御笠《みかさ》
ドンドンうるさく叩いていたあの子は、御笠の発言でグシャリと崩れ込んだ。
脳内の中で見つめながら、適当に現実世界を赤い血潮で染めていく。
ミカサは殺人兵器となんら変わりはしない。そうやって創られた事にも気付けない。
……忘れてしまったに近いかな?
仕方ないよね。そういう契約だったもん。ミカサはあたしであり。あたしはミカサなんだからさ。
最初はムカつく奴に復讐出来るし、凄かったのよね実験体になる金額って1000万はくだらない。
当時15のあたしは、親を憎んでてさ、友人を潰したかった。皆嫌いで、憎くて、許せない。
そう思って生きてた所だったからさ『あの話』がきた途端、これしかないと感じたよね。
あたしには全くの縁がない人達だったの。興味なんてなかった。どーせ嘘でしょ、なんて思いながら見学に行っていたの。行きたくて行った訳じゃない。ある女性があたしを見た途端、気に入っちゃって『この子しかいない。最高作が創れる』て変にはしゃいでんの。
何この人。溜息を吐きながらも、体感した事のない未知の領域に足を踏み込めると言う期待があって。鼓動が加速していくんだ。
(なんなの。この感じ。わくわくしてる……)
これがスリルと言うものなのかな。刺激にも似たような変異質な感覚。生きている人生の中で初体験だったんだ。
『君の名前はなんだい?』
ガラス越しで生きた人間を解体する所を見ていたんだけど、その光景に釘付けになるあたしに声をかけてきた変わり者の人がいた。
名前は……なんだっけ?
よく思い出せないと言う事は、やはり『脳』をいじくられたし、記憶操作もあると言う事かな?不始末な記憶は削除して、他のどうでもいい映像と交換したとか、そんな感じだよねー。
クルリとポニーテールの髪をなびかせながら、振り向くあたし。
後ろに冷たい狂喜が存在してる事に気付かずに……ね。
曖昧な空間の中であたしとその声の主との時間が静止しているようだ。まるで運命の悪戯のように、少しずつ惑わしていく。
「あたしの名前は『御笠』っていうのよ。おじさんは?」
『ああ堂上さんの所の娘さんか。お父さんにはいつもお世話になっているよ』
「おじさん、あたしの事知ってるのー?」
『よく知っているよ』
「そうなんだ。あたしは知らないから。よろしくね」
ふふふとお道化て笑うあたしを見つめる周りの白衣の人々。皆少し微笑みながらも、悲しさを感じたんだ。あたしを憐れむように……。
これから何かが起きる象徴のように……。