かくれんぼ
楽しい遊びはいつまでも続く。あたしは遊離からプレゼントされた人形で遊びながら人間達とかくれんぼをしている。
遠くから聞こえるのはイラついた人間達の怒鳴り声と焦りの音。
「鬼さんこちらー」
警報音と騒めきで呟きなんて誰にも聞こえたりしないの。
だから少しお人形さんに話しかけてみたりした。
おじさん達まだかなぁ。少しお腹すいちゃった。
不思議だよね。あたしは人間じゃないのに、空腹を感じるなんて。
これもオリジナルを取り込んでいるからなのかな?
微笑みは残酷に
呟きは温もりを
クスクス笑う闇の中に溶けていなくなりそうで、恐ろしくもあるけど、なんだろうこの感覚。
変なの。
ポタリポタリと心に真っ赤な血が溜っていく。
闇に抱かれて、貴方に揺られて、あたしはあたしになる。
ミオみたいな高望みはしない。あたし達模造品が人間へと昇格するのは難しい現実なのだから。
それでも、少しだけ期待させて?あたしにも『自由』はあるんだから。
この研究所はもう『牢獄』に変化してしまった。
ここにあたしの居場所はないの。
自分の身体を抱きしめるように体育座りをして、猫のようにまるくなる。
狭い所が落ち着くのかなぁ?猫って……。
ふふふと微笑みながら木で閉ざされた『木箱』の中にあたしはいる。
決して圧迫された空間ではない。体の身動きは取れないけれど、これからの事を期待するとそんな現在の状況なんて関係ないの。
木箱には小さな穴が無数に開けられているから呼吸の心配はない。ここで実験してみてもいいけど、最後まで人間達の壊れる音を聞きたいから、ここで息絶える訳にはいかない。
本音はね、呼吸口を閉ざしてあたしを実験体として『使って』いいんだよ?そう思うの。
だって模造品が呼吸出来なくなって『窒息死』するか見てみたいでしょ?
人間という生き物は、好奇心旺盛で感情のまま流れて生きているのだから。
その先なんて考えなくていいんだよ?例えあたしが苦しみながら目を見開き『瓦礫』へと変化してしまっても、それも芸術の一つなのだから、ってね。
あたし人間の『毒』に充てられたのかもしれないね。
どうしても『おじさん』の言葉を忘れる事が出来ないの。
差し出された手と微笑みの先に何が待っているのか期待している自分がいて、不思議な感覚がする。
閉ざされた空間。
一人ぼっち。
「楽しみ」
誰もいない空間に響き渡るあたしの声は、安心と温もりに包まれている。
それがミオの言う『感情』なんて思いもせずに……。