、右も左も分からなかった白髪の勇者じゃない。

 魔王の顔、指導者の顔だった。

もうちょっとせんとうをうまくかけるようになりたいです

あたまのなかのすりーでぃーくうかんとじゆうにいじれるたいまーをうまくものがたりにおとしこめたいです



頑張ります。レビューや☆やブックマークくださるとうれしいです。

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