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遠く離れたこの地まで

 勇者のアンが、魔王として開花してから一ヶ月程経ったらしい。

 私はただ馬車を引くだけ。

 魔物を狩る、村に泊まる、たまに野宿する。

 大人数で半年くらいの冒険というなの旅行に出たことはあるけれど、一人で黙々と馬車を引き目的地までずっと気を張っているのは初めてかもしれない。


「――――なんですか、ネネさん」

「『あら、どうして気付いたのかしら』」

「この通話機能が付いた瞬間に、微量の魔力が流れることに気付いたんですよ。何らかの信号が来た瞬間だけ魔力を流して通話状態を可能にする。そうですよね?」

「『せいかーい。よく分かったわね』」

「よく分かったわね、じゃないですよ。なんで新しい発明してそんなへらへらしてるんですか、さっさとこのシステムを流して世の中をもっと豊かにしてくださいよ」


 今までの通話や念話は、通話したい方も、受け取った方も、魔力をずっと流し続けなければならなかった。だから、今までの通話は話せば話すほど膨大な魔力が必要だったし、ギルドなどでは魔力を溜めれる高級アイテムの魔力タンクなどのアイテムが必要だった。

 ただ今話してるこれ(・・)は、私は一切魔力を消費していない。消費したとしても、ほんの少しの魔力。それも、多分小さな魔力タンクのようなもので溜めた魔力だ。(そもそも小さな魔力タンクの時点でおかしい)

 これは、画期的な発明なのだ。


「『世の中が豊かになったら考えるわ。それに、テストを兼ねてそれを渡したのだし。もしも何も無かったらギルドに置いてみるし。けどほら、もしも爆発でもしたら危ないじゃない』」

「それで危ないのは私じゃないですか……もう、いつものことなのでいいです。今回はなんですか?」

「『近況報告が聞きたくて。出来れば、魔物関連のことが嬉しいわね』」

「それは私も話しておきたかったので丁度良かったです。誰かさんが作ったこれには、私から通話を掛ける機能はついてないようで」

「『その代わり、他のオプションも沢山付いてるから許して♡』」

「私の場所が常に分かるのと、私の周囲の音が聴こえる、私の見ている物が見える。あってます?」

「『凄い。九割あってるわ』」

「私にいい所一個も無いんですけど?よくそれで許してとか言えますね」

「『許して♡』」

「……魔物の話、しますね」



 この人に話のペースを持っていかれては、いつまでも話は進まない。


「最近、本来群れを成さない魔物が群れを成していたり、本来しない動きをする魔物が増えてきています。

 例えば、『れんれん』なんかは本来は群れを成さないのに、十匹程度の群れを作っているのを複数確認しました。

『トラウマクレイジー』や『ドメギ』なんかは、本来しない動きをしてましたね。アンちゃんが戦っていた『ミリオンポイズン』もそれに分類されますね。

 後は……魔物が全体的に活発ですね。『アンチロブロジョワー』とか『ドメギ』とか、数少ないのに一ヶ月で二度も襲われましたよ」


 この一カ月で起きたことを素直に話す。

 少なくとも、私は世界で一番魔物に詳しいらしい。

 この事をギルドでも伝えて対策を練ってほしい。


「『ふーん。どうして?』」

「分かってる癖に。魔王が開花したことによる魔物の活発化、及び……暴走?と言った方がいいですかね。まぁ、魔王が生まれたせいですよ」

「『あれだけ仲良かったのに、『生まれたせい』なんて言ったら、あの子悲しんじゃうわよ』」

「うるさいです、一応事実です」


 そう、例えアンちゃんが何もしていなくても魔物の活性化の原因は魔王開花しかない。

 ただ。


「私は、アンちゃん自身を非難するわけじゃないので」

「『そっ。まぁ別にいいけど』」


 生まれ持った特性なら、仕方ない。

 アンちゃんはそんなこと、望んでやっているとは思えないから。

 思いたくないから。



「『それで、明日には魔人領土っぽいけど、行ってどうするの?』」

「暴れます」



「『は?』」


 ネネさんの怒りが混じったような声が聞こえてきた。

 こんな声色のネネさん初めてだ。


「いやだから、暴れます」

「『……どこで?』」

「まずは聖魔国境線。そこで見張る魔人と人間がいるのは知っているので、この仮面すら隠して暴れます」

「『どうやって?』」

「アンちゃんの置いてった荷物に爆弾矢があったんですよ。それ使って、どさくさに紛れて魔人領土に入ります。まぁ失敗しても『エクスプロージョン』撃つんで、ここはさほど難しくないです」


 真面目に語っているのに、ネネさんがドン引きした声で相槌してくる。


「後は、身を隠しながら魔王城周辺まで行って、暴れます。そうすれば流石にアンちゃんも私の存在に気付いてくれますよ」

「『ガバガバ過ぎないかしらその作戦。しかも後先も考えてないし』」

「ネネさんこういう作戦好きじゃありませんでした?」

「『暴れる作戦は好きだけど……まぁいいわ。貴方の安全を祈るわ』」


 ほぼ投げやりのような声だけど、普段の立場が変わってるだけ。

 これを機に、普段から言ってることを改めて考えて欲しい。



「それじゃあ、私は明日に向けてそろそろ寝たいので、私はこれで失礼します」

「『そう。魔物の件に関しては本当にありがとう。ギルドに正式に提出するわ』」

「そう言ってくだされば。魔王に関しては任せてください」

「『フフッ、任したわ。今度遊びに行くと伝えて頂戴』」

「分かりました」

「『それじゃあ、おやすみ』」




 そんな話から一夜明け。

 聖魔国境線で暴れると言ったが、いざ近付いて観察してみると国境線の目立たぬ場所で金を払えば人間でも通っていたことが判明したため、もしも緊急でお金が無くなった時の為に馬車に置いておいた大金を払い、堂々と侵入した。

 どうやら、魔人族もあのような方法で人間領土に侵入できるようなので、私はすぐさまネネさんに連絡しておいた。


 遠く離れた場所からでも見える魔王城は、今の私ではまだ早いような気もして。

 それでも、私は馬に鞭を打つ。


 私は魔王を討伐しに来たわけじゃない。アンちゃんに会いに行くのだ。



 三時間もしない内に目的地に着き、そのまま適当な場所に馬車を止める。

 さてと。



「暴れるかー」



 イメージするのは、爆発的な魔力で高火力魔法を連発する、大魔法使いネネのように。

 私、魔法を使うのは少し苦手だし。

 久しぶりにフル詠唱しよっか。不発したらかっこ悪いし。



「灼熱の大地が噴火する時、炎の精霊は産声を上げる。

 炎の精霊が産声を上げた時、風の精霊は炎の精霊を抱き上げた。

 名も無き炎の精霊よ。名も無き風の精霊よ。

 その命が爆ぜようと、汝等の輝きは永遠だ!!


  フェアリー・エクスプロージョン」

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