分離した脳
元は一つの脳が分離して複数の『偽物達』が創られた。そして『ミカサ』と呼ばれるあたしも、その中に含まれる特殊な存在。脳は全て繋がっている。人間の本で読んだ事があったの。あたし達は最初『文字』が読めなかった。遊離が先生として子供をあやすように、色んな事を教えてくれた。
言葉、人間の存在、そしてあたし達に『本』を与えた。文字がよく分からないあたし達が読んだのは『絵本』から。そして毎日『遊び』と称して勉強を教えてくれる。人形から人間に作り替えようと動いていたのは遊離なのかもしれない。長い間同じ時を過ごし、あたし達をどんな目で見て、その行動をしたのかは本人しか知らない。それでも、本を与えてくれて。新しい『ゆち』を与えてくれた。
最初見た時、ゆちと同じ顔で、生き写し。そのものの姿に驚きながらも、なんだか懐かしく感じてしまった。あたしの脳はオリジナルのゆちのもの。なのに、どうしてゆちの顔を知っているのか、見た事があるのか不思議だよね。
あたしだけは知ってるの。後の姉妹の二人は知らないと思う。
圭人は生きた状態のゆちを少しずつちぎりながら、最後に脳を奪いちぎり、あたし達に与えた。そしてその死体は手と足を失い。ダルマ状態で開けられた頭の部分は、きちんと闇医者を雇って、綺麗に完璧に塞いでる。その亡骸を、彼はずっと保管して鑑賞している。
あの研究所には、圭人だけしか入れない、知らない『秘密の部屋』がある。
そこでカプセルの中で保管されている『オリジナル』のゆちを見た事があるから言える事。
あ、勿論、勝手に見た訳じゃないよ。どうしてあたしに見せたのか分からないけど、圭人本人が見せてくれたの。枯れはいつも言ってた。『いいおもちゃが見つかった』って……。それはオリジナルの事?それともあたし『ミカサ』の事なのか、今でも分からない位、不透明で曖昧。
三つに分かれた脳は三体の偽物を創り、人間を喰らう為に産まれてきた。あたし達『姉妹』の復讐の一つでもあるの。
何度も訪れた圭人の隠し部屋には、いつも大量の書類が散乱してる。その中で面白いものを見つけたの。題名が確か……『骨の瓦礫』だったかな?
遊離の長年の苦労のお陰で、言葉を話せるようになり、読めるようになった。だから毎日少しずつ圭人に気付かれないように、その資料を読んでみたの。
ばれてると思うけど、眠りにつく時に鍵を渡してくれてね。好きに使えばいいと部屋を使わしてくれるようになったの。だから簡単に読めた。今考えると最初のあたしの行動に気付いたから、わざとそういう行動をしたのかもしれない。
それでも、抑えれない好奇心を抑えてくれたのは圭人なの。
あたしに『骨の瓦礫』の資料を読ませてくれたから、満足してる。
人間達の考える妄想に付き合えないけど、楽しい事を考えてたんだ。生きた人間からパーツを切り落とし、新しい人種を創る。そして神になるなんて、本当笑っちゃう。 圭人自身はそういう意味でも、目でも見ていない。彼には彼の『骨の瓦礫』が存在するみたい。そこを教えてくれる事は、永遠になかった。
あたし達の『骨の瓦礫』
それは『復讐』とね。