塞がれた自由
感情は砂のように崩れて
私は私へと覚醒していく
毀れた身体は水の中で生きながら
命の芽吹きを象徴している
待てど待てど時間だけが過ぎていく。暗闇の中で微笑むあたしは天使ではなく悪魔の化身。
そんなあたしを見つめている瞳が、頭上から降り注がれてくる。
冷たいような、暖かいような、それでも矛盾を生じている……そんな感じ。
曖昧な感情が毀れて、あたしの心と瞳へと入り込みながら、強烈なまなざしに耐えれなくなりそうなあたしは、頭上を見上げ、人物の顔を確認する。
ニヤリと微笑む口元は歪んでいて、尚且つ美しい。
引き寄せられるような魅力に、怖気づく自分がいて、笑いそうになる。
それでも抑えるのあたしは人形だから……人間と同じように行動してはいけない。
人間が見ている前では得に、あたしだけしか知らないあたしの姿。
『君がミカサかい?迎えにきたよ』
「……」
狼に食べられる赤ずきんのように感じてしまう。あたしは悲劇のヒロインではないのに、錯覚してしまいそうになる。
食べるなら、食べていいよ?狼さん?
あたしの頭脳は甘い蜜で出来ていて、匂いは果実、そして血はバラの香りがするの。
人を狂わすにはいいでしょう?だからあなたもこちら側へおいでよ。
『自由はもうすぐ。さあ、息を潜めて、動かないで』
声の主の表情は暗闇に溶けて、読み取る事が出来ない。勿論どんな人間なのかも分からない状況。
それでも自由になれると信じて、癒智に会えると願って言う事を聞くの。
選択肢はそれしかないと思うから……。
あたしはかれの言う通りに体育座りしている身体をもっと抑え込みながら、頭上に余白を作る。少しの余裕を持たせるように、まるまった猫のように、ひっそり隠れるの。
『いってらっしゃい……』
呟きは影に溶け、夢の中へと迷わす迷路。
ギィーと音を発しながら、ゆっくり、でも確実に閉められていく天井。
木箱に入れられたあたしは『商品』そのもの。
その先にあたしを連れていって『何』をするつもりなんだろう。
バタンと閉じられた天井を見る事も出来なくなった。上に顔を向ける事も不可能。
ギリギリで詰められた体は、人間の思うままに使われる。
(きっと自由がある)
そう信じていたあたしが一番愚か者。