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クロエの魔導書(旧作)  作者: 幽礼
第三章 魔導書と”時の魔女”
20/21

100年経てばそりゃあね

魔女の神殿から出た後、ハズキの提案で家に泊めてもらうことになった。

正直この後のこと全く考えてなかったので助かりますホント。


その道中のこと。


「そいえばナギサ、どこから来たの?」


「えー、っと……とてつもなく遠いところかな」


嘘はついてない。嘘はついてない。大事なことなので2回言いました。

ここで「実は未来からやってきたんだ!へへ!」なんて言うと間違いなく何かがどうにかしてしまうのであえて隠しているのだ。何かがどうにかしてしまうの中身は知らんけど。


「へ〜。少なくともこの辺のヒトじゃ無さそうだね」


「ま、まあね」


と、そんな話をしながらハズキの家に歩いて向かっていた。


「暗くなってきたし、そろそろランタンつけよっか」


ハズキは持っていたカバンからランタンを取りだし、その中にハズキが右手から放った火を灯す。


「へー、そういうことも出来るんだ」


「炎魔法の火力制御は簡単だしね。なんならいつもの料理にもよく使ってるよ」


私なんて火力制御とか覚えるのに2年はかかるのに。すごいなあ。


「さあ、あともう少しだよ。歩き疲れてない?」


「歩くのは慣れっこだし問題ないよ」


とは言ってるものの、ここ数週間は落ち着ける暇もなかったので、体力面に関してはほとんど限界が近かった。


(寝る時に治癒魔法かけとく?よく効くよ)


お願いしようかな。ってかこれ聞こえてるの!?


(そりゃあね、意思での会話なんてアヒルが歩くのも同然よ)


……ちょっと何言ってるか分からないですね。まあいいや。


そんな傍から見たらお前は1人で何をしてるんだと思われることをしていると、目の前に森が見えてきた。


「ナギサお疲れー、この先にボクの家があるよ」


既に外は日が落ち暗くなっていたため、周りの風景を見ることは出来なかった。


「しっかりついてきて、暗いから迷わないようにね」


「うん」


私はハズキの後ろにしっかりつき歩いた。


森に入ると、様々な生き物の鳴き声が聞こえてきた。


「うぅ……怖い……」


そう。私は暗いところが大っ嫌いなのである。前に真っ暗になる魔法を使ったがそれとこれとは訳が違う。


「よーし、着いたよー」


ハズキは私の方を向いて言った。ハズキから離れて前を見ると、森の中に佇む木でできたコテージのような家がぽつりとあった。しかも、その家には明かりがついていた。

家の周辺には木はなく、月明かりがその家を照らしていた。


「あ!明かりがついてる!シーカーいるかな?」


「シーカー?」


「シーカー?シーカーいるー?」


ハズキがその名を呼ぶと、入口のドアから人が出てきた。


「おーハズキー。勝手に入ってて悪いね。」


少し身長が高く、黒く短い髪の、上下を紺のような色で統一した服を来た男性がそこには立っていた。


……イケメンすぎない?


「あれ?そっちは魔女さん?」


シーカーと呼ばれた男性に声をかけられた。なんでバレたし。


「はい、一応は……」


「やっぱり!魔力を強く感じたからそうだと思ったんだ」


シーカーは明るく私に話している。


「ああごめんごめん、つい出しゃばりすぎた。僕はシーカー。魔導士というものをやっているよ。よろしくね、()()()


「はい、よろしくです」


ん?ちょっと待てよ?なんでこの人、私が名乗る前に私の名前を知っているんだ?今ハズキと会話してる中でも出てこなかったのに。


(……)


ペトラが何か言いたげだが、今出てこられると厄介なことになりそうなので少し待ってていただいて。


「ナギサ、とりあえず中入ろっか」


「う、うん」


引っかかるところが多いが、とりあえず家の中に入る。



中はいくつものランタンで明るく、私の家で言うリビングに当たる部分には木の机と椅子のセット、その周辺の棚には魔具や魔導書などが所狭しと並べられていた。

そして、家の出入口から見て左手の方向には部屋が2つ、リビング奥正面には(多分)キッチン、右手には窓があった。さっき外から見えていた部分がここだろう。


「お邪魔します」


「何も無いけど、ゆっくりしてってよー」


シーカーは奥のキッチンに入っていった。


「さて、じゃあ僕は夕飯の支度でもしようかな」


「お、今日はシーカーが夕飯作ってくれるのー?」


「お客さんもいるからね、たまには腕を振るわないと」


シーカーとハズキのやり取りを見ていると、なんだか兄妹に見えてきた。


ハズキと私は椅子に座り、夕飯を待つことにした。



「ところで、シーカーとハズキって兄妹なの?」


ハズキに聞いてみる。


「いや、シーカーはボクの本当の家族じゃないよ。ボクのお父さんとお母さんは生まれた時にはもう既にいなかったからね」


「そうなの?」


「ただ、両親に捨てられてたボクを拾ってくれたのがシーカーなんだ。この家もシーカーが作ってくれた」


あの人、すげえ……


「シーカーは魔導士っていうのをやってるらしいよ。ボクもシーカーに教えて貰って魔法を使えるようになったし」


「シーカー、すごいね…」


ペトラさん、少し質問いいですか?

(はいはい、なんでしょうか)

ずっと前から思ってたけど魔導士と魔法使い(魔女も含)の違いってなんなんですか?

(うーん、少なくともこの世界では魔法使いの方が階級的には上だね、魔導士は特定の魔法に特化した人たちの事だね)

でも結局魔法を使えるのに変わりは無いのでは?

(そこには触れちゃいけないナギサ)

どういうことですかね?

(……干渉しちゃいけない謎ってものがあるのよこの世界には)

なるほど、納得


「ナギサ?」


「ああ、ごめんごめん、ちょっと考え事を」


考え事(メタ思考)、ダメ絶対。


「ところでナギサって何の魔女なの?」


「へ?」


「いや、ナギサの服に玉がついてるじゃん?灰色の」


「え、まあついてるね」


「それって確か魔女の証だから、何の魔女かなーとおもって」


ペトラさん。そういうことはもっと早く説明してくれませんかね。

(あははーごめんごめん、私としたことがすっかり忘れてたよー!)


……実体があったら杖でぶん殴りたい。


「えぇと、私はあの神殿で『時の魔女』になったらしいんだよねー。」


「『時の魔女』?」


「そうそう、何でもこの杖が時魔法に特化してるかららしいんだけど」


嘘はついてない。これは本当です。嘘はついてない。

…迂闊にタイムスリップしてきたなんて言えないからね。仕方ないね。


「なるほどねぇ。色々な魔女がいるんだねぇ」


なんとか誤魔化せた。本当にごめんハズキ。


「魔女かあ〜。憧れるなあ」


頬杖をつきながら話すハズキ。


その横に、夕飯の支度をしていたシーカーが来た。


「そういえばハズキ、儀式って明日じゃなかったっけ?」


「あー!!!忘れてた!!」


ハズキはドンと机を強く叩いて立ち上がった。


「儀式?」


「明日、ミラルで『クロエの魔法使い』を決める儀式があるの。それにボクも出るんだけど……」



ここで出てきたかその儀式。


恐らく、魔女の神殿で読んだペトラの手記に書いてあった儀式だろう。


(おっ?私の拗らせ文章読んでくれてたの?ありがたいねえ)


そりゃ読みますよ。いかにもじゃないですかあれ。



……とまあ、気を取り直して。


「大丈夫だよ、ハズキ。これまで練習してきたから、君ならきっと大丈夫」


「シーカー……」


「私も応援するよ、ハズキ。」


「うん、ありがとうナギサ」


ハズキの顔に笑みがこぼれる。


「っと、そうだった。2人とも、夕飯できたよ」


その後、シーカーが作ってくれた夕飯を3人で食べた。


─────────────────────


「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


夕飯後、ハズキがお風呂を沸かしてくれたので、ありがたく入っているわけなんですけれども。


久々のお風呂、染みるぜ……


(心まであったまる……何年ぶりの入浴だろうか)


ペトラも喜んでるようで。ハズキに感謝ですわ。


「しかし……魔法でお湯を沸かすってすごいなぁ……」


この時代はまだあまり電気は普及してないらしく、しかも魔法でお湯を沸かす方が早くていいらしい。


(そういえば、最初にシーカーに会った時、私が少し動揺していたでしょ?)


「え、まあしてたね」


(さっき言ってた私の拗らせ文章のなかに、失踪した教え子がいたってのは書いてあったね。シーカーが、あの子にそっくりと言うか、一瞬同じ人に見えたんだよ)


「そんなことが…」


(普通、人間って何百年も生きられないからそんなことはないと思ってたけど……もしかしたら……)


「ペトラみたいに、魔法で寿命を伸ばしてるとか?」


(いや、魔法で寿命は伸ばせない。そもそもそんなことが出来たら誰でもやってるはずだよ)


……心当たりがあるんですけどね。特にあなた


(私はもう死んでるから問題ないっしょ!!あはは!!!)


「軽く言うなぁ……」


(まあともかく、あのシーカーという男を気にかけておいた方がいいのは確かだ。どうも怪しい)


「分かった。なるべく気にしておくよ」


シーカー。初対面の印象で何となく怪しいとは思っていた。気をつけた方が良さそうだ。



そろそろ暑くなってきたのでそろそろ上がることにした。


「あっ、そういえば服1着しか持ってないんだった」


今更気づいたの?と思われたそこのあなた。殴りますよ?

私は好きでこんなところ来たんじゃないんですよ。飛ばされてきたんですよ?そんな服のことなんて気にしてる余裕ないんですよ?魔法で服作れるならいくらでも作ってますよええ。あー、どっかに魔法で新しく服作れないかな〜〜


(作れるよ)


えいやペトラさん今なんて?


(作れるよ)


マジですか。さすが魔女だわ。


(とりあえず、ナギサの過去の記憶を元に私服を作るから、3秒だけ待ってて)


3秒でできるんですか……本当頼りになりますわ。


(はいよ、ほぼほぼ復元できてると思うから)


私の目の前に、見覚えのある服が置いてあった。


(サイズもそのままだからそのまま着てみてよ)


ペトラに促され、とりあえず寝間着に着替える。


……すご。本当に完全再現されてる。さすがペトラ。


(私服も何着か用意してあるから、使っちゃって)


ありがとうございますマジで。助かりました。


(これくらいなんてことないよ)



脱衣所から出ると、シーカーは既にいなかった。


「ハズキ、お風呂ありがとう。ところでシーカーは?」


「ああナギサおかえりー。シーカーならもうミラルに帰ったよ」


「あっちに住んでるの?」


「そうなんだよー。たまにボクの家に泊まることもあるけど」


自由人なのかなあの人。


「さて、ボクもお風呂入ってくるかな〜。魔法の勉強も一通り終わったし」


ハズキは椅子の背もたれに寄りかかって体を伸ばした。


「そういえば明日の儀式って何するの?」


「儀式って言っても、何人かの魔法使いから『クロエの魔法使い』を選ぶ言ってみれば試験みたいなものだねー。選ばれた魔法使い同士で模擬戦闘をするっていう」


「模擬戦闘………」


今のミラルでは絶対考えられない儀式だな、これ。


「ハズキ、私も明日一緒に行っていい?」


「もちろんだよー。あ、なら明日朝早いから早めに起きておいてね」


「わかった。ありがとう、ハズキ」


そうとなれば早めに寝ないとな。ただでさえ朝弱いんだし。


「じゃあ私明日のためにもう寝るね。おやすみ、ハズキ」


「うん、おやすみ〜、ナギサ」


そうして私は寝室、ハズキは浴室へと向かっていった。



「あ、そうだペトラ。どうせ私1発で起きないから明日の朝叩き起してもらえない?」


(おまかせあれ)


これで寝坊の心配はなくなった。


その日は疲れ切っていたのか、ベッドで横になりすぐ目を閉じて数秒で意識が遠のいた。



───────────────────


「うーん……ここは………」


眠い目をこすりながら周りを見渡す。霧が立ち込める広い空間……あれ?私ベッドの上にいたはずじゃ……


「おっ?ようやく来たね」


どこからか、ペトラの声が聞こえてくる。


「ペトラー?どこにいるのー?」


「ここだよ、ここ」


声のする方向に顔を向けた。するとそこに居たのはさっきまで見ていた半透明の体ではなく、実体を持ったペトラだった。


「まったく、眠りが深すぎて干渉するのが難しかったよ」


顔に笑みを浮かべながらペトラが言う。


「ここは……?」


「ここは、私が魔法で作った空間。と言っても、一応君の夢の中だけどね」


「夢の中にまで出てこれるんですね……」


本当なんでもありだなこの人。


「というわけで、寝てる時限定だけど私はこうして実体を持って君と話すことが出来る。なんだったら、ここで魔法の練習もできるよ」


「すご……でもめっちゃ眠い」


正直驚きよりも眠さの方が勝っていた。寝させてくれ。


「とまあ、今日はお試しでこの空間作ってみたけど今後活用できそうだねー。何か用がある時は私から呼び出すから」


「うぃーー……」


あまりにも眠過ぎて返事が適当になってしまった。


「それじゃあ、今日はここまで。おやすみ、ナギサ─────」


─────────────────


小鳥の鳴き声と共に目が覚めた。あー、よく寝たなぁ……


(おはよーナギサ。まだ時間じゃないけど大丈夫そ?)


「え?」


部屋に掛けてあった時計を見てみる。本来7時に起きるはずが時計は1時間前の6時を指していた。


絶対これあの呼び出しのせいだわ。初めてだったし尚更でしょ。


「とりあえず起きるか……」


昨日用意していた私服に着替え、部屋を出る。


隣の部屋のドアも空いていて、既にハズキも起きていたようだった。


「早いなぁ……」


と、窓の方を見てみると。


「はぁぁぁ!!!」


ハズキの声がした。


ハズキの目の前には、木でできた人形があり、そこ目掛けて光魔法や火炎魔法など、攻撃系の魔法を放っていた。


「お元気で何より……」


窓越しにハズキを見ていたら、ハズキがこちらに気づいた。


「あっおはよーナギサ。早いね」


「おはよー。今外出るよ」



外に出ると、森特有(?)の澄んだ空気が私の体を撫でる。わからない?これ、良いよね。


「いやあ〜何か目覚めちゃって。ハズキは朝から魔法の練習?」


「そうそう。ちょっとでも慣れておきたくてね」


「偉いなあハズキは。私ならいつもこの時間寝てるのに」


「ボクもいつもは寝てるよー。やることないしね〜」



ハズキはその後、少し魔法の練習をした。


横で見ていたが、恐ろしいぐらいに魔法の扱いが上手い。これがあれか、天才ってやつか。


聞くところによると、ハズキはシーカーの教えもあって既に上位の魔法を使えるんだとか。私より年下なのにすごい。


「さて、朝ご飯食べたら行こうか。9時にはあっちにつかなきゃだし」



その後私たちは朝食を食べ、儀式の会場へと出発した。


「いってきまーす!」


ハズキが自宅に向かって手を振る。


「さて、目的地はここから1時間ちょいの王都ライゼンだよ!」


「よし、行こうか」



王都ライゼン。ミラル王国のトップたちが集うミラルの中心部。

現在はその機能を失い誰でも住め、誰でも訪れることの出来る場所になっている。


あれ?そういえば王国っていう割に今のミラルって王様いないんだよな?なんでだろ。


「普通に歩くと多分遅れるから、ここは一気に転移魔法を使うよ」


そういいハズキは目の前に魔法陣を展開した。


「これでライゼンの目の前まで飛べるはず。さあ乗って、ナギサ」


「う、うん」


過去2回の事件のせいで魔女なのに転移魔法恐怖症とか言えない。


「『ワープ』!」



魔法陣の外側が光り、転移は成功した。


「ふー。結構魔力使うけど儀式には支障ないかな」


たどり着いたのは、城壁に覆われた王都ライゼン前。


周りにはちらほらと民家が見え、今の発展したミラルとは見違えるほどだった。100年も経てばそりゃ違うか。


「さて、ライゼンに入ろうか」


そう言いハズキと私はライゼンの入口へと向かった。



「おーハズキ!今日は儀式?」


鎧を身にまとった門番らしきガタイのいい男性がハズキに話しかけてきた。


「そうなんだー。めちゃくちゃ緊張してるけど頑張るよ」


「頑張ってねーハズキ。……おや、友達?」


私の方を向いてきた。


「ナギサです。普通の魔法使いやってます」


「そうなんだ。よろしくね、ナギサ。とはいっても僕はここにいるだけなんだけどね」



ちなみにここで1つ。私が来ていた魔導衣は、言ってしまえば魔女である証のようなものなので一旦ペトラに預かってもらっています。

魔女になったとはいえ、あまり事実を広げすぎると未来の改変に繋がりかねないとペトラが言っていたので。

私は今日私服を来てきたので、魔女であるということは隠し通してます。はい。


その後門番が門を開けてくれたので、私たちは中に入っていった。


するとそこには、目の前に大きなお城がそびえ立ち、その周りには民家や屋台など、本当に今のミラルとは大違いの風景が見えた。


「すご……」


口に出ていた。


「さて、会場はこの先かな」


城下町をハズキと共に歩いていく。



最終的にたどり着いたのは教会だった。


「お疲れーナギサ。ここが今日の儀式の会場だよ」


そこは現代でミラル(いち)といわれる教会だった。教会って変わんないんだなあ。


その教会の前には大きな広場があり、その中心には噴水がある。…はずなのだがこの時代にはないらしい。

広場では既に何人かの魔法使いが待っていた。その周りには、それを見に来た人達が群がっていた。


「ハズキか……」


「あれ、また来たの」


……ほかの魔法使い達にはあまりいい印象は持たれていないらしい。


「大丈夫、ただの嫉妬だから」


そう冷たく言い、ほかの魔法使いを睨んでいた。


「あれ?ハズキじゃん。久々だねー」


ハズキより少し歳上に見える女の子が、ハズキに話しかけてきた。


「メリーじゃん!久しぶりー」


メリーと呼ばれたその女の子は、木で出来たような杖を持っていた。


「久しぶりだねーハズキ。最近はどう?」


「まあまあかな。シーカーも最近はよく家に来てくれるし」


「そうなんだー。あの人いい人だよねー。面倒見もよくて」


「メリーは最近どうなの?」


「うーん、魔法の勉強が難しすぎて折れかけたよ」


「あれ難しいもんねー。私もまだまだ分からないよ」


そういえばこの時代に学校ってあるのかな?どうなんだろ。


「ハズキが元気で何よりだよー。今日の儀式、頑張ろうね」


「うん。とはいってもボク達敵同士だけどね」


2人は笑い合う。


「じゃあね、ハズキ。また後で」


「うん、また」


メリーはハズキに手を振り元いた場所に戻って行った。


「さて、そろそろ始まるかな」


ハズキが教会の方を向いた。そこには、かなり年寄りの神父らしき人物が立っていた。


「魔法使い8人の存在を確認した。これより、クロエの魔法使いを決める儀式を執り行う!」


年の割にはかなり大きな声を出している。


「8人はそれぞれ模擬戦闘を行い、勝者が勝ち上がる!最終的に全ての魔法使いを倒したものが、次の『クロエの魔法使い』となる!」


模擬戦闘ねえ……時にペトラさん、なんで模擬戦闘なんですか?

(この時代はまだ戦争が頻発していたからねぇ……力あるものが生き残る時代だからそういうのもあるかもね)

なるほど……改めて今って平和なんだなと実感しましたわ。


「それでは先代の『クロエの魔法使い』であるマザー・クロエにお言葉を賜わる、心して聞くように」


神父の横からマザーと呼ばれた女性が出てきた。


「皆さん、各々が持てる全ての力を出し切り、頑張ってくださいね」


……うん、普通。


「それではこれより、儀式を始める!準備があるので、第1試合の者は待機すること!以上!」


神父の話が終わると共に、広場にいた人々は周りを囲むように移動した。


その頃のハズキと言うと。


「…………」


緊張しているのが私の目にも見えた。


「ハズキ、大丈夫?」


「うん……なんとか……」


ハズキは少しの間目を閉じた。


「……よし!」


目を見開き、ハズキは決心した。


「ナギサ、ボク頑張ってくるよ!」


「うん!がんばれ!」


ハズキは小走りでほかの魔法使いたちの待機所に向かった。


「さーて、私も移動しようか」


魔導衣でないとはいえ、あまり目立ちすぎてもあれなので少し後ろの方でハズキを見守ることにした。


(さて、私も高くから見るとしますかね)


ペトラも思念体で出てきた。私の少し上で会場を見守る。


そして、第1試合の魔法使い2人が広場の中心に出てきた。

それと同タイミングで魔法の見えない壁が展開された。


「アンチマジックエリアを展開した。これで存分に戦うと良い。」


神父が再び出てきた。


「両者の首にかけられたペンダントを奪ったほうの勝ちとする。また、万が一死んでもマザーの蘇生魔法『リザレクション』があるので、安心せよ」


なんか倫理観バグってない?


「それでは第1試合、初め!」


神父の掛け声と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。

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