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友人のご令嬢  作者: ゆせゆ。
4/6

4 (1週間前、終)

夕食の時間までリュカのベットに座り色々と考えていたが結局ただリュカがマデリーを好きなんだと言う結論だけしか出なかった。

いくら先ほどのことを思い浮かべても、いつもと違うリュカに困惑するばかり。


彼女と接点はなかったはず。同じ学園だとしても学年は違うし、ましてや爵位が低いから話しかけることもそう容易ではない。いや、話しかけられたのか?


私が初めて会った時は、あの噂の令嬢かと一見してしまい失礼な事をした。


噂とは、母親のような美しさや学はなく、父親の若い頃によく似た親しみやすく愛らしい容姿に、礼儀ただしく公平な心綺麗な令嬢。

そして誰も知らない変わった話を沢山知っているとか。

不快感は感じないが惹かれるものを感じない。友人にはなれそうだとは思う。


考えるばかりでは埒が明かないし、ひとまず2人で話をしよう。

それから父上と母上に話して…面倒なことになりそうだ。


用意ができたと呼びに来たメイドと廊下を歩く間もずっと考えて、もやもやして、頭を使いすぎて空腹だ。


「本日のお食事はリュカ様とお二人だけになります。」


席に着くとジルがそう述べた。


「なぜ?父上と母上は?」


「お二人は急用でお出かけになられました。」


「僕と二人じゃ何か問題ある?」


冷ややかな声が入り口から聞こえた。


「いや、別に。」


それから食事をしている間二人は会話する事はなかった。黙々とただ食べ続け、時々皿とカトラリーがぶつかる音だけが響く。

最後にイチゴの乗ったケーキがデザートとして出てきた。

甘い匂いが鼻をかすめ、いざ食べようとフォークを掴んだその時。


「ジル、使用人全員この部屋から出して。兄さんと二人きりで話したい。」


「リュカ様それは」


今か…。


「出してくれジル。私は構わない。料理も全て出し終わったし、食事が終わったら伝える。」


「…わかりました。」


ジルの指示により退出するメイドやコックたち。

まさかこんな早く二人きりになる時が来ようとは。明日くらいにと考えていたので心の準備がまだできていないが、今しかない、今話さなければもっと弟との仲がこじれてしまうだろう。


「リュカ、さっきのことだがマ…。」


「兄さん。」


名前すら呼ばせたくないというように話を遮られた。


「マデリーのことだけどさ、本気なの?」


「本気も何もただ父上が勝手に決めただけで恋愛感情なんてものは無い。」


「…は?好きじゃないの?なのに僕のマデリーとったの??」


どこかの窓が開いているのか、冷たい風が通り過ぎた気がして部屋の温度がぐっと下がった。

目つきが変わるリュカ。


「僕ね、学園に入学してすぐにマデリーに会ったんだ。彼女が友達と学園の花壇近くのテラスでお話ししてるところに偶然出くわしてしまってね。僕は近くの木の陰で本を読んでたんだけど星座に物語があるだとか、隣国ではそれが歌になっているとか楽しそうなこと話していてさ。気になって彼女たちをチラッと見たら、笑っててね?他のもの全てがゴミに見えるくらい綺麗で美しくて可愛くて、もうなにあれ好き。むり。その場で抱きしめて掻っ攫おうがと思った!でも我慢したよ。初対面で不審者扱いされたら僕らのこれからがダメになってしまうからね。それから彼女の事を調べ上げたよ。名前に学年に昼食になにを食べるのか、何の授業を受けて何時に図書室に行って誰に会って馬車に乗って帰るのか。あぁちゃんと馬車に乗るまで変な輩が近づかないよう遠くから見守っていたよ。彼女不用心だし人がよすぎるから危ないよ、変な男に近づかれたらたまったもんじゃない。あーあと彼女が帰った後机にたまに男が手紙とかプレゼンみたいなへんな箱を入れてたから全部処分しといたよ。だってマデリーが傷つくような物とか不快な物だったら大変でしょ?それに…。」


いろいろ言いたいことはあるが、変な男はお前だ、お前はストーカーだ。

自分の弟だが、こんな危ない奴に好かれてマデリー嬢が可哀想だ。


その危ない奴は今つらつらとマデリーへの愛を語りながら、ケーキの上に乗っていたイチゴをフォークで転がしていて、愛しいものでも見ているような眼差しだ。

きっとマデリー嬢を重ねているのだろう。


「僕がどれくらいマデリーの事好きか分かった?」


右手で苺を摘み上げキスをする。


「分かった。分かったが婚約はっ」


ダンッとテーブルに手をつき立ち上がるリュカ。

テーブルには無残にも潰れた苺が…これはまずいぞと身の危険を感じ、ひやりとした汗が背筋を伝う。

コツリ、コツリとゆっくり近づいてくるリュカ。


おいその右手にあるのはナイフか、ナイフなのか。苺の赤い汁が滴ってとんでもないことになってるぞ。


リュカが私の前で止まる。

にっこりと笑っているが目の奥は闇しか感じない。


「ねぇ、兄さん。」


ねっとりとした口調で呼びかけながら見下ろされる。


「だからさ」


唾を飲み、目をそらしてはいけないと自分に言い聞かせる。

本気でこのまま喉元を裂かれるのではないかと思えるくらいに、今のリュカの目が怖い。


ガンっという音とともに机にナイフが刺さった。


「父上に言ってくれるよね?リュカを婚約者にって。」


ただ無言で頷くキース。


彼はナイフから赤い汁が滴るのを見て、断った未来の自分を思い浮かべていた。


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