表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/156

かくれんぼ



 楽しい遊びはいつまでも続く。あたしは遊離(遊離)からプレゼントされた人形で遊びながら人間達とかくれんぼをしている。


 遠くから聞こえるのはイラついた人間達の怒鳴り声と焦りの音。


 「鬼さんこちらー」


 警報音と騒めきで呟きなんて誰にも聞こえたりしないの。

 だから少しお人形さんに話しかけてみたりした。

 おじさん達まだかなぁ。少しお腹すいちゃった。

 不思議だよね。あたしは人間じゃないのに、空腹を感じるなんて。

 これもオリジナルを取り込んでいるからなのかな?


 


 微笑みは残酷に

 呟きは温もりを



 クスクス笑う闇の中に溶けていなくなりそうで、恐ろしくもあるけど、なんだろうこの感覚。

 変なの。

 ポタリポタリと心に真っ赤な血が溜っていく。

 闇に抱かれて、貴方に揺られて、あたしはあたしになる。

 ミオみたいな高望みはしない。あたし達模造品が人間へと昇格するのは難しい現実なのだから。

 それでも、少しだけ期待させて?あたしにも『自由』はあるんだから。

 この研究所はもう『牢獄』に変化してしまった。

 ここにあたしの居場所はないの。

 自分の身体を抱きしめるように体育座りをして、猫のようにまるくなる。

 狭い所が落ち着くのかなぁ?猫って……。

 ふふふと微笑みながら木で閉ざされた『木箱』の中にあたしはいる。

 

 決して圧迫された空間ではない。体の身動きは取れないけれど、これからの事を期待するとそんな現在いまの状況なんて関係ないの。


 木箱には小さな穴が無数に開けられているから呼吸の心配はない。ここで実験してみてもいいけど、最後まで人間達の壊れる音を聞きたいから、ここで息絶える訳にはいかない。


 本音はね、呼吸口を閉ざしてあたしを実験体として『使って』いいんだよ?そう思うの。

 だって模造品が呼吸出来なくなって『窒息死』するか見てみたいでしょ?

 人間という生き物は、好奇心旺盛で感情のまま流れて生きているのだから。


 その先なんて考えなくていいんだよ?例えあたしが苦しみながら目を見開き『瓦礫』へと変化してしまっても、それも芸術の一つなのだから、ってね。


 あたし人間の『毒』に充てられたのかもしれないね。

 どうしても『おじさん』の言葉を忘れる事が出来ないの。

 差し出された手と微笑みの先に何が待っているのか期待している自分がいて、不思議な感覚がする。


 閉ざされた空間。

 一人ぼっち。


 「楽しみ」


 誰もいない空間に響き渡るあたしの声は、安心と温もりに包まれている。

 それがミオの言う『感情』なんて思いもせずに……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ