表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ポチと華の日常

 私は猫を飼っていた。

 三匹の猫だ。


 長いしっぽで真っ黒でつやつや黒で、真っ黒雄猫のポチ。

 真ん丸しっぽで茶色ベースに黒い縞模様の、キジトラ雌猫の華。

 5cm位の鍵しっぽで真っ黒でモサモサの、モサ黒雄猫のチビ。


 今はみんな虹の橋を渡って、家から旅立って行ったけど、大切な家族だ。


 ーーーー


 最初は高校の先輩から子猫を貰った。

 黒猫のポチだ。


 ポチは何をするにも鈍臭く、可愛らしかった。

 大きな体でピンッと伸びたしっぽ。

 しなやかさの欠片もないしっぽは、いつもフローリングをゴツゴツ叩いていた。

 体長も長く、ちょっぴり太っていたので8kg以上体重があった。

 走るとお腹の肉がタプタプ揺れていた。


 他の猫達はしっぽが短いので、私は長い猫はしっぽが固いと思い込んでいた。


 嬉しいとき、ポチのしっぽはクネクネ揺れることはなく、真っ直ぐに立ち上がってプルプル微振動していた。

 私はそれが普通だと思っていた。

 友人宅で長いしっぽの猫を触って、芯のないフニャフニャしたしっぽに衝撃を受けた。


 普通の猫はしっぽが柔らかいよと教えて貰ったとき、(うち)の猫は特別なんだ、なんて可愛いんだと思った私は、きっと立派な猫バカなんだと思う。


 ある日、寝ているときにうなされて目を開けると、私の腹から胸にポチが乗ったまま添い寝していることがあった。

 黒猫なので真っ暗闇で瞳を閉じていると、黒い物体なので一瞬びっくりするが、すぐにピスピス寝息がすることに気がついて安心した。

 でもさすがに毎日うなされると安眠できないので、そっと脇におろし腕枕をして寝ていた。

 可愛かった。


 ポチが二才になる頃、兄が大学を卒業して、下宿で飼っていたキジトラの華を連れて帰ってきた。野良猫だったとのことで正確な年齢は不明だが、動物病院のお医者様は多分ポチと同じ位で、二才だろうとのことだった。


 同居を始めたポチと華は喧嘩をすることもなく、いつも仲良くしていた。

 日向ぼっこするときも、ご飯を食べるときもいつも一緒だった。


 我が家の猫達は、勝手口の猫ドアから自由に出入りができた。

 家を建てるときに、ちょっぴり太めのポチの腹回りを測り、特注で作ってもらった。猫バカ家族の自慢の一つである。


 庭のパトロールはポチの役目だった。庭に面した掃き出し窓から銀木犀の花を背景に、ピンッと立ったしっぽだけが見えて可愛かった。


 二匹は避妊手術していたので子猫が生まれることはなかったが、仲の良い夫婦のようだった。

 婚姻や離婚で家族構成が変わっても、私の猫はポチで、兄の猫は華だった。


 ポチはとぼけたところのある猫だったが、華はとても賢い猫だった。兄が食卓に座っているときに、兄様に挨拶してと言ったら、毎回歩く進路を変え、兄の足にスリスリ挨拶をしていた。


 私が食事中に冗談で、華ちゃんマヨネーズ取ってきてと言ったら、わざわざ冷蔵庫の前に行き、困ったように鳴いていた。


 因みにポチは呼んでも来ないし、マヨネーズの場所も知らない。でも可愛い。


 そんなこんなで、9年という歳月が流れた。


 ポチ達が9才のときチビを拾った。

 その日の昼間、ポチや華が何度も何度も、外の様子を伺っていた。

 なんだか私も気になったが、いつもと違いが感じられずに夜になった。


 私の住む家は静かな住宅街だ。夜になるとほとんど音が消え、小さな音も響くようになる。

 就寝前に、猫ドアに施錠をしようとしていると、どこからか、か細い子猫の鳴き声が聞こえてきた。

 家族と一緒に声を確認してみたが姿が見えない。暗闇の中どこかに子猫がいるのに見つけることができない。

 探している最中に、子猫の声が聞こえなくなった。私は焦って植え込みの下や、車の下を探した。

 すると、タイヤの陰に少し毛の長い、小さな黒猫が倒れていた。両手に乗るくらいの小ささで、身体は冷え切っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ