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狂喜を与えた女の名



 破壊を繰り返す人間

 私もその中の一人なのかもしれない

 時間は戻らないけれど、未来は続いていくから





 ただの好奇心と軽い復讐のつもりだった。本当の気持ちは、人を壊したくはない、ただそれだけなのに、あたしの思う通りにいくはずもなく、繋がっていた糸は、綻びながら、人を壊していく『快楽』に酔いしれてしまうんだ。


 壊したい、潰したい、自分の所有物にしたい、そこに人間としての優しさなんてなくて、残るのは、体内に注射された『新薬』の副作用。そう破壊衝動だ、殺意にも似た……ね。


 「どういう事ですか?」


 あたしは女に聞き返すと、そんな事聞かないほうがいいと呟きながら、もう一つの言葉を叩きつけてくる。その言葉の意味なんて理解出来なくて、女の瞳の奥にある『殺意』だけは察知した。


 『今に分かりますよ、その時(・・・)がくれば……ね』


 その時と呟く時に、余韻が横りながらも、違和感を感じたのは気のせいなのだろうか。


 「何を隠しているんですか?」

 『……そうだね、言うなら、ある人達と出会った時に発動する、そして自分の身で思い知ると思います。その時まで、御笠(みかさ)さんは眠る事となりますが』

 「眠る?」

 『そう、貴女の心を守る為でもあります。その先に貴女の望む結果と私達の本当の計画が分かると思いますよ?』

 「計画ですか……」

 『乗りかかった舟ですので、もう逃げれない。でも欲望は叶えられる』

 「欲望」

 『そう……本当の『欲望』です』


 女との会話の連結の中で、微妙に交わっていない不信感がある、それでも、吸い寄せられるように頷くあたしは、女の毒牙(どくが)に侵されているのかもしれない。


 他人になんて興味などなかったはずなのに、どうしても知りたいと願った。自分でもよく分からないアヤフヤな感情で、心も体も溺れていきそう。


 『私と共に新しい『ゲーム』をはじめましょう。きっと愉快ですよ』


 握られた手を離す勇気なんて持ち合わせていない。逆にそこにのめり込む勇気も、度胸も何処にもない、ないはずなのに。


 聞きたくて、聴き《・・》たくて、知りたくて、死理多異しりたい



 「貴女の名前をお聞きしてもいいですか?」


 その言葉が過去と繋がり、美しかった心の持ち主の歪みを知る事になるとは

 誰も想像出来ないんだろうね。


 『ふふふ、私の名前は『しおり』、神崎しおりと言います』


 美しく連なっていた旋律が、複雑に絡み合いながら、歪んでいく瞬間だったんだ。



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