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 周りの人間達なんて気にならない。あたしは壊れ物だから。

 呟きは心を作り上げ人間へと変化していく。

 闇の中であたしはおじさんの冷酷な微笑みに包まれながら、生まれ変わるの。

 自分で決めた事。後悔は何もない。

 心なんて欲しいと思いもしなかった。そんな事どうでもよかった。

 ただ人形遊びをしながら、新しい『ゆち』と言うおもちゃで遊びたいとだけ願い続けていたから。

 あたしが『闇』の心を持つなんて想像もつかなかったの。


 『ははは。いい子だ。知らない『お兄さん』についていくのはダメだぞ?』

 「おじさん」

 『この子、面白いね。圭人ケイト、私にくれないかな?』


 冗談交じりで、少し離れた所にいる圭人(ケイト)に問いかけている。

 穏やかなようで、穏やかじゃない。

 まるでヘビに睨まれたように硬直していくのが分かった。

 心も、体も。

 あたしの『模造品』の脳みそも溶けあって、パンクしそうになる程の威圧感。

 『ゆち』に魅入られた圭人(ケイト)には何も感じていないみたいだ。


 自分の事しか考えていない、何も見えてない。表しか見えない彼はあたしよりも『模造品』なのかもしれない。


 『雄介(ゆうすけ)、冗談はやめてくれないか?私が困る』

 「ゆうすけ?」


 圭人ケイトの口から毀れた名前を復唱しながら、再びあの人を見つめる。


 「おじさん『ゆうすけ』っていうの?圭人(ケイト)のお友達?」


 はははと圭人ケイトの言葉から逃げるように、スルリとかわしながら、しゃがんであたしと目線を合わせ、口を開いた。


 『そうだよ。私の名前は『雄介(ゆうすけ)』だから君の名前も教えてくれないかな?』


 圭人ケイトのお友達。その言葉を確認するように目線で合図を送ってみるけど、何も気付けない人。この研究所の所長の息子として有能だったと聞いていたのに、残念。


 「あたしの名前はミカサ」


 諦めたように呟いたあたしの反応を試すように口元をニヤリと微笑んで、笑顔から無表情に切り替えた。


 瞳で訴えかけて、あたしの体中にグルグル巻きの『ワイヤー』を巻き付けるように拘束されたような感覚が全身に走る。


 『どうしたの?ミカサ』


 カクカクと震える体を庇いながら『恐怖』に耐え切れなくなった。

 逸らした目線は床を見続け、凍り付いたように、動かす事が出来なかった。

 この人に逆らったら『壊される』

 この恐怖はあたしのものではない。だってあたしは人間ではなく、ただの人形。ロボットと同じ。


 心なんてないはずなのだから。


 「なんでもないよ」


 見透かされないように、いつも通りの自分を保ちながら、顔をあげ雄介(ゆうすけ)の表情をゆっくりと確認すると、何もなかったように、そこには『笑顔』の雄介(ゆうすけ)の姿しかなかった。



 狐に化かされたような気がした。




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