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骨の瓦礫  作者: 綾 瑜庵
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二人の声



「うううううう」


 脳内に二つの声が響きながら、混ざり合っていく。何が正解なのか見えてこないし。どうしてミカサ(あたし)がこんな目に合うのか分からないけど、それでも縋り付く希望はあると思うの。


 あたしの一人よがりあのかもしれないけれど、少しでいいから可能性にかけたいと思うのは普通でしょ?


 (逃れられないよ……もう一人のあたし。少し見えたでしょ?あんたは元人間なんだよ。作り物なんかじゃないから)


 「ううああああああああああ」


 違うもん、違うもん、この声のおねえちゃんの言っている事なんてすべて『デタラメ』なんだから。あたしはそんな事信じたりしない。信じてしまったら、今までのあたしのしてきた行動の意味が崩れて、壊れてしまうような気がして怖いの。


 (認めたくなくても、認めなくちゃ。あんたはチルドレンなんかじゃない。あの二人とは異質な存在。姉妹の関係じゃないから。孤独なのよ。一人ぼっちの癖に……)


 あたしはチルドレンじゃない?何それ、分かんない。あたしには姉妹がいて、そして研究所と言う家がある。そこにはあたしの居場所があったはずなのに、なのに、それさえも全て否定しなくちゃいけないの?なら今までのミカサ(あたし)は何なの?


 頭から毀れる言葉の音、スルリと手から抜け落ちる感情のように、地面へと真っ逆さま。


 このおねえちゃんは、暗闇と同化していて、姿が見えない。ううん、正しく言えば、あたし自身がおねえちゃんの姿を見えないように意識しているのかもしれない。傍で存在はあって、形も見えるのだろうけど、あたし自身が拒絶と否定をしているから、見たくても見えないんだと思う。


 自分ではどんな人なのかと興味と好奇心があるけど。奪われた『始まりの記憶』を見せつけられた脳みそはパンク状態。それを加速するように、体に無数の釘に打たれた穴から溢れる血だまりが見せつけてくる、現実を……。


 プクプク盛り上がっていく皮膚。コポコポ流れていく痺れ。


 穴の開いた皮膚達は、自分の意思を持ちながら、再生を試みる。これは何?何が起きているの?分からない、分からないよぉ。


 「何……これえ……ああああああ」


 思考までも見えない『なに』かに汚されていってる気がする。視界がシャットダウンし、暗闇の中に堕ちたあたしの傍で彼女が囁いた。


 『今までありがとう。今度はミカサが眠る番だよ。体、返してもらうね』

 「あああああああああ」

 『あはは……これでやっと『復讐』が出来る』


 おねぇちゃんが狂い笑う。その時気付いたの、何故ミカサ(あたし)が『復讐』にこだわっていたのかを……。



 あたしはミカサであり御笠(みかさ)でもあるんだって気付いた。


 もう遅いんだけどね……。



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