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クロエの魔導書(旧作)  作者: 幽礼
第三章 魔導書と”時の魔女”
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魔女の神殿

私は転移と同時に入り込んでしまったここ『永遠草原』から抜け出すため、神と名乗っていたカラスからもらった『レイコンパス』を頼りに進んでいた。


しかしこの空間といいあのカラスといい、ここは本当に私の知っている世界なんだろうか......


ここに来てから、不思議なことばかり......



『永遠草原』をしばらく歩いていると、レイコンパスが「ピッピッ」と音を立てて光りだした。


出口が近づいてきたのかもしれない。



さらにレイコンパスが指す方向に向かって歩くと、反応が大きくなってきた。


......うるさいな、これ。



レイコンパスの反応が激しい。恐らく出口についたのだろう。



突然コンパスが私の手から勢いよく飛び出した。


宙に浮いたコンパスが、激しく光り、空間に向かって光線が放たれた。


そして、目の前の空間がガラスのように割れ、出口である裂け目ができた。


ここを抜ければ、外......


よし。行ってみよう。


意を決し、私は裂け目へと入った。



...と同時に、私は意識を失っていた。


------------------


「......ましょう。あなたみたいな人と、これ以上この家で過ごしたくない」


母さんの声.....


これは...一体...??


「ああ?俺がなにしたっていうんだよ?」


この声...聞き覚えがない。


「あなたは魔法研究のためと言って、人を殺したのよ?それも、私の姉さんを......!!!」


「レイズ、君は何もわかってないんだ。俺は.....」


------------------


「はっ...!!!」


気づいたとき、私は謎の建物の前に立っていた。


今のは...夢...?

それとも...私の幼いころの記憶...


だとすると、あの聞き覚えのない声は......


「...父..さん...?」



あの記憶は私に何を見せようとしたんだろう....

そしてなぜ今、昔の記憶が...



何はともあれ、私はあの『永遠草原』から抜け出すことができたらしい。


ここは、恐らく私がここに飛ばされたときに最初に目についた場所だろう。


しかし、ここはどこなんだろう。



この建物、かなり面積が大きい。


一周してみるだけでもかなり大変そう...



少し考えながら歩いていたら、その建物の入口らしき所が見えた。


--と、同時に。



「あれは...!」


入口の前に、私と同じくらいの年に見える女の子がうつ伏せで倒れていた。


私はその子の元へ急いで向かった。


「大丈夫!!?」


...息はまだ出来ている。意識を失っているのか...?


「...ん、んんん...」


「!!」


よかった。まだ生きている。


「……ん」


その子が、ゆっくり身体を起き上がらせた。


「んーん…ここは……」


「よかった。気がついたんだね」


「君は、誰?」


「私はナギサ。魔法使い見習いだよ」


「魔法使いの見習いね……ボクはハズキ。よろしくねい」


ハズキ……どこかで聞いた事があるようなないような……


「ボクはここらでは珍しい『魔法使い』なんだ。これでもまだ12歳だよ」


「魔法使いが珍しい?どういう事なの?」


「まだ魔法の存在そのものがあまり知られていないからね。この辺りでもボクぐらいしかいないよ」


「魔法の存在が知られてない……?」


おかしい。明らかに何かがおかしい。

魔法は今では誰でも扱えるようなもののはず。それなのにまだ存在が知られてない……?


「どうしたの、ナギサ?何か考え込んでいるようだけど」


「いや、なんでもない。それより、ここは?」


話しながら私達は立ち上がった。


「ここは、『魔女の神殿』。噂によると、何でも魔女ペトラ・クロエが残した『ペトラの杖』があるらしいんだよ」


「ペトラ・クロエ?」


「そ。数百年前にもう亡くなってるけどね」


「その人って、『クロエの魔導書』を書いた人?」


「何それ、聞いた事ない」


「え………」


だんだんわからなくなってきた。

クロエの魔導書が、魔女クロエによって書かれたものでない、さらにこの世界にクロエの魔導書そのものが存在してない…?


おかしい。クロエの魔導書は、魔法使いならその存在は誰でも知っているはず。


何がどうなっているんだ。


飛ばされたこの場所は、一体──



「その魔導書の事はわからないけど、別の魔導書なら知ってるよ。『魔導書グリモワール』って言うんだけどね」


「『魔導書グリモワール』?」


「その魔導書を使うと、そのページに書かれている魔法を半永久的に使うことが出来る。ま、代償を背負わされるけどね」


「魔法を使うのに、代償?」


「まあ正確に言うと魔導書を使った地点で身体の何かしらを奪われる。酷い時だと両目持ってかれたりする」


「怖......」


「でもその魔導書、存在自体が怪しいからね。ボクの話だってただの噂だし。」


「噂だったとしても怖いよ...」


兎にも角にも、この辺りにはクロエの魔導書の存在そのものが知られていないらしい。あるんだなあ、そんなことって。




「さーて、『ペトラの杖』も見つからないし、また神殿に入ってもさっきみたいに入口に戻されるから今日は帰ろうかな...」


ハズキが残念そうに言った。


「待ってハズキ、私ちょっとこの神殿の中に行ってきてもいい?ペトラ・クロエについて少しでも手がかりを探したいから」


「いいけど、ひとりでダイジョブ?」


「大丈夫。それに、ハズキはまだ完全に動ける状態じゃないでしょ?」


「そうかも...なんせ一回神殿の中で死にかけてるしね」


「死に...えっ!?」


「仕掛けとかがいっぱいあるんだよ。まるで『ここに訪れたものへの試練』みたいな。」


「そんなにまでして守りたいものって...」


とにかく、入ってみなければわからない。


「じゃあ私、行ってくるね」


「うん、気を付けて。ボクはここで待ってるよ」


意を決し、私は神殿の中へと進んだ。

まさかの後半へ続く

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