表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロエの魔導書(旧作)  作者: 幽礼
第三章 魔導書と”時の魔女”
17/21

魔女の神殿②

神殿に入った直後、入口のドアが勝手に閉じられてしまった。


恐らくこの神殿には同時に二人以上入れないのだろう。


入口のドアが完全に閉まると、神殿の中は真っ暗になった。


その直後、壁に掛けられていた松明に火が付いた。



神殿の中は外見と全く違い、狭い一本道が続いていた。


この先に魔女ペトラ・クロエの手がかりがあるのか......



よし、進もう。



細い道をしばらく歩いていると、下の階へ続く階段があった。


この神殿、どうやら地下に続いていく構造らしい。


とりあえずこの階には何もなさそうなので、このまま降りることにした。



地下一階。


階段を出てすぐ左に、木製の机が置いてあった。


そして、その上には開かれたままの本があった。


読んでみる。


『今日から私の周りで起きた事象などをこの手記に残していく。また、この手記はこれからの王国を担う者に継承され、この王国の未来への標にもなることであろう。

手始めに、私のことについて記しておこう。私はここ「ミラル王国」の王国専属の魔法使い、ペトラ・クロエである。この「クロエ」という名は太古の昔より王国の優秀な魔法使いに継承される名前である。


そんな「クロエの魔法使い」を名乗れるのも、今年で最後になる。王国専属の魔法使いとしての長い任期が間もなく終わる。私ももう充分歳を取った。これからの人生を魔法学の研究に費やそうと思っている。


しかし、私にはまだ最後の重要な仕事が残っている。私の後継ぎを国の数少ない魔法使い見習いから決める儀式が、ちょうど一週間後に控えている。まさに今、各々がこの儀式に向け自分の魔力を高めているだろう。私は期待している。』


そこで文章は途切れていた。


ここ以外のページは劣化のせいか、読めなくなっていた。



読みながら、いろいろと引っかかるところが出てきた。


ミラル王国専属の魔法使いなど、聞いたことも見たこともない。


そしてその専属の魔法使いに就いていたのは、魔女ペトラ・クロエだと言う。



よくわからない。今のミラルには国専属の魔法使いなんて存在しない。


この手記が書かれたのは、恐らく遠い昔なのだろうが、そんな何十年で国の制度って変わるものなのか。


ましてや国専属の魔法使いなど今でも必要なはずなのに。



いろいろ考えながら、とりあえず先に進む。


--とはいったものの、この先の通路が真っ暗で何も見えない。お先真っ暗ってことか。絶対違うけど。


不意にあたりを見てみると、壁になにか言葉が書いてあるのを見つけた。


『灯りがないなら、その手に灯せ』


自分の手に灯りを...?


...なるほど。



いまこそ学校で習った火炎魔法を試すとき。


「『フレイム』!」


手のひらに火をつけることができた。


熱く......ない。


これを灯りにして進めってことか。


魔導書を使わないで魔法を使ったのいつぶりだろ。



とはいえ、この火の灯りだけでは十分に見渡すことはできない。慎重に進まないと。


---そう思った矢先。


「あばばばばばばばばばばば」


突然、激しい光とともに身体全体が痺れた。


これは、電気魔法--



数秒して痺れは止まった。


何だったんだ、今の。



ふと足元を見ると、私は雷の模様が描かれたタイルを踏んでいたことに気づいた。


これがハズキの言っていた”仕掛け”か......?


この先もまだありそうだし、注意して進もう...。



------------------



ようやく下の階層への階段のところまでたどり着いた。


ここに来るまでにトラップタイルを三つも踏んでしまった。ちょっとだけ色が違うタイルとか暗い中で誰が予想できんの。


すでに体はボロボロである。


この神殿、まだまだ続きそうなんだけどもつのかな...。



地下二階。ここでもすぐペトラの手記を見つけた。


『儀式を前日に控えた今日。私の教え子が消失した。

彼は昨日まで私の家に来て、私が魔法を教えていた。しかし、今日は一向に来ない。

不安に思い、彼の住処に行ってみたのだが、手遅れだった。もう彼の姿はなかった。

真面目で優しい彼に何があったのか。心配で眠れない。』



手記を読み終え、この階層を見渡してみる。さほど広くはないが、問題は...


「あの...一本橋...」


そう。究極的に幅が狭い、橋。暗くて視界が悪いうえ、極めつけに手すりもない。この試練は魔法と関係あるのだろうか。


落ちたらすなわち死........


ほかに道はないし、進むしかないのか...


「ふぅ.......」


呼吸を整え、いざ。


恐る恐る一本橋の端に一歩踏み出す。


微かに「ガラ...」と橋の崩れる音がした。もう帰っていいですか。


うぅ...怖い...


数秒の硬直ののち、私は覚悟を決め、


「うおりゃあああああああああああああ!!!!!!!」


勢いだけで激狭一本橋を走って突破した。そこまで距離はなかった。


いやしかし、私にあれほどの体力があったとは。恐ろしい。



橋を抜けた先には、下へ続く階段があった。どこまで続いているんだろうか、この神殿...



------------------



地下三階。例のごとくペトラの手記があった。


あの教え子はどうなったのか。



『...あれからひと月経ったが、いまだに彼は帰ってきてはいない。

あのあと、儀式は予定通り執り行われ、次の「クロエ」の魔法使いは決まった。私はその者に引き継ぎをしてから、その教え子を探すつもりだ。


どうか無事でありますように。』


一か月経っても見つからないなんて...。つらいだろうな。



手記を読み終え、周りを見渡す。この階層はとても広い。


もしかしてここで終わりなのか...?いや、そんなことってあるのか。


と、部屋の中心に謎の石の塊を見つけた。なんだあれ。


恐る恐る近づく。


すると、その石の塊が突然動き始めた。



数秒もたたないうちにその石の塊は人の形の化け物となった。


その化け物は、無防備な私に殴りかかってきた。


「うわあ!!!!!!!!」


私は反動で転んだ。


----その化け物の名は。


「ゴーレム!!!!!!!!!!!」

次回神殿編最終回です。長い。後編ってなんだっけ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ