第一話、「はじまりはじまり」
話自体はそんなに長くならないと思います。けど、自分の文章力と表現力の向上を目標に頑張りたいと思います。どうか温かい眼差しを持って読んでやってください。(苦笑)
「やっべぇ!遅刻×2〜っ!!」
爽やかな朝、東校舎のD講堂を目指して一人の青年が走っていた。
肩で息をしながら講堂の扉を開けた青年は、一斉に浴びせられた冷ややかな視線によって自身の遅刻を再確認した。この授業は火曜二限の人気講義で、遅刻する生徒は他の授業に比べかなり少ない。そのため、既に講堂内はほぼ満席。空席が見当たらないことに戸惑う彼、さらに注目は集まる。動転しかけている彼だが、最前列から二列目の左端、比較的座りやすそうな位置に自分の逃げ場を見つけた。
「らぁっきぃ〜♪」
そんな風に内心呟きつつ青年は目標の座席へ逃げ込んだ。静まり返っていた講堂も講義の再開をうけ、教授の眠たくなるような言葉で平穏を取り戻した。
…かのように見えたが、依然として刺すような視線を感じる青年。むしろ、席につく前よりも嫌なオーラをまとった視線を感じている青年は困惑しながらもその視線の先を振り返れなければ、そんな視線を浴びるいわれを理解できずにいた。気にせず講義に集中しようと気を取り直し、ノートを取り出そうとしたら、自分の前のスペースにまで支配範囲を広げていた隣の生徒が華奢な手を伸ばして自分のジャケットを引き上げていった。青年は軽く会釈して生徒の顔を伺った。その瞬間、彼が今まで浴びていた嫌な視線の正体はおぼろげなその輪郭を現した。その輪郭とは、身の程をわきまえろと言わんばかりの警告と、隠しきれないジェラシーとを綯い交ぜにしたものだったようだ。
隣に座っていたのは絶世の美女で、どうやら自分が座っているこの関は「偶然」空いていたのではなく、「必然的に」空いていたらしい。それにしても美しい女生徒に隣に座っているだけで緊張感を与えられる。講義の終了までのしかかり続けたプレッシャーからようやくの解放にありついた彼は、弾丸のように席を立つ。すると、すかさず後ろから呼び止められ、なんと昼食の誘いを受けた。断る理由もないが誘われる理由の方がもっとナイ!…納得しないまま、無難な返事を選んでしまい一緒に食堂へ向かう。
食堂のテーブルについたところで、唐突に始まった自己紹介。
「初めまして、うちは早川亜紀って言います。」
「あ、ども。初めまして、俺は秋山。・・・秋山一志です。」
ぎこちない自己紹介に、早川の外見と話し方のギャップが明るみに出る。少し拍子抜けの一志だった。