慈愛の魔女
すいません。一部自分で作った設定を思いっきり無視して書いてしまった部分があったので訂正しました。なにやってんだろうね()
魔女の神殿最下層。
そこには人の形をした石の化け物が待ち構えていた。
「ちょ、ちょっとこれはどういう.......」
と、油断していると、
「…………」
その化け物はゴゴゴゴゴという音を立てて、人の形へと姿を変える。
これ、ひょっとしてピンチってやつでは?
目の前には正体不明の化け物。魔導書もないし使える魔法も少ない。あれ、これデジャヴ?
そうこうしているうちにあの化け物はすっかり完成してしまっていた。
「…………」
声こそ出さないものの、ものすごい殺気を感じる。
その化け物は、ドシンドシンと足音を立て、ゆっくり私に近づいてくる。
どうすればいいのか。体が動かない。
どうすれば。
……と、そのまま固まっていると、その化け物が無防備な私めがけ殴りかかってきた。
「うわあ!!」
攻撃をギリギリで避けられたが、その反動で私は転んでしまった。
まずい。このままだと、あの化け物に──
ああ、神様。私に救いはないのですか。
「──お困りのようだね、迷える魔女さん。」
「!?」
突如、どこからか女性の声が聞こえてきた。
「落ち着いて聴いて。私のことはあとで説明する。今はまずその化け物だ。その化け物の名前は、ゴーレム!!」
「ゴーレム!?あの作り話とかでしか出てこない……?」
と、その化け物……ゴーレムは、倒れた私にすかさず攻撃してきた。
「あぶない!」
その時だった。
ゴーレムの拳が、私の頭に当たっ……
「……あれ?」
当たっ……てない?
そのゴーレムの拳は、不思議なことに私の目の前で止まっていた。
「ギリギリセーフ。でも、この魔法が使えるのは少しだから、今のうちに立ち上がって!」
謎の女性の声が作ってくれた隙に、私はゆっくり立ち上がった。
今のところケガはしてないようだ。さすが私。
「いいかい?こいつには物理的な攻撃は効かない。魔法は何か使える?」
「か、火炎系と風系と空間を少しだけいじる魔法なら……」
「なら十分。私の魔法ももうすぐ解けるから、すぐにゴーレムめがけて火炎魔法を当てて!」
「わかりました!」
私自身の魔法を使うのはいつぶりだろうか。緊張する。
「あとは、頼んだよ……」
女性のその言葉と共に、ゴーレムが動き出した。
「……ふぅ。」
久しぶりなので、精神を集中させる。
「…よし!」
ゴーレムが少しずつ近づいてきている。
「よし!『フレイム』!」
手のひらから、火炎の弾をゴーレムめがけ放った。
「…………!」
ゴーレムが逃げる間もなく、火炎の弾が命中した。
「………………」
しかし、火炎弾が当たったゴーレムは、まだ私の方に向かって動いていた。しかも燃えながら。
「うわああああああ!こっちくんな!!」
さすがに自分まで燃えたくなかったので必死の思いでフレイムを連発した。
「『フレイム』!『フレイム』!!『フレイム』!!!」
もうすぐ魔力が尽きる。それまでに何とか…!
「『フレイム』!!!」
最後の1発は、心做しか今まででいちばん強いような気がした。
「はぁ……はぁ……もういいでしょ……!!!」
「………………」
ゴーレムは動きを止めた。
そして、そのままその場で崩壊を始めた。
これはやれたのか……?
「………………見事」
ゴーレムはそれだけを言って、炎と共に消えた。
あいつ喋れるんか……。
……と、さっきまでゴーレムがいた場所に、光の玉が浮いて出てきた。
「なんだ、これ?」
恐る恐る触ってみ……ようとしたその時。
「いやー、まさかあのゴーレムを倒す魔女が現れるなんて思わなかったよ!」
「きゃぁ!!!!光の玉が!!!光の玉がっ!!!!!」
光の玉が喋り始めた。
「ああ、落ち着いて。私はさっきゴーレムに時魔法を掛けた者だよ。」
「なるほど、さっきの。って光の玉が喋ってる──」
「そのくだりもういいでしょ」
光の玉にツッコまれた。
「私は”元”魔女、ペトラ・クロエ。”慈愛の魔女”なんて呼ばれていたわね」
「あなたがペトラ……?」
「おー、私の名前を知っているとはね。で、あなたは?」
「あ、私はナギサです。見習いの魔法使いやってます」
「へえ、見習いの」
話を聞くと、どうやらこの神殿の試練の最後としてゴーレムを作ったものの、途中で何故か暴走してやられてしまったらしい。そんなことってあるのか。
「あ、そうだ。ペトラさん、聞きたいことがあります」
「なになにー?」
「『クロエの魔導書』って聞いた事ありますか?」
「『クロエの魔導書』ー?なにそれ、知らないな」
クロエの名を冠する魔女ペトラでも、クロエの魔導書は知らないようだった。
「じゃあ、魔女『ハズキ・クロエ』は知っていますか?」
「うーん、どっちも聞いた事ないよ」
「そうですか……」
整理すると、強制的に飛ばされたこの場所には、『クロエの魔導書』も魔女『ハズキ・クロエ』の存在も知られていない、ということになる。
やっぱり、ここはミラルやエイトからかなり遠い場所なのか…?
それとも……
「ちょっと失礼、記憶を見せてもらうよ」
「きゃあ!?」
突然ペトラが私の体に入り込んできた。いやまあ光の玉が入ってきただけだけど。
……と、その時私の目にこれまでの記憶が一瞬蘇って見えてきた。
ミラルでの出来事、エイトでの出来事……それはもう沢山だった。
「ふぅ〜、失礼したよ」
視界が元に戻ると同時に、ペトラが出てきた。
「えーっと……どこから説明すればいいんだろ……」
何やら困った様子だった。
「ナギサ、今日の日付を教えて?」
「え?あまりよくは覚えてないけど、今日は2057年の9月位だったかと……」
「なるほどね。ナギサ、これから言うことを驚かないで聞いて欲しい」
「どうしたんですか急に…」
ペトラが真剣な口調で話す。
「ナギサ、君は今100年前のミラルにいる」
「え?」
え?
「うん」
「ぇぇえええぇぇえぇぇえええぇぇえぇぇえぇぇえ!!?!?!?!?!!!?!」
エイト王国でのあの一件で、私は過去に飛ばされてしまった、といことらしい。
すみません、しばらくパニクらせてください。