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(元)魔王様、観光に行く

裏側はどろっとしてるのに話に出てくる人はだいだい緩い

「魔王様、大変です!」


 そう言って、魔王城から離れた人間族の町…に隣接する小高い山に建てられた別荘(目的は敵勢力観察と言った類のものだ)にやってきた魔王秘書である、黒龍族の男が扉をけたたましく開けて叫ぶ

 因みに俺こと魔王イグザッドは黒いシャツに黒いズボンと黒尽くしの恰好をして、人間族側で開発されたという小型の"望遠鏡"で街の動向を伺っていた

 決して、決して!覗きとかそういったものではなく、情報収集の一環である。別に人間族の暮らしをしてみたいが為とかそういったものでは全くもってない


「どうした…リベート」

「"魔王の冠"を見知らぬ人間族が被り、魔王を名乗りました!」

「…は?」


 リベートの発言に首を傾げ、近くのテーブルに持っていた望遠鏡を置いて、改めてリベートに向き直る


「リベート、それは誠か?」

「はい、先程の出来事ですのであっております」

「…人間族が城に忍び込んできたということか」

「そうだと思われます」


 自室の寝台の横のテーブルに置いたはずの冠を奪われたということは、城…所謂、魔王城にその人間族は忍び込んだということを意味する

 しかし、簡単に冠は奪われないようにと俺は冠の周りを防衛魔法を何重にも掛けて城を抜けだしたはずなのだ。何故そうやすやすと奪われているのかふに落ちない

 不思議に思い、首を傾げているとリベートが僭越ながらと言いながら手を控えめに挙げたので発言を許可した


「ありがとうございます、魔王様。実はその人間族がどうやって冠を入手したのかと私も疑問に思い、失礼ながら魔王様のお部屋に入りました」

「別に入ったことに罰は与えん。続けろ」

「御意。それでですね魔王様…私は見てしまいました」

「ほう…なにを?」

「"魔王の冠"が置かれていた場所の床がぶち破られていたのです」

「」


 下に防衛魔法は掛けていない。というか床をぶち破って冠を奪い取ったのかその侵入者。余りのぶっ飛んだやり方に絶句しているとリベートがまたもや口を開く


「僭越ながら魔王様。"魔王の冠"を被った人間族に私以外の配下が寝返ったのは何故でしょうか?」

「ああ…お前は龍族であった故に知らなかったんだな。忘れていた」

「はい。私はあくまでも龍族。魔族側の誓約は反映されません」

「そうだったな。では説明してやろう」

「お願いいたします」


 流石にこのままではよくないだろうと思い、リベートに椅子を進める。そうすれば彼は礼を述べながら座った

 いつもは一度は断るというのに今回はすんなりと座ったなと思えば、そういえば大慌てで来ていたなと納得した


「"魔王の冠"は口が上手い…確か数百年前の魔王が作成した古代兵器だ」

「古代兵器…なのですか?」

「ああ。あの冠には被った者を強制的に魔王にするよう誓約が施されている」

「強制的に…ですか」

「そう、強制的にだ。魔族は強制的に、被った者を魔王だと認識させるという制約だ」

「そのような誓約ってアリなんですか…?」

「先程、制作した魔王は口が上手いと言っただろ」

「はい、確かにそうおっしゃいましたね」

「…わざわざ神に対面して上手いこと口車に乗せて作成したらしい」

「えっ」

「だから古代兵器なのだ」

「な、成程…」


 前魔王の横暴な策に対して、リベートは微妙な、反応に困ったような顔をして口元を抑える

 彼の反応は正しいと言っていいだろう。それほどまではに有り得ないことを実現したのだ、前魔王は


「因みに補足としてだが、被った者を魔王と認識すると言っただろ」

「言いましたね」

「ここに但し、という前置きが付く」

「前置き、ですか?」

「そう。"但し、魔王と認識はさせるが命令といった部分への強制力はない"だ」

「…んん?えーと、つまり…」

「魔王とは認識させはするが、その後の政治関係や信頼関係と言った、事細かなことは被った者の実力でやっていかねばならない」

「…ことはそう上手いこと運ばない、ってやつですね」

「その通りだ。その冠を作成した前魔王は被った後、割かしすぐに死んだらしいぞ」

「う、うわぁ…」


 眉を潜めて、苦い顔をするリベートに流石の俺も苦笑する


「しかしながら、先程の説明で奴らが寝返った…いいえ、正確に言えば"誓約対象者の変更"がなされたのは納得がいきました」


 そう言って、納得気に何度も頷くリベートを見やり、俺は手を叩く


「では、我々がやるべき事は分かるなリベート」

「はい、"魔王の冠"の奪還ですね」

「それは直ぐにでも終わらせられる」

「ああ…魔王様なら余裕で侵入して奪い取れますね。では他にやるべき事とはなんでしょうか?」

「なに、魔王出ない今しかできないことだ」

「何を…あっ」


 何かを悟ったらしいリベートが此方を見る。その瞳は微かに揺れ動き困惑しているのが見て取れる


「人間族側への侵入及び、情報収集をしようではないか」

「魔王様、それは本気…ですね知ってました!」

「ふははっ、俺はやると決めた事はやり遂げるぞリベートよ。それで?お前はどうする?」

「~っ。ああもうっ、魔王様のお供をするに決まってるではありませんか!」

「ふっ、それでこそリベートよ」


 さて、準備をせねばなとリベートに声を掛けて、椅子から立ち上がる



―――――――――――

後書き


魔王の座を奪われたのを良いことに観光しに行く(元)魔王様と秘書さん…という感じです、はい

魔王様は元より人間側の領土に興味を持っていたのでこれから楽しく観光するんでしょうね!秘書さんは人間にいい思い出無いので人間に辺りがキツイと思います



魔王様

イグザッド(××××)

男性の魔族

歴代の魔王の中で魔法に長けていながら、剣術も歴代魔王内では五本指に入る実力を持ってる人

因みに彼は元はと言えば、魔王なので冠の誓約に縛られないという利点を持っていたりする(というか普通は【殺してでも奪い取る】だから前例がない故の誓約の穴)

見た目美丈夫な俺様系に対して性格は割かし好奇心多めの世間知らずな坊ちゃん

ジョブとしては剣士で通すけど、魔法も使うから周りからは魔剣士言われてたりする

能力的には大変チート染みてるが生活力皆無だし固い瓶の蓋開けられないという微妙に非力なところがある


魔王秘書さん

リベート(×××)

男性の黒龍族

人間側の奴隷市場に出されていたところを侵略(理由:魔族を奴隷として売り捌いてから)され、魔王様に龍族だ珍しいという感覚で助け出された

魔族内で唯一魔王様の暴走を力でねじ伏せられたりと魔族内のストッパーの役目を担っていた

見た目は冷たい印象を受ける美形に対して性格は苦労人気味な人間嫌い

ジョブは魔法使いに見せかけたハンター。龍族の体質(魔法耐性や語感が敏感とか)を生かして索敵やらを務める

能力的には、他種族に比べて二・三上の耐性を持っている程度のチートではない。ただし魔法様より力あって、木を鷲掴んで引っこ抜ける

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