(元)魔王様、拾い者をする
(元)魔王様第二弾。(元)魔王×(元)勇者にしたかった導入
「イグザッド様…"ソレ"は何ですか…」
「何、捨て置かれてたから拾った」
…拝啓、読者の皆々様ご無沙汰しております。
あの魔王職乗っ取り事件から半年程立ち、現在我々は魔王城が聳える魔族領に隣する村に居を構えさせていただいております。
元はどうあれ魔王を務めていた御方ですので人の中に暮らすにはいつ、どこでバレるか分からないので外れの方なのですがね。
さて、突然のお話ではありますが魔王様―イグザッド様がそれはもうえぇ、どう足掻いても"人"を拾ってきやがりました。
私と致しましては迅速に、それはもう鮮やかなまでに「元の場所に捨て置きなさい」と言いたかったのですが寸でのところで飲み込みました。
なんていったてまずその腰にぶら下げている美しい新緑を薄めたような心を安らげる緑に象られた白を基調とした剣。えぇ、えぇ!どう見ても魔王を滅するためにと様々な種族が一丸となって作り出したという魔王、ひいては神すらをも殺すと謳われる"聖剣"そのものではないですか!
加えてかの御方が抱える(人間領のご婦人方曰く姫抱き)その方は、まだイグザッド様が魔王であった頃に魔族領に唯一入ってこれ、私ですら太刀打ちが出来ず、イグザッド様と善戦するも惜しいところで負けていった勇者パーティに属する勇者その人ではないですか!!!!
というかなんでこの方、生きてるのも不思議なほどの傷を、ぶっちゃけましょうボロ雑巾が如くといっても差し控えないほどにそりゃあもうボロボロだし一瞬血だるま化とも思いましたよ。本当によく生きてますねこの方
あまりの自体に絶句する私を尻目にイグザッド様は「暖かい湯とタオルを複数、それとコレに合いそうな服を頼む」と言いながらご自身のお部屋に…ってその血だるまご自身のベッドに置くおつもりですか魔王様!
「うっ、ぐぅぅぅううう」
あまりにもあんまりすぎる自体につい唸り声を上げながら眉の間を解す
シーツもこれは必要でしょうし、人間というのは我々より脆いのであの状態で回復魔法掛けようものなら体力が持たない通り越してそもそも体力もなさそうですしそのまま死にそうですので私の鱗でも擦って水に溶かすべきでしょう。なんといったって私は黒龍。龍族らしく万能薬みたいな塊ですからね。以下にどんな状態の人間であれ死んでさえいなければどうにでもなるのが万能薬って言うものです。
ですがあくまでも本人の生命活動に依存しますので傷などはすぐさま治らないので包帯とかそれに…
ああっ、全くもってあの方はなんてことをしてくださりやがるのですか!!!
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リベート(語り部)
今回の語り部であり(元)魔王秘書
イグザッドについて回ることによりある程度人間への偏見を改善することが出来たがそれでも人間嫌いは治らなかったご様子
イグザッドの自由奔放さに手を焼いており、今回もその事例の一つ
イグザッド(前回語り部)
(元)魔王であるが今は悠々自適にうろついている。一応拠点があるだけマシなのかもしれない
ギルドの期待の新人枠を確保し、今までない以上に人生謳歌中
そんな最中、満身創痍な勇者を拾った
他のパーティメンバーどうしたのだろうか?と首を傾げている
勇者(拾われた)
イグザッドが魔王を務めていた頃に唯一やってきた勇者パーティのリーダー兼勇者
イグザッド曰く「まさに物語の主人公」リベート曰く「人間らしく泥臭くあるが輝かしい存在。後魔王様と善戦するとか人間やめてる」
イグザッドが魔王ではなくなった後やってきたのだが新魔王が人間で狼狽えているうちに仲間たちが次々に脱落(魅了)し、攻撃も出来ずにフルボッコにあったついでに魔王の冠の秘密(笑)を知ってしまいセルフSANチェックして失敗して心がポッキリいっちゃって、このまま野垂れ死ぬべきかって死期を悟っていたら拾われた
リベートが苦労人枠ならコイツは不遇枠