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差し伸ばされた手



 ポタポタ滴り落ちる血があたしの心の中を埋め尽くしながら。瓦礫の音になる。それは不の感情の断末魔のようであり、また違う音にも聞こえる。見えているようで、見えていない目は何を感じながら、どの選択肢をするのか、君達からすれば見物かもしれない。


 あたしに瓦礫の音は必要ない。本当はその終結も興味などないし、関係もない。


 自由だった羽は、自分の汚れた手で、切り落としながらも、あの時の『約束』を忘れる事などできない。いや、出来なかったんだよ。


 『実験体として、御笠(みかさ)さん、貴女が選ばれた理由を知りたい?』


 『理由』と聞かれ、頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされながら、言葉に引き寄せられるように頷くあたしがいるんだ。


 『ふふふ、なら教えてあげるわ』


 暗闇の中で少しの希望と言う名の輝きを放ちながら、あたしにゆっくりと近づいて、肩に触れる。唇は耳に触れ、麻酔を落とす。


 『……貴女は美しい、ただそれだけよ』

 「え?」


 聞き返す余裕なんてなかったけれど、その一音だけを発する事は出来たから、まだ少しの余裕はあったのかもしれない。


 『美しいからこそ、その美貌を復讐に使いましょう。私達にとっても、貴女にとっても。悪い話じゃないと思うけど?』


 復讐の響きを聞いた瞬間、鳥肌と身震いに支配されていくんだ。女の表情は見れない、何せ、あたしの横髪で隠れているのだから、横目でも確認出来ない、深い所に隠れているような感じがする。


 「あの……」


 あたしは言葉のまやかしに惑わされないように、人の良い自分を創り出し、見せようとするけど、その女には通用なんてしなかった。そんな作り笑顔見せなくてもいいのよ、なんて再び囁かれると、硬直するしかないのだから。


 『貴女は人を憎んでいる。観察していれば分かるわ。特に憎んでいるのは父親なのでは?』

 「……何を言ってるんですか?」

 『そんな警戒しなくていいのよ?私達は貴女の仲間なのだから。だから力を合わせて、お父様達を壊していきましょう』


 壊す?どういう事なのだろうか。事実、この女の言う事は的を得ている。きちんと隠していたはずなのに、どうしてわかったんだろう。いくら考えても、出て来ない答え。


 「子供を揶揄(からか)うの、やめてくださいよー」


 茶化せばどうにか切り抜けるなんて、甘い考えだけど、それにすがりつくしか考えれなかった。


 『シラをきっても、私にはオミトオシよ?ね、嘘だと思って、遊びの一環として自由にしていいから。この手を掴みなさい』


 横から、誘惑の魔の手が伸びてくる。ゴクリと唾を飲み込みながら、無意識に手をとってしまう自分がいたんだ。



 もう、後戻りは出来ない。




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