憎しみと優しさ
あたしは御笠。やっと動かす事が出来たあたしのカラダ
今まであたしが外へ出る事が出来なかった。いつもいつも邪魔されてて、自由に動く事も出来やしない。
心の奥に押し込めるもう一人のあたしがもがいて、一生懸命抵抗している。
出して出してって……。何をそんなに叫んでいるのか、泣いているのか分からない。
あなたは人間じゃなくて人形なのに、どうして人間みたいに同じ行動を起こしているの?
そう問いかけたいけど、今のあの人にはその冷静なあたしの声も届かない。
無理だと思うのよ。だって感情的になって、状況をつかめれてないもの。
出して、出して、あなたはだれ?ここから……出して!
ああ、煩い、煩い。つらくて耐えれない弱い心しかないくせに、中途半端な癖に何をほざいているの?
「もういいでしょ」
あたしはもう一人のあたしにへと冷酷なプレゼントを捧げる。
冷たい瞳、冷たい体、冷たい心、冷たいモノのあたし。
もう元に戻る事は難しいと思うの。
たった一つのきっかけで歯車を狂わしてしまう。簡単に、誰もその変化に気付かない。そしてね、気づいた時にはもう遅い。止める事は誰にもできない状況へと変化しているの。
それもそれでいいでしょ?望んでこうなった訳じゃないけど。あなたもあたしも、この選択肢を選んだ。それに偽りはないのだから。真実と現実しか残らないよね?
「あなた一人が消えても、代わりはいるの。誰も悲しまない」
あの子の聞こえるように、心をリンクして呟きをわざと聞かしている。
「周りの人もそれを望んだから、こうなったのでしょう?じゃないとここまでの状況になる訳がない」
『……ちがう』
「人間はね、皆自分が可愛いのよ。あなた一人が潰れても、いなくなっても最初は悲しむ人もいるかもしれない。でもね、忘れていくの。簡単に」
『違う』
「何よ。騙された癖に。そうやって信じ続けるから、自分がつらい思いして、相手は平気なんでしょ?あなたが苦しもうが助けてくれる訳ないもの」
『……』
「簡単に人は裏切る。簡単に人は捨てる。簡単に人は騙す」
『……』
「あたし何か間違っている事言ってる?ねぇ悔しくないの?ここまでされてさ『いい人』で終わる訳?そんなのバカらしい」
『何がいいたいの?あなたは』
「あはは。簡単な事だよ。やられた分以上やりかえせばいい。耐えれなくなる位に滅茶苦茶にしてやればいい。そして地獄に叩き付ければいい」
『そんな事したくない』
「したくないじゃなくて出来ないんでしょ?昔に戻りたくないから。もういいじゃない。素直になろうよ」
『昔?って?』
「あなたが御笠として生きてた人間時代の時の事よ。分かってる癖に」
『あたしは人間じゃない』
「そうねぇ。今はね。でも過去は違う。立派な人間よ。あんたはゆちなんかのコピーでもなんでもない。人を憎みながら生き続けていた『御笠と言う一人の人間なのよ」
――忘れちゃったの?