答えのない解答
声はゆっくり溶けていく、氷のように。その中で漂うのは御笠ではなく、もう一人のミカサなの。重なっていく瞳、視界、鼓動、それとは反対に消えていく、人格、記憶、人。微かに残る感情の中に少しでもいいから、残っていたいと思う御笠がいる。
揺られて揺られ続ける。そうやって海に流れていくみたいに、あたしも渦に飲まれて、あっぷあっぷしてる。
もう きえて いいんだよ?
脳内に響き渡る声は誰の声?機械音にも似た、暗号のそうなそれはノイズを発しながら、ミカサの元へと走っていく。こわれていく一人の自分、そして生まれたもう一人の自分。
血管の中を這いずり舞う、芋虫は全感覚を奪いながら、意識をシャットダウンさせていく。そしてミカサがこの身体の主となるの。
眠たいな、もう少し眠りたい。それでもお腹は減るもの。何かが欲しい。でも何が欲しいんだろう。感じる度に血管の収縮運動が激しくなる。まるで別の生き物みたいで、あたしは好きなの。おねえちゃんはどうだか分からないけど。
あの『おねぇちゃん』誰だったんだろう?
夢の中で出会った黒髪の『ポニーテール』のおねえちゃん。
あたしはその人と会話をして、最後に何かを囁いたの。よく覚えていないけど、あまりよくない言葉だった気がする。何故そう思うのかって?それはね、あたしが言葉を口にした瞬間に、おねえちゃんの姿が見えなくなっちゃったの。正確に言えば、崩れたみたいに砂のように、消えていなくなっちゃった。
消える前に、その人が、あたしに何かを伝えようとしたけど、声にも、音にもならない無音だったから、何が言いたいのか分からないんだ。でも何となくだけど、必要なピースをあたしに授けようとしてたんだと思うの。
どうしてこんなこと理解出来るのか分からないんだけど。だってその人とは初対面だもん。なんだろうなぁ。自分の中に流れ込んで、重なっていくって感じかな?妙なの。違和感はスゴイけど、落ち着くのはどうしてだろう……。
疑問ばかりしか残らない。これはあたしの中だけで消化した方がいいと思うんだ。訳が分からないけど、誰にも言ったらダメな気がする。それも何故、そう感じるのか分からないけど、質問や疑問が沢山あるのに、その解答がないとか、凄くキツイよね。色々な事を予測できるもの。
それはそれで『おねえちゃん』が、あたしに残したメッセージなのかもしれない……。
最後のね……。