チビとの出会いと
私は急いで子猫を家に入れた。
ダンボールにタオルを敷き詰め、ホッカイロを間に入れ、動いてない胸をさすり続けた。
しばらくして小さな鳴き声が聞こえたので、口の端にスポイトを入れ、ぬるま湯を一滴ずつ飲ませた。
子猫は親猫が舐めないと排泄ができないと聞いたことがあるので、念のため肛門を濡れたガーゼで優しく拭いた。ほんの少し排泄したので、ホッとした。
それから身体が冷えないようにダンボールの外にも毛布をかけた。そして朝になって動物病院に連れて行った。
そのとき私は子猫がどんな治療をして貰ったのか、覚えていない。
でも診断結果は覚えている。
既に猫エイズを発症していると言われた。両目は炎症をおこし、背骨は曲がっていた。鼻風邪みたいにずっとクシャミをしていた。
先生に長く生きられないかもしれないと言われた。安楽死をすすめられた。
でも私は治療を願った。一度生き返った命を、巡り合った命に別れを告げることができなかった。
自己満足かもしれないけど治療を願った。
そして家族の一員にチビが加わった。黒猫は、先住のポチがいたので、ポチより小さく短いしっぽだったのでチビにした。
ポチに続いて名付けのセンスがないと皆に言われた。
ポチと華は、チビの存在を普通に受け入れた。
時々チビを守るように団子になって眠っていることもあった。
チビは後ろ足が悪く歩くことはできても速く走ることはできなかった。いつも涙目で、クシャミばかりしていた。
毎日赤ちゃん用の鼻吸いスポイトで、鼻水を取ることが日常になった。
三匹の猫がコタツに立てこもると家族は遠慮して正座でコタツに入った。家族全員で猫バカである。
猫を撫でるためにコタツに頭から入って、のぼせたりもした。
三回コタツのシーズンが過ぎたけど、四回目のコタツには二匹の猫しかいなかった。
歩くことができなくなったチビは、鼻水でカピカピだったけど可愛かった。
チビは朝の4時に亡くなった。
仕事の日だったのでほんの2時間仮眠を取った間に亡くなった。
悲しくて、その日は泣きながら仕事をした。
でも私は後悔していない。
誰もいない深夜、車の下で消えそうだった命と、数年だけど過ごせたことを幸せだと思っている。
チビちゃんは家族。
残った二匹もしばらくいなくなったチビを探していた。