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ミカサを動かす者



 オリジナルには遠い存在があたし達なの。圭人ケイトが欲しかったのはオリジナルの『ゆち』で人間。あたし達じゃない。あたしの名前は『ミカサ』姉妹は二人いるの。喋り方、幼いけど、これがあたしではない。ただのダミー。偽りの表の姿。それを知っているのは姉妹の一人の『ミオ』だけ。ミオはあたしのおねぇちゃんだけど幼いの。心が脆く。オリジナルから人間の感情の悲しみの部分を一番受け継いでしまった『ガラクタ』であり、あたしと同じ失敗作。はじめ圭人ケイトはあたし達二人を『成功品』と喜んでいたけど、本当はそう見せていただけ。異常があるなんて何も気付かなかった人。そこに付け込む隙は簡単だった。オリジナルの影を追いかけている彼を裏切るのなんて動作もない事なのだからね。

 

 ミオは自分の意見を持たず『赤ん坊』のまま、感情だけで保っている『ガラクタ』で失敗作。あたしと違う方面の……。ミオは感情を持っている事こそが『人間』へと近づくと信じている。危うい人。生きた人間の手足を与えられ『ゆち』と言うオリジナル……人間から脳を取り出し、部分的に少しずつ移植された。実験体。記憶は様々。ゆちの人生を姉妹達で契り合い『記憶』として取り込んでいる。


 取り込みたくない事も取り込んでしまった事にも気付けずにいたあたし達も『悪』なのかもしれない。一番の悪はオリジナルの息の根を止め、あたし達みたいな『モノ』を創り上げてしまった圭人ケイトと彼から離れず、同じ道を選択した研究者の遊離ゆうりだけどね。


 自分が産まれてきた事を責めても仕方がない。あたし達にはあたし達で与えられた『仕事』があるはずなのだから。尻ぬぐいをする訳ではないけど、元のレールに戻し『完結』させるのが妥当。


 『癒智を取り返さないと……』


 あたしは焦る。もう一人の姉妹の『癒智』は圭人ケイトから『失敗作』と烙印を押された廃棄物。一番オリジナルに近いのに、永遠と年齢を重ねる事と記憶を保つ事が出来ないの。夜中の0時になると別の『癒智』になり、生まれ変わる。その繰り返しで存在している。それ以外は一番『完成品』に近いのに。二つの部分だけを見て決めつける圭人ケイトの悪い癖が出てる。


 遊離ゆうりは途中でその事に気付いていたみたいだけど。心が離れていく、幼馴染の『圭人けいと』から徐々に離れていき、全てを操っている『雄介』と言う男に寄り掛かり保っている。


 『自業自得』


 ビリリリリリリリリ。

 研究所の警報音が鳴り響く。これは警告の音。誰かが脱走を図ろうとしているのがばれた音。

 そう『あたし』の行動がバレた音。


 『だけど大丈夫。おじさん達が『迎え』に来てくれる』


 あの時、あたしだけに囁いた言葉を胸に抱きながら、言われた通りに行動して、時を待つ。

 そうやって形勢逆転を企てていた。

 人形はあたし達『姉妹』ではなくて『圭人ケイト』なのだから。


 『早くこないかなぁ。もう少しで来るはずなのに』


 ああ。待ち遠しいな。




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